page.02
#1 出逢い
7年後のハイラル。
太陽は厚い雲に覆われ、しっとりとした空気が平原を流れる。
「ナビィ、」
平原を走るひとりの若者がいた。彼は傍らにいる、ナビィと呼ばれた蒼い妖精に話しかけた。
「どうしたの、リンク?」
「雨の匂い」
リンクと呼ばれた若者は、身に纏っている緑衣の乱れをただしながら言った。
「雨…」
ナビィが空を仰ぎ見ると、彼女の羽根にポツリと水滴が弾けた。するとそれを始めとして次から次へと水滴が降り注ぐ。
たちどころに土砂降りに変わった。
「きゃ!」
「ひどい勢いだな。…ひとまずあそこの林に入って暫く凌ごう」
リンクが指差す方には青々とした木々が茂る雑木林があった。二人はそこに向かって駆けていく。
雑木林に足を踏み入れると、木々の中でごうごうと音が反響して辺り一帯に微震が感じられる。
多少の雨は凌げるが、それも完全に遮断出来るものではない。リンクは雨に濡れながら林の奥へ奥へと足を進めた。
「ちょっとリンク、あんまり深く入るとモンスターに出くわしちゃうよ!」
「うん。でもここだと雨に濡れっぱなしで風邪ひきそうだし、きっとこの林の中にも小屋があると思うんだ。そこで雨宿りしようよナビィ」
そう言ってナビィをふわりと両手で包むと自分の帽子の中へ入れ、再び林の奥へ進んでいく。
しばらくすると、ザクザクと木の葉を踏む音が止んだ。それに気がつきナビィは帽子から姿を現した。
「ナビィ、」
「どうしたの、リンク」
「…小屋発見!」
リンクの目線の先にはこぢんまりとした木製の小屋が見えた。ツタが小屋を被って、見た目は不気味だがこの雨は充分凌げるだろう。もっとも、今現在リンクは林中を歩き回ったお陰でずぶ濡れ状態、つまりは今更手遅れであると思われるが。
「兎に角一時避難だ」
そう言うと駆け足で小屋へ向かった。
くしゃみがでた。
[*前へ][次へ#]
無料HPエムペ!