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(ツナスク/歌謡企画/完)




おまえだけが欲しいのに。綱吉がそう言って、ぼんやりとどこか違うところへと視線を投げやるので、スクアーロはしかたなしに、組んだ腕を解いて片付けを始める事にした。
キングサイズのベットに散らばる赤は、先程まで人の形をもっていたもので、そのあまりのグロテスクな成れの果てに唾を飲んだ。死体ならいままでたくさん作ったし目にしてきたというのに。
ボンゴレ本部。綱吉の部屋に広がるこの惨状はいつもの事だったけれど、いつまで経ってもなれないと思う。
綱吉は連れ込んでは殺し、連れ込んでは殺し。今日連れて来た相手といえば「スクアーロにちょっと目が似ていると思わない?」そんな理由で片付けられた。こんなにぐちゃぐちゃになった相手に自分を重ねて見られても正直嬉しくもない。スクアーロは唸る。
「もう、こんな事やめろぉ」
自分でもびっくりするくらい情けない声が出たけれど構わなかった。これ以上、見過ごせないのだ。
見た目はちょっと好きなんだ。綱吉は呟く。スクアーロの問い掛けには触れずに呟いた。
「だってスクアーロに似てたし、だから顔だけは傷つけてないの。でも、似ているだけじゃダメだったんだ。だんだんおまえが好きになり過ぎて、キスしても舌を切り落としたくなるし、俺に触る指をへし折りたい。けど足りなくて、やっぱり殺しちゃう。殺したら彼らは俺の側にいてくれるだろう?でも殺してから気がつくんだよ、――満たされないって」
そりゃあそうだろうなあ、続けて綱吉がそう言って、同時にスクアーロもそう思う。
「だって、スクアーロじゃないんだもの」
(だって、相手は俺じゃないんだからなぁ)
「ねえスクアーロ、俺が本当に欲しいのはおまえだけなの。側に居たいの」
(そんなのは知ってる)
「一人にしないで、」
(そんな事言ったって)
「俺に愛を教えたのはおまえなのに!」
ベットの上から、綱吉の「愛」の残骸を全て引きずり落としてスクアーロは腰かける。もうこのままではいられない。そんな危機感は何度胸を掠めただろうか。自分は今日、なんのためにこの部屋を訪れたのだ?何ヶ月ぶりに、この哀れな男に会ったのだ?なんのために、ヴァリアーを抜けて、覚悟を決め、こいつを抱きに来たのだろうか。
「綱吉ぃ」
おまえを抱いてやるよ。スクアーロがそう囁いて、肩に腕を回すと、綱吉はうっとりと彼を見上げるのだ。彼の瞳に浮かぶ悲痛を知らずに。



時折微かに漏れる呟きはきっと本音なのだろう、組み敷いた綱吉にじっと熱い視線を送り込んで、それからキスを交わす。喜んで唇を開くこの男の脚をついでに胸までくっつけ、挿入を深くえぐるようにした。
「スク、スクあ、ーろ、」
「!」
キスの合間に舌を噛まれる。噛み落とさんばかりの力強さに眉を寄せた。じんわりと鉄の味が広がる中、周りも腐臭と鉄臭さが交じり合い、気分が悪くなる。それでも快楽だけを追う綱吉になにか得体の知れない恐怖、に似た魅力すら感じたのだ。
「も、なんでも、いい、から、一人に、しない、で、おねがい」
「つな、よし」
「おれのぜんぶあげる。おれをぜんぶあげるから。そばにいて、あいして」
そうしてガリリと胸に爪をたてる綱吉は、笑った。
「スク、も、殺しちゃえば俺の側に、いる?」
「…ああ、」
エクスタシーは、精神とは関係なしにやってくる。二人してそれを迎える時、それが彼を手に入れる時だと綱吉はスクアーロの長い髪にくちづけたのだった。








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