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あれは剣だ。
“私の”剣―――!
ドカッ!
勢い良く振り下ろされた剣。私は間一髪でそれを避け、奥に見える“私の”剣に飛びついた。代わりに床板が剣の餌食となり、破壊された箇所からゆっくり剣を抜くと魔物は怪訝な顔つきになって私を見た。私も魔物を見据えてしっかりと剣を握り締め、鞘から刃を抜く。曇りのない鈍色だ。
それの様子を見るなり魔物は言った。
『マサカ、戦ウノカ?』
はっ、と嘲笑うように吐き捨てる。逃げればいいものを、とも付け加えた。
「戦います」
勝てるという確信はなかった。だけれど、戦うということに懐古の念が残る。
直感していた。これが私の居場所なのだと。
(大丈夫。きっと私は負けたりしない)
不思議とその強気な気持ちはストンと心に収まり、剣をしっかり握ることができた。
そしてそのまま魔物に向かって一直線、剣を片手に駆けていく。
「はあああっ!」
* * *
「でやあっ!」
その渾身の一撃はスタルフォスの構える盾をも真っ二つになって魔物自身の体も粉砕した。握力をなくした魔物の腕からは武器が落ちてゆき、ぐらりとその身を地へと倒す。
ドサッ
それは地面と同化するように、はたまた天に召されるように、黒い炎をまとい瞬く間に灰に還っていった。その炎が燃え尽きない内にリンクは身を翻して小屋の方へ駆けてゆく。
「無事でいてくれ…」
頭の中にはずぶ濡れな自分を心配そうに、だけれど優しくハンカチで拭いてくれたあの顔があった。
君だって傷だらけじゃないか。記憶だって真っ白なんだろう?君はもっと日の当たる場所で笑っていなくちゃ駄目なんだ。
だからこんなところで、何もわからないまま死んだら、駄目なんだ…!
「…っ、」
たどり着き、小屋の戸に手を掛けた刹那――
バァン!!!
「!!?」
スライド式の扉の筈がスライドさせる為の溝を無視して勢いよく扉ごとこちらに吹っ飛んできた。リンクは避けきれずに扉と激突しそのまま下敷きとなった。
「な、なんだぁ!?」
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