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葉月


八月

人間の潜在的恐怖、
其れは死。

此の世に生を受ける事は、
必ず死すると云ふ事。
故尤も醜い人間界に遣はされた魂は、
過去其れ同等の罪を犯したとも云ふ。

神は等しく生を与へなさる。
又、神は等しく死を与へなさる。
即ち神は必ず生を奪ひなさる。

死の恐怖を生涯負ふぐらゐなら、
いっその事生かさないでくれ。



あたしやっぱりあの男(ひと)は好きになれないと思います。最近あの男の些細な言動、その他諸々のデリカシーの無さから、あたしは終始苛立ちっぱなしです。でも、あの男の方があたしよりも三倍は年上であったり、母親の再婚相手という事で色々と良くしてくれているのは分かっているつもりです。資金援助もしてくれます。時にはアウトドアに連れて行ってもくれます。何より、あの男は母が好いている男なのです。
あたしはあの男に感謝しなくてはならない、尊敬しなくてはならない、受け入れなくてはならない。でも幾らそう思った所で、所詮人間。例え、尊敬するアーティストであろうと、過去の大親友であろうと、人生の師匠であろうと、命の恩人であろうと。何であっても、典型的な利己主義者である人間には、相容れない物は絶対相容れないのです。狭く深い自分という入れ物の奈落の底から、視認出来るぎりぎりの光を手繰って僅かな世界を見つめる事しか出来ないのです。だって、その方が幾分も楽なのですから!
だからあたしは到頭あの男を理解する事を諦めました。あの男をあたしの許容範囲外に締め出して、せめて抱こうと作った偽りの好意は製造中の儘破棄命令です。だってあの男はあたしに不快感を抱かせ過ぎたのですから。
あたしは思い切り頭の中を黒く塗り潰しました。あの男はあたしの中から消されます。あたしを苛立たせた罰です。変わりに、あの男の名前には違う情報が記載されました。自分がどうこう言っておきながら人に不快感を抱かせる碌でもない男。かなりの女好きで信用ならない。
苛つく。





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