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*境界線

*ミカテイでラブラブ


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「ミカゲはオレとキスしたいって思うか?」

「……はぁ」


テイトの言っているキスとは恋人同士でするあの行為だろうか。
言われた言葉の意味を考えて、ミカゲはもう一度はぁ、とやる気のない声を漏らした。


「…したい、と思ったことはねぇかな」


ミカゲにとってテイトは唯一無二の親友だと思っているし、テイトも同じ気持ちだと思っている。
確かにスキンシップとして抱きついたりすることはあるが、あくまでそれはそれであり深い意味はない。
ただ言っただけのつもりかもしれないと、反応を計りかねてテイトの顔を見れば、僅かに嬉しそうな顔をしていた。


「……テイト?」


どうかしたのかと、突然の質問内容から考えても少しおかしいテイトの様子に手を伸ばせば、そのまま腕を引かれて正面から抱きつかれた。
珍しい行動に、行き場を失った手が宙を彷徨うが、結局いつものように腰に回す。
相変わらず抱き心地がいいと思いながら存分に堪能していると、テイトも肩口に頭を押しつけてきた。


「付き合ってないと、こういうことしねぇんだって」

「……おー…?」


顔を上げた先にいたテイトの位置が予想以上に近くて、先程の会話のせいかやけに唇が目に入ってしまう。
不貞腐れると唇を尖らせる癖のあるテイトが今それをやると強請っているように見えて、ミカゲは衝動的に顔を寄せた。


「だから、」


話している途中の唇に触れる瞬間に、軽いリップ音を鳴らしてから離せば、口を開いたまま呆然としたテイトを再度抱き締める。


「な、な、な、に、すんだ…!」

「……キスだな」

「したくねぇって言ってただろ……!」


流石に、ミカゲの中でキスは親友でいられなくなる境界線だった。
腕の中で暴れるテイトを宥めるように背中を撫でながら、自分の行動の理由を探す。


「……何となく?」


魔がさしたとしか言いようが無い自分に首を傾げれば、肩口に服の上から噛み付かれた。
皮膚を噛み切らんばかりの行動に手の力を弱めれば、離れたテイトが顔を赤くしながら睨み付けてきた。


「ふざけんな」


赤い顔で睨まれても特に迫力がないのだが、流石に怒ったかと誤魔化すように笑えばテイトの眉間に皺が増えた。


「もうしねぇよ」

「当たり前、だ!」


ぐっと胸を押して離れようとする身体を、残念に思いながら両手を挙げて解放する。


「……キスは、心臓がもたないから駄目だ」


ぼそりと呟かれた言葉は、都合の良い幻聴かと思った。
顔を赤らめながら困ったように眉を下げるテイトの顔に目を奪われて、するりと離れた身体を追うことができずに無意識に腕を掴もうとした手は宙をかく。


「絶対、すんなよ!」


言い捨てるように走り去るテイトに、約束できねぇと顔を押さえたミカゲは小さく呟いたのだった。




End

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