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「だ、駄目だ!」

「わっ!?」

リンクは少女の両肩を掴んだ。突然の勇者の大声に少女は驚きながら目をぱちくりさせている。

「…あ、あの…」

首を傾げ少女がしずしずと漏らすと勇者はハッと我にかえり、肩から手を離した。

「ご、ごめん」

「…いいえ、リンクさんも心配痛み入ります。それから助けて下さりありがとうございました」

軽くお辞儀をすると「それでは」と言って少女は小屋を出ようとする。しかし勇者がそれを制止した。

「待って、やっぱり一人は危険だと思う。7年前とはわけが違うし…」

「7年、前?」

「あ、いやその…。だから旅なら俺たちと一緒に来た方が安全だと思うんだって話なんだけど」

その言葉に含まれた意味を少女は即座に読み取った。信じられない事を聞いたみたいに勇者の名前をぽつりと呟く。

「――故郷まで届けさせて」

勇者はそう言うと少女の手を握っては微笑みかけた。

「でも…あなたは見ず知らずの方なのに、そこまで迷惑は掛けられません…」

「見ず知らず、じゃない。俺もナビィもこうして君と出会って、話して、繋がりを持ったじゃないか」

視線を勇者からナビィへ移すと、彼女も綺麗な青色の光を散らしながら頷いた。するとそれを確認して勇者が続ける。

「記憶がなくなった君に記憶を取り戻せとは言わない。そりゃあ取り戻した方が不安は少なくなるだろうけど、…俺は、俺たちは君に明るい未来を見据えて欲しいんだ」

それは自分たちにも当てはまること。リンクたちは今、真っ暗闇になってしまったハイラルに希望をもたらさなくてはいけない。勇者はこの現実に悲観してばかりでは生きていけないことを知っている、だからこそ誰よりも前を向いて明るい未来を信じている。ハイラルに光が差し込むことを。

「…リンクさん…リンクさ…」

少女は握られた手をぎゅっと握り返す。そして震えた声で何度も何度も、勇者の名前を呼んだ。

「ありがとう、ございます…」



小屋から覗く木々が風でなびき、小鳥が空へと羽ばたいた。






 

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