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蒼色メルト




私は、蒼色が世界一嫌いだ。生まれた時から、女の子という事もあり両親はピンクの服を買い与えたし、だから私もピンク以外の服は考えられなかった。生まれてこの方大きくなるまで色の中心はピンク、中学生からは黒が基本となっていた。色の好みは直ぐ変わる訳ではないけれど、必要に応じて変わる。
でも、蒼色だけは、何があっても好きにはなれなかった。何か心理的なトラウマがある訳でも、何でもない。ただ、生まれてこの方蒼色だけは考えられなかった。色、としては理解出来る。だが、いざ自分の身に纏うとなると話は別だ。蒼色、あの色だけは生理的に受け付けなかった。心が断固として拒絶する。小学生の頃はピンクと対照的だからかと思っていたが、中学生になってアンチピンクの黒好きになっても、蒼色嫌いは変わらなかった。
中学一年生の時、初めての地理の授業でショックを受けた。地球は蒼い。なんて事を言ってくれたんだ、ガガーリン。せめてソ連の中、若しくは宇宙の中だけでそんな事言ってくれれば良かったのに。大嫌いな蒼色の世界で暮らしていると思うと吐き気がした。
蒼空も、海も、腐っちまえこのやろう。蒼色嫌いの筈が、お陰様で地球嫌いの蒼空、海嫌いになってしまった。嗚呼、嫌悪感だ、こんな世界で生きているなんて、せめて人間のように視界が多色の生物でなければ、少しは生涯を全うする事が出来たかもしれないのに。そう思い始めると、自分の眼を恨んだ、捻り潰そうかと思った、でもやっぱり出来なかった。だって、日本の海は蒼くないのだ。小さい時に何度か行った海は、どちらかと言うと混濁していて綺麗な所でも少し濁った透明、後は土の混ざった蒼と緑の中間色のようなよく分からないが確かに汚い、確かに蒼ではない色だった。そんな物の為に、流石に眼は潰せない。大体蒼空は見なけりゃ良い、上を。海だって行かなければ良い。
それなのに、今、現在進行形で私は足を海に浸していた。浜辺を裸足で歩くと波が来て私の足を濡らす。蒼くはない、濁った透明の海だ。冷たい感覚がするのは、冬の海だから。蒼空は私の嫌いな蒼色ではなく、綿のような雲の灰色に覆われていた。

「やばい、アナフィラキシーショック起こしたらどうしよう。」

「意味分かんないよ。大体海アレルギーなんて僕は知らない。」

足を襲う寒さと足から込み上げる不快感に私は気絶寸前だった。本当にこのまま行くとアナフィラキシーショックでは済まないのではないだろうか。心臓麻痺とか、そんなものでポロリと逝ってしまいそうだ。
目の前の男さえいなければ、今直ぐダッシュして逃げ出すのに。この男は何の了見なのか、私をバイクに乗せて天気の悪い寒い道の中連れ回した挙げ句私の大嫌いな海に連れて来て寒いと反抗した私の意思を無視し勝手に手を引っ張って海の浜辺を歩いているのだ。勝手に一人でやってろ。嗚呼今直ぐその手を離してくれれば、離してくれれば。知らないだとか吐かすこの男に私は本気で殺意が沸いた。何なんだこの男。いや、仮にも私の彼氏だけど。

「そんなの、こっちが知らないし。離しやがれ。」

「嫌だね。」

「はあ?海ってあれだよ、死ぬ場所だよ。皆飛び込んだり溺れたり。だから蒼いんだよ、不吉だなあ。」

「何、僕と心中でもする?」

「ぜってー嫌だ。」

嗚呼こんちくしょう。思い切り憎まれ口を叩けば雲雀は私に思い切り海水を掛けてきた。塩分で身体が融ける、死ぬ。嗚呼もう、この男本気で嫌だ。


私の身体は海水に融けた、そうして大嫌いな蒼空を拝めば憎いこいつはいつの間にか雲を消して蒼色になっていた、どうしてくれるんだ蒼色。


雲雀お誕生日おめでとうな訳で捧げちまいますよこんな駄文でよけりゃ。でもラリってるなりには上出来でしょ、だってラリってるんだもん、仕方ねえだろあんちきしょー。
まあそうして結局自己満足。






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