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#2 記憶の糸



「…なまえ、」


分からない。
私は誰なんだろう…。


「すみません、本当に何も、覚えてないんです…」

「覚えてない?」

妖精が驚いたような声をあげた。多分、眉をひそめた表情してるんだろうな。…分からないけど。

「まあ、嘘を言ってるようには思えないけど…」

うーん、と唸りをあげて青年が腕組みをしていた。
もしかして、疑われてる?


「そんな、私嘘なんて」

「あ、違う違う。なんて呼べばいいかなーって思っただけ。ごめん」

「ナビィも、嘘じゃないと思うよ」

…疑われてるわけじゃ…ない?初対面の人にも優しいんだなぁ二人とも。

「妖精さんはナビィって言うんですね」

「ウン!それでこっちはリンク。よろしくね」

ナビィの隣にいるリンクと呼ばれた青年を見ると、照れくさそうに片手を頭の後ろに回して「よろしく」と笑った。





「あの、それでリンク…さん。よかったらこれ使って下さい」

私はリンクにハンカチを差し出した。

「今自分のポケット漁ったらあったんです。リンクさんたらものすごくずぶ濡れじゃないですか。このままじゃ風邪ひきますよ」

「はは。平気だよ、雨に濡れるのなんかいつものことだし…」

だから大丈夫だよ、というサインで顔の前で手をひらひらと振るリンク。でもなんだか放っておけない気がして、悪い気がしてならない。

そして私は軽いため息を一つこぼして。

「無理してはダメですよ」

そっと近寄って、リンクの肌に滴る水滴を拭き取る。ハンカチが水分を吸ってひたひたになっていくのを感じた。

「…えっ」

リンク自身、はじめは硬直したまま目を丸くしていた。ぱちくりさせてもいた。ところが目が合った刹那、「わわわわわ」とか言いながら焦ったように体を仰け反らせる。

「ちょっ…大丈夫ですか?」

ハンカチを握ったままポカンとしてるとナビィがやってきた。

「大丈夫だヨ、ごめんねびっくりさせちゃって。リンクってば中身はお子サマで…」

「ひ、否定できないけどナビィ!」
 


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