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屋敷の本
LITTLE BROTHER・ELDER BROTHER(9)


ふらふらした足取りで
自室に戻るみのり様を見送ると、
私とルーンの目の前にはソニアス君と



見慣れない男の子だった



外見は凄く整った顔。
多分、ななかが見たら
興奮しまくりだと思うわ…
肩まで伸びたグレーの髪。
少しつり上がった猫目
深い紫色の瞳。



「…貴方だれ?」


ルーンがすかさず問いただす。


「あ、アツキっス。」



「いや、名前はいいけど、
貴方何者?この屋敷じゃ見た事無いわね。
…もしかして、
また孤児院から連れて来たの?」


怪しい者じゃ無いのは分かってる…
分かってるけど、何故か睨み付けてしまった。


「あ、えーと…」


その男の子がチラ、とソニアスの方を向く。
…なんなのよ。


「…コイツ、俺の弟。
今日から此所で働くから。」


「どーも」


ソニアスの後にアツキという男が顔を下げる。
…流石に私とルーンも驚きで、
目を見開いた。



「「ソニアス(君)の弟ー―!!!?」」




私とルーンの声は、
屋敷内部に広がったみたいで
近くにいて、仕事をしている奴等がこっちを一斉に見た。



「え、な、何で!?」


「ソニアス君弟いたの?」


『以外ー』と続けるルーンの驚きは、
すぐに去って普段のペースに戻ったようだ。

私はまだ信じられない。
私はみのり様も知らない
ソニアスの家庭事情も知ってる。

話してくれた時、兄弟なんて話は出てこなかったじゃん。
だからいないと思ってた。



「それは、追々話すから…」


言いずらそうに顔をしかめた気がした。



「あ、自己紹介がまだだったわね。
私、羅夢って言うの、ヨロシク、さっきは睨み付けて悪かったわ。」


そう言いながら私は手を差し出す。


「いえ、全然気にして無いっスよ。
俺の事はアツキでいいっス。」


握り返してくれた手は暖かかった。


「んで、こっちの小っちゃいのがルーン。馬鹿だから。」


「ヨロシクっ!」


馬鹿だから…
という台詞にツッコミを入れる訳でも無く、元気にあいさつ。
流石ガキ…



「んで、コイツの事なんだ…



「あー――――!!?」

言い出したソニアスの言葉を遮って、
聞き慣れたウザい声の主を見た。

…残念な事にななかだった。


「「…はぁー――」」


私とソニアスは随分大きなため息をこぼした。


「あ、残念な、ななかだ」


…とルーン
分かってるじゃない


「残念とはなんだ!
ってそんな事よりその少年は!?」


「(無視無視…)ねぇ、ソニアス?」


私はななかの言葉を無視し、口を開けた。


「なんだ?」


「今日は新しい仲間もいるんだし、みのり様達もふまえてパーティしましょう?パーティ。」


無礼講よ!と続けた。


「分かった。話してみる」



そこで盛り上がっているルーンとアツキ、ななか3人をからアツキを引っ張り出して


「へ…?」


「ほら、あんたは先輩方に挨拶に行くわよ!」


ビックリしてるアツキ。

「あー羅夢仕事終わって無いくせに!」


「うっさい!!」


とななか、ルーンの声を無視して
私はアツキを引っ張り回した。


そのおかげで仕事サボれたし、
夜はパーティだしなんだかコイツのおかげで得した気分だった。










…多分、まだ私達はきずかなかったんだと思う。
これから起こる些細なきっかけすら…


ここには苦しみが多かれ少なかれ、
その苦しみ味わった者達が、
ここで働いていることを理解しておくべきだったね…。

私は出てこないんだよ、
その状況下でのキレイ事が、
慰めの言葉が…




〜・*・〜・*・〜



日が傾き、
白堂家の屋敷が赤く染まった頃…



「今夜が…決行だ!!!」



陽気な男の声。







「決行は今夜でございます…ご主人。」


低い女の声が重なった、
あまりに綺麗過ぎる夕暮れどきだった。




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あきゅろす。
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