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超特急でこちらに向かってくる、否、突っ込んでくる暴走馬車。

このままでは確実に―――

「ひ!ひかれるー!!」

ナビィが声を上げた。それを起爆剤にリンクは地面を蹴って、轍(わだち)から逸れた草むらに飛び込む。その手は少女の肩を抱えていた。
一方、勇者一行を通り過ぎた馬車は車輪に激しく地面との摩擦をおこして、砂埃をあげながら静止に向かった。

「いたた…えっと、大丈夫?」

「は、はい、ありがとうございます」

勇者と少女ふたり、草むらに突っ伏したまま言葉を交わした。少女は突然の出来事に驚いた様子で、一呼吸おいてから勇者の問いに頷く。
ふと気が付けば自分の背を覆うように、肩には勇者の手がまわされている。当然これは自分を助けてくれた為のものであると分かってはいたが、肩に背中に伝わるリンクの温度が何となく心地よかった。

「ちょっとそこの馬車ァ!危ないじゃない!」

2人が無事に立ち上がるとナビィの宝石のような淡い青は敵に反応するかのように真っ黄色に光り、甲高いベルのごとく馬車へ怒鳴り散らした。すると彼女の声を聞きつけた、馬車の先頭をきる二頭の手綱を握った中年男は急いで地面へ足を下ろして勇者の方へと駆け寄る。

「あんた剣士かい!?強いんだろう、どうか助けてくれ!」

「はっ?」

“助けてくれ”という言葉と同時に中年男はリンクの背に隠れ身をすくめた。かろうじて肩のラインから真っ青な顔が覗いて見える。

「あ、あの、おじさん、説明してくれないと分かんないよ」

「リンク、そーゆー問題でもないでショ!なにヨこのおじさんの呆れた体たらく!危うく私たち轢死するところだったのよ!?」

「それはそうだけど…」

ちらと後ろを見ると男は助けてくれと小声で連呼している。こうなっては勇者は勇者として振り切るわけにもいかないのだった。

「ゆ幽霊が…うう、後ろから追っかけ、て、きやが、て…」

男がそこまで言うと突如少女は電気を走らせたようにピクリと肩を反応させた。そしてリンクに向いていた体を後ろに振り返らせると、そこには平原の空と風と草以外のモノが感じられた。

「リンクさん!ナビィ!」

いち早く不穏な空気を感じ取った少女が声をあげたが、それと同時に少女の目の前に淡く透き通った物体が姿を現した。

 

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あきゅろす。
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