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オレンジテロリスト(ザンツナ/一万打記念フリー/ザンツナフェスティバル出品)
ザンザスは誕生日が好きではなかった。







何故なら孤独を感じるから。
他者よりも優れた権力、富、名声。それをザンザスは持っていた。優越感に浸るのは嫌いではなかった。むしろ好んだ。誕生日になると贈られる権力の証。
真の孤独を知るが故に、また、馴れ合うのを嫌った。真に怖いのは悪人ではない。善人がふとした拍子に見せる手のひらを返すような悪意が怖いのだ。


毎年贈られるプレゼントに馴れ合いや、顔色を窺うような賎しさを見つけ、不快になる。
全て、燃やした。


しかし、今年は違った。真実の敗北を味わったリング争奪戦より10年後。
バラの花束。差出人はボンゴレ10代目沢田綱吉。
不快だった。
馴れ馴れしいわけでも賎しいわけでもない。だけど気に食わなかった。しかし燃やす気にもなれずに放置した。誕生日のプレゼントの中で唯一残った。

花はいつの間にか枯れていた。







次の年、
沢田綱吉はバラの花束をもってやってきた。満面の笑顔だった。
「誕生日おめでとう」
「何しにきやがった」
憮然と聞き返せば笑みを情けないものに変える。
「ヴァリアーの協力がほしい件があるんだ。というのは建前で本当はプレゼントを渡しに」
そういって渡されたのは再びバラ。穏やかな朱に混じって血のような赤がある。そのコントラストが、ザンザスを、狂わせた・のかもしれない。




「…え、」




気がついたら綱吉はソファに押し倒されていた。
「ザンザ、」
「うるせぇ」
乱暴に口付けた。バラが辺りを染めるように舞ったが気にもならない。
二人が離れた時、綱吉はザンザスの瞳を覗き込んだ。
そして問うた。寂しいのか・と。もう一度、
「孤独が怖いのか」と。
瞬間、身震いするほどの怒りが沸き上がった。
頭の中が真っ白だ。
乾いた肉を打つ音が響いてザンザスは我に返る。


沢田綱吉を叩いた。



そのことにしばらくしてから気付く。
「でていけ」
掠れた声でそれだけを告げるとザンザスはソファから離れた。ザンザスを見つめた後、綱吉はゆっくりと身を起こし、出ていった。
ザンザスは己の手を見つめる。震えていた。
恐怖でも、喜びでもない。これは、この気持ちは…
「悔いているのか?罪を感じたのか?…ハッ、馬鹿らしい。そんなはず、ねえ」
けれど手の震えは止まらず、打たれた時の綱吉の顔が頭から離れずにザンザスを苦しめた。







本当は気付いていた。自覚は・あった。だけど目を逸らした。
見て見ぬふりをした。
打った理由も、何もかも









次の年のザンザスの誕生日に、沢田綱吉が来たという報せを聞いてザンザスは部屋を飛び出た。
まさか来るとは思わずにいたので驚愕と
「…喜、び?」
喜びを感じた。
嬉しくなんかないはずなのに。煩わしいだけなのに。




綱吉は真っ赤なバラと、見知らぬ花束を抱えていた。
「ゔぉ゙おいボスさんよぉ、コイツ護衛もつけねぇでっぷりん!!!」
耳元で叫ぶスクアーロが煩かったからザンザスは殴り飛ばした。そのまま驚く綱吉の手をひいて廊下を歩み去った。
「ちょっ、スクアーロが」
「煩せぇから殴った」
カツカツと靴の音が響いた。花束が揺れる。
部屋に入ると乱暴に扉を閉めた。
「ザンザス…怒ってる?」
何も言わないザンザスを不安に思ったのか綱吉は繋がれたままの手を解けずにいた。
綱吉から視線を逸らすと見知らぬ花の束が目に入った。オレンジの花。深紅のバラに並べると多少の見劣りはするが、やけに印象に残った。
「…ジャノメギクっていうんだ。ザンザスの花・なんだ、」
ザンザスの視線に気付いた綱吉が呟く。花から綱吉に視線を移すとはかなげに微笑む綱吉が居た。綱吉とは目は合わない。
「ザンザスの誕生花。綺麗、でしょ?」
ザンザスは花を受け取った。



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