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花のなかで死なせて(6927/拍手log)


「もういいかい、」
「まあだだよ」
「もういいかい、」
「もういいよ」
「あ・れ、  は?」





「居ないよ」
「どうして?」
「死んじゃったから!」






花のなかで死なせて








飛び起きた。天気が良い九月の秋晴れ。骸は辺りを見回す。
見覚えのない部屋。だけどどこか懐かしい感じがするベッドに骸は横たわっていた。
自分は何故見知らぬベッドの上にいるのか。なぜ、哀愁を覚えたのか。ふと嫌な汗をかいている事に気がついた。じっとりと額に浮かぶ。夢の内容はわからないが「悪夢」をみたという記憶はある。
誰かを失った夢。
と、その時。
「あ、骸?起きた?」
柔らかな声が聞こえた。
振り返ると入り口に立つ一人の少年がこちらを見つめ、呼び掛ける。ふうわりとした髪がひょこりと揺らされる。
骸、そう呼ばれた骸は一瞬眉をしかめ、そして少年に向かって呟いた。



「貴方は誰ですか、」


僕の名は骸ですか、と骸はひとりごちた。


「…何の冗談だよ」と少年・ツナは呟く。そして骸の変色した隻眼を見て理解した。
(本当にわからないんだ)
悲しみはなかった。ただ受け入れ難い何かが胸にぽっかりとできた。気がした。
「お前の名前は六道骸。オレの、知り合い。三日前、道に倒れていたのを運んだんだ」
唖然とした様子で淡々と話す。ツナは骸に近寄った。
「ねえ、本当に何も覚えていないの?」
「?…ええ、」
ツナの確認するような、そんな物腰に違和感を覚える。当たり前の動作の中に異常が潜んでいるみたいに思われた。
「しばらく、オレの家にいなよ」
行くあてもない骸は頷く。はい、と。


時が動いた。







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あきゅろす。
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