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ダイブ・リリー・ダイ(スクツナ10年後/49094HIT卯月様リク/完)






「スクアーロ おかわりは、」
どうすると聞かれスクアーロは眉を潜めた。そして寄せた眉をゆっくりと解いた。おかわり。これが嫌い(というほど嫌いでもなかった。ただ、あまり受け付けないだけだ)で早く平らげてしまったのにこいつはわからないのだ。わからないのはわざとでも学習しないからでもないので――――そう、天然なのだこいつは――――眉間の皺をのばした。
要らないとぶっきらぼうに答えるとツナは微笑んだ。カチャカチャと置かれたティーカップが音をたてた。
こうして、こうやって、ツナと二人してゆっくりと紅茶を飲むのはスクアーロは初めてではない。何度も何度も行われた行為だ。かといってスクアーロは紅茶がとりわけて好きだというわけでもない。スクアーロが好きなのは、
「この前」
ツナはスクアーロの目を見た。見られた本人はちょっとだけその瞳の大きさにびっくりして視線を返す。
(この出汁みたいな色してるって言ったら怒るか?笑うか?)
スクアーロにはツナがよくわからなかった。
「クリスマスツリーの紅茶を手に入れたんだ。飲む?」
「…いや、いらねぇ」
「そういえば、スクアーロが買ってきてくれたイチジクの紅茶美味しかったよ」
「…よかったな」
ある種のゲテモノともいえるツナの紅茶好きにはスクアーロはまたびっくりして(たぶんそれはいまさらなのだ)何も入ってはいないティーカップを見た。それは徐々に満たされていった。
(満たされて…?)
顔を上げるとツナが空のティーカップに新しい紅茶を注いでいるところだった。
「何してんだ」
「え、スクアーロ、よかったなって、飲みたかったんじゃないの?イチジクの紅茶」
(そうだ。こいつは天然だった)
天然というか理解力がないのかもしれないな、と思う。だけどこれでもこいつは確かにボンゴレのボスなのだ。
「美味しいよ。俺はやっぱり缶売りより一個一個、個装して店頭で売っている奴の方が好きだな」
スクアーロは紅茶を選ぶセンスがあるんだね。ツナは笑ってティーポットを置いた。




最近は静かでいいね。でもまるで嵐の前の静けさみたいだとツナは言った。
小さなカップを片手に少しだけ甘いだけどノンシュガーの紅茶をすする。甘い香りが特徴のイチジクの紅茶は、スクアーロは嫌いではないと思った。
ツナの不安がわからないわけではない。もともとマフィアなんて血生臭いものになるために生まれてきたわけではないのだ。
これからの人生を過ごし、生きていく事の不安。マフィアのボスという全てを背負うツナの苦しみ。
時々、こうして一緒に紅茶を啜り、何故ツナだったのだろうと考える。
何故こいつだったのだろう。なんてきっと無駄な事だとわかっている。ツナだったから。そうゆう答えがピッタリなくらい、あらかじめ用意されてたような、そんな感覚が相応しすぎて薄ら寒くなる時もあるのだ。
だからこうやって笑うツナの笑顔は似合わないと思う時さえある。
(自分でも当然気付いてるはずだろうな)
「スクアーロは何が欲しい?」
(何、が…)
それは何を求めているのかという意味なのだろうかと考える。不意に零された質問になんの疑問すら感じないのは、ツナだからだ。まるでそれが当然というかのようにその場に組み込む。
かといって不快感もないし、それが当たり前のように感じられるのだからやはりボンゴレのボスはツナしかいないのだと思わされた。
自分が欲しいもの。それは。
「元がなんだかわからねェ出汁と、」
(それを一緒に飲む)
「と?」
「……茶菓子だけでいい。俺は」
ツナは目を見開いてそれからすぐに赤くなって笑った。いつもの困ったような笑顔で、あの似合わない笑みではない。
「ごめんねスクアーロ。今何かお茶菓子持ってくるから」
パタパタと走り去るツナを尻目にクツクツと笑った。ツナを相手にすると本当に疲れる。だけど楽しくて、しかたない。ツナの事が好きでなければ決してこうして一緒に紅茶なんて啜らない。けれど好きという感情だけで一緒にいるわけでもないような気がしてきたのも事実なのだ。
ツナが戻ってくる足音がして、スクアーロは慌てて笑顔を引っ込めたのだった。















END















本当に遅くなり申し訳ありません!日常的なスクツナ、ときいて勝手に10年後設定にしました…。
クリスマスツリーの紅茶とかイチジクの紅茶は本当に美味しいです^^
リクエストありがとうございました\(^O^)/またよろしくお願いします!




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