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ヒバツナ(完)



人というものはおおよそ、一人では生きる事はできない。例えどんな人間でも数十時間他人を見ないと孤独で発狂してしまうのだ。
しかし彼はどうだろう。綱吉はふと思った。雲雀さん・小さすぎるその呟きは誰もいない教室に響いた気がした。

彼なら、もしかして一人でも生きてゆけるのかも知れない。孤高。まさにそんな言葉が似合う。誰にも頼らず・交わらない。
しかし、綱吉は以前、雲雀と言葉を交わした事があった。
学校に飽き飽きして早退しようとした時、校門で雲雀に会ったのだ。どこに行くの・といきなり頭を殴られた。具合いが悪いので早退します。殴られた痛みを堪えながらやっとの事で答えると雲雀はそう・と呟いて去ってしまった。訳がわからずにその場に座り込んでいるとひょい、と何かを投げられた。飴だ。早く治しなよ。そう告げられて綱吉は酷く驚いたのを今でも覚えている。

独り、という取り巻く環境は一緒。全く変わってしまった今だって二人は二、三度視線を交わした事がある。リボーンが現れてからは廊下でも話した事だってある。





ある日、綱吉は一人屋上にいた。獄寺はイタリアでダイナマイトの仕入れ。山本は並盛カップだかなんだかの野球の大会で公欠している。お昼、なんだか食べる気がしなくて弁当はあるものの、屋上でぼんやりとしていた。フェンス越しの地面を見ているとぐらぐらしてきた。ガシャン、とフェンスを掴んで額を押し付けた。

「どこに行くの?」

ふと、背後で声が聞こえた。
「今日は独りなんだ…なんだか君が独りって懐かしいね」
「雲雀さんこそ、応接室で食べないなんて珍しいですね」
「昼寝してただけだよ」
入口の陰にいたらしく、入ってきた時には気がつかなかった。雲雀は綱吉の隣に立つ。肩に羽織った学ランが風にたなびいた。
「ねぇ、君、どこに行こうとしたの?」
「…わからないです」
「そう、」
つまらないといった風に雲雀はプイと余所を向いた。
「雲雀さん」
「なに」
「独りって寂しいです。前は何ともなかったのに」
僕はそんな風に腑抜けたくないから独りが好きなんだよ・雲雀はそう返した。
「もし僕が腑抜けてしまったら」
傍にいてくれるの?




綱吉はフェンスを掴んだまま雲雀を見つめた。雲雀は綱吉の弁当を勝手に食べ始めている。

それはどういう意味だろう。綱吉は雲雀を見つめて小さくそうですね・と笑った。
「雲雀さんが腑抜けるなんて想像できないです」
「ありえないよ」
「む、矛盾…」
「ねぇちょっと卵焼き甘いんじゃない?」
ようやくフェンスから離れて綱吉は雲雀の隣に座った。雲雀が腑抜けるなんて全く考えもつかなかったがもしそうなったなら傍に居たいと思った。だって自分が寂しい時に隣に居てくれたから。


「雲雀さん、」
「なに?」
「お弁当美味しいですか?」
「わるくないよ」
「良かった」
二人だと、なんでも出来る気がした。いつもより饒舌な雲雀が、嬉しかった。
綱吉は夏が近いと思わせる雲の塊にそっと目をやったのだった。
網目越しのそれは酷く爽やかな気がした。







END










携帯の奥に眠っていた過去拍手。わかる人はわかるかもしれませんね^^!
てゆーか酷く微妙


加筆訂正20080531


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