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有刺鉄線の上から抱擁




多分、世界は残忍だ。それでいて全てを見過ごす寛大さがある。この鉛色の空がその代表例だ。今こうして私が仰ぐ空は、過去の様な澄み渡った空色というものではなく、大気汚染やオゾン層破壊等という人間の破壊活動により鉛色のどんよりとした分厚い雲の壁が一面に広がっていた。この雲が晴れる事はない。多分、世界はそれを見過ごさない。時に世界は熾烈なのだ。私はそれを大いに理解している。まだ空が青い頃、子供時代に近所のラーメン屋で奥さんが愛故に夫を殺して、しかもそのミンチをラーメンの出汁に使い客に出していたという事件があった。それに、外国では浮気性の夫に妻が耐えられなくなり夫の陰部にぶら下がった大切なものと四肢を切断して殺すような恐ろしい事件もあった。世界は、残忍で寛大で熾烈なのだ。優しい様で厳しく、冷たい様で暖かい、それが世界の全てだ。鉛色の空は、酷く放任主義で人間達をのさばらせているけれど、それもきっと、多分、空がそれを望んでいるから。環境破壊も、地球温暖化、オゾン層破壊、何もかも全て。

「見て、空は青くないのよ。」

「うん、そうだね。もう何年か前から、ずっと空は隠れたままだ。」

「そう、隠れただけ、まだ空は消えてないのよ。」

世界は残忍だ。まるで、私の心をいつまでも有刺鉄線でぐるぐる巻きにするように、鉛色の空が激しく主張してくる。なんで、青い大空は、なんで、鉛色の雲に。それが、例え雨でも嵐でも霧でも何でも。どうして大空を消したんだ、世界は。オゾン層も環境も破壊すればいい、地球だって勝手に温暖化すればいい、でも、大空だけは。世界を優しく包む寛大な大空だけは。男のミンチで出汁をとった指の浮かぶラーメンでも、胴体と頭だけの死んだ男でも、なんだっていい。そんなものは、どうでもいい。世界は、それを見過ごさない。決して。でも、肝心な大空だけは、いつも見過ごしてしまう。平凡過ぎる非凡さ、それを世界は見過ごしてしまう。失ってはならない大切なものばかりを、少し視野から外してしまうんだ。

「知ってたんでしょう、雲雀。でも私は貴方に助けを求めはしない。空を隠す雲なんて消えてしまえば良い、そうでしょう。」

「消えてしまえるのなら、もうとっくの前に消えていたね。」

「そう、素直じゃないのね、私達。」

「うん、知ってるよ、とっくの前にね。」

雲なんて消えてしまえば良いのに。何度もそう懇願して、何度もそれを否定した。オゾン層も環境もなんだって破壊すればいい。そうして、空を鉛色の雲が覆えばいい。どうか雲だけはもう消えないで。私の世界を残忍に包んでいて。

きっと雲は私の心すら包んでしまうのでしょう。有刺鉄線に縛られた上から優しく心を抱擁するのでしょう。



三角形マンセー。
え、分かりずらい?そんなの私が一番思ってます。






あきゅろす。
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