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トリップ!


気がついたらそこは一面豊かな草原だった。
特別綺麗な花が咲き誇っているわけでもない。けれど、草原をサラサラとなぞる風の通る様子がとても綺麗だと思った。が、

なぜ私はこんなところにいるのだろう?

記憶を遡れば、狭苦しい私の部屋でゲームのコントローラーを握る自分の姿が脳裏に浮かんだ。


そうだ

私は、私は…


「う、」


夏休み半ばにして突然の――


「ウソだアアアア!!」






* * *




「――というわけでこんにちはアイクさん、リンクさん。私昨日トリップしてきたヤマトっていうの。宜しくね。それから倒れてるところを助けてくれてありがとう」

何かの糸が切れて、どうやら私は倒れていたらしい。目が覚めても私の体が参考書だらけの小汚い部屋に転がっていることはなかった。

「む、そうか。さん付けは結構だぞ」

「いやいやいやそうじゃないだろアイク。えっと、なんだって?トリップ?」

「うん。家でゲーム画面に向かってたらヒョーイって。で、目が覚めたらスマブラの世界よ?流石の私でもびっくりしちゃったんだから」

何よりこの2人に介抱されるだなんて夢にも思わなかったわ…。ああ鼻血でそう心臓でそう、やばいやっぱり格好いい!

「げーむがめんとはなんだ?」

ゲーム画面、それはゲームが映し出された画面のことを当たり前にいうのだが
そんな概念はここにはないのだと直感的に理解した。彼らもまたデータとプログラムの枠を超えた"意思"があるのではないかと、そう思えた。

「あー、やっぱりなんでもない。とにかく私は異世界の人間で…」

「俺たちも異世界から来たんだ」

リンクはあぐらをかいたまま上半身だけ伸びをした。さも当たり前のことを言うような口調でそのまま続けた。

「元いた世界に帰りたいと思うこともあったけどさ、ここに来たのにはきっと意味がある」

「意味?」

「まあ要は帰ることにがむしゃらになる必要はないってこと」

そこまで言うと頭の後ろに両手を回して草原のベッドに倒れ込んだ。そして寝息が聞こえた。

(意味…ねえ)

この世界にとって私が存在する意味ってなんなんだろう。

考えても仕方ないか。
リンクの言う通り、焦る必要は…












「うあああ!!!夏休みの宿題やってぬぁあああ!!」

「む?シュクダイとはなんだ?」


超焦ることになった。






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