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水無月と睦月
六月
クロルプロマジン(Chlorpromazine)
睡眠導入剤を一瓶飲めば、世界が変わって見えた。色彩に富んだ此岸が、黒白の曼珠沙華が咲き誇る彼岸になっていた。瞼の裏に広がる世界は、僕だけの、君との世界。黒白の君は、灰色の唇に弧を描かせて漆黒の髪の毛を靡かせる。笑っている、微笑っている、嗤っている。わらって、いる?それが僕には分からない。世界が揺らいでいる。ぐらぐらと僕の内部から何者かが刺激しているように、脳味噌の中から廻転して眩暈となって神経を侵された。
「自分だけ楽になるなんて赦さない。」
身体中が痙攣して脳味噌や心臓まで痙攣して、僕は生を感じた。嗚呼、僕はまだ死ねない。
七月
彼女は無意識だったのかもしれない。恰も極当然かの様にあの唇からそう言葉を漏らした。ほんの一瞬の、些細な出来事だ。彼女の声色はだんだん震え、言霊は空気に浸透していった。空間を透明な沈黙が掌握する。
僕は、それでも、動揺する事は無かった。
きっと彼女は未だ心の何処かで、あの人の存在を否定し切れていないのだろう。仮にも、一時の伴侶なのだから。彼女は、暫くの沈黙の後最近の話を切り出した。
譬え現在が如何に幸福に満ちていても、不幸な過去程存在は大きいなんて、皮肉。
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日記のログから引っ張ってきましたw
せっかくなので載せてみようと思います。
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