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外に踏み出し扉を閉めると辺りの風景が目に飛び込んでくる。同時に殺気がピリピリと肌に伝わって、時の勇者は自然と背中に据えている剣を抜いた。

「ナビィ、」

リンクは傍らの相棒に問いかける。

「敵は全部で何体くらいだろう」

「モリブリンとスタルフォス、それからデクババ…全部で10体ってとこかしラ」

「わかった」

頷くと、その刹那、敵が一斉に唸りをあげて襲いかかったきた。





* * *




(大丈夫、かな…)

薄暗い小屋の中にポツリと座り込んでいる。剣と剣とを交えるけたたましい金属音がただただこの狭い空間で反響する。

(…大丈夫じゃなかったらどうしよう)

じんわりと不安の汗で滲んだ背中には未だに突き刺すような悪寒があって、これが魔物によるものであるとすぐに理解できた。
不安なんか、さっきは一気に吹っ飛んだのに、轟く唸り声と武器同士の激しくぶつかり合う音が沸々と不安を駆り立てる。
と同時に、先ほどからどういうわけか胸の奥が高鳴っている。これは不安でもなければもちろん喜びでもない。不思議な事に、「懐かしい」という感情が一番近くに感じられた。

(“懐かしい”?なぜ…)

刹那、そこで思考は遮られた。


 バキバキッ

 ドガッ!!


「!」

ハッと我にかえり後ろを振り返ると、小屋の壁が壊されていて、一体の魔物が小屋の木屑と共に仰向けに倒れている。骸骨の剣士のようなその魔物はどうやらリンクに吹き飛ばされたらしい。それは木屑の中からまたむくりと立ち上がると、視界に入った私に焦点を合わせたようだった。

『ココニモ人間ガイタノカ』

太く低い声でそう言うと、ゆっくりと一歩一歩こちらに近づいてくる。

「……っ」

まずい、と思った。脳内の信号は「立って逃げろ」と言ってるのに、体は全然言うことを聞いてくれない。呼吸の仕方も忘れてしまったようで、不規則に口からはヒュー、ヒュー、と息が漏れる。
そして魔物は私の前で歩みの足をとめると、

『シネ』

片手に握られた剣を振りかざした。



駄目だ、殺される。

私死ぬのか。

わけもわからないまま。

自分がわからないまま。


…そんなのは嫌だ。

私にも戦えたなら、

戦えたなら――









唇を噛みしめ目線を足元に下げようとしたとき、小屋の奥で何かがチカ、と光った。



 ドカッ!


 

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