[携帯モード] [URL送信]
エスプレッシーヴォ(持ツナ)








持田は風を感じた。
それは上からだったかもしれないし下からかもしれない。ともすれば正面だったかもしれない(別段・微風だったわけではない。持田には風が吹いた、としか感じられなかったのである)ふと前を見ると沢田綱吉がいた。ここは学校だからあれ以来幾度か会う事はあったが、あの目付きの悪い爆破野郎や野球部エースの屋上ダイブ野郎がそばにいて、まさか、二人きりで会う事はなかったのだ。綱吉に毟られた髪は見事生え揃い、もとの持田の面影を取り戻したが持田は何かが前とは違うと感じていた。
ただ、廊下ですれ違う。それだけなのに持田は自分は緊張していると感じていた(沢田綱吉が持田に気がついた)怯える綱吉を見て持田はなんだか悲しくなる。これは同情ではない。ただ悲しいだけ。同情するべきは己なのだろう。
「おい貴様、」
「持、田…先輩」
たったそれだけのやりとりなのに持田は何故だか笑いが込み上げてくるのがわかった。ニィ・と口角が吊り上がった。綱吉がさらに怯えた気がした。でも気にしなかった。
気がついた時にはもう遅いのだ。
「――…(手を、握ってる。沢田綱吉の手をひいてオレは何処へゆく?)」
触れた掌は温かくて持田は泣きたくなった。
今日は忙しい。



あきゅろす。
無料HPエムペ!