人の声がする。
そうだ、起きなきゃ。
私は、
「う…」
ゆっくりと瞼を開く。
真っ黒な世界から視界が開いてゆく。そこには私を覗き込む影があった。
蒼くて綺麗な妖精、そして自分と同じ年頃の青年。
「よかった。目が覚めたのね」
そして蒼い妖精は私に優しく話しかけた。続けて青年も口を開いた。
「驚いたよ。こんなところで傷だらけで…一体どうしたんだい?」
傷、だらけ?
私は自分の目の前に自分の右腕を持ち上げた。確かに彼の言うとおり、傷だらけ。
そして傷を見た瞬間、体の中からジクジクとした痛みが込み上げてきた。
なんで私怪我なんか…。
「…わかりません」
とりあえず寝ていた体を起こそうとする。すると青年が手伝ってくれて、壁に寄りかかる体制で座らせてくれた。
「じゃあどこからきたの?名前は?」
続いて蒼い妖精は私の肩に止まって質問してきた。
「…え、」
どこから、
名前、
なまえ…、
ふと、私はそれらの答えを持っていない事に気がついた。