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「…ぷっ」
そんな2人のやりとりを見ていると、自然と口からは空気が漏れ、思わず口元が緩んでしまう。そしてクスクス笑い出した私をリンクは呆然と見ていた。今にも「え、笑うとこ?」なんて言いそうな顔で。
「…ごめんなさい。でも何だか面白くて」
「そ…うかな…」
「アラ、もしかしてリンク顔真っ赤じゃなイ?」
「う、うるさいなあ!」
またまたナビィとリンクでわいわいと言い合いが始まった。その光景を見ていると、リンクよりナビィの方が一回り二回り大人びいてるように見える。ナビィは妖精だけど、人間でいうといくつくらいなんだろう。
ふと、そんな下らない事を考えていると、突然背中を刺す冷たい空気が襲ってきた。――否、これは恐らく悪寒。
「あの、リンクさん」
「え?何だい」
「…囲まれています」
「? 何が…」
ドン!
ドンドン!
バキッ
小屋の外から、しかも四方から、私たちがいる小屋に何かをぶつけていると思われる鈍くけたたましい音。それが小屋の中で反響する。
「これは魔物でしょうか…」
「……そうかも」
リンクが小さく頷いた。
「魔物…どうしましょう」
私が不安そうに小さな声を漏らすと、リンクはそっと肩に手を添えてくれた。
「大丈夫だよ。魔物は戦い馴れてるから」
「それにネ、リンクは“時の勇者”なのヨ!」
時の…勇者。
果たしてその肩書きがすごいのかどうかは、記憶が曖昧な今となっては分からないけれど、
「……はい」
彼の言葉で不安が消し飛んでしまうのは確かだから。
「ナビィ、いくぞ」
「OK、リンク!」
私は湿った小屋の床にへたり込んだまま、彼らの背中を見送った。戸の外からは雨が上がったのか、光が漏れて久しく私の体に降り注ぐ。
いや、久しいかどうかは分からないか…。
…ああ、こんな事も証明出来ないなんて
記憶の空白が疎ましい。
そして私とリンクの間の戸は閉まり、光は遮断された。
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