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持ツナ(完)



持田はツナが苦手だった。
トラウマもあったけれど(持田は存外強い心を持っていた)あの華奢そうな肩。大きな瞳。小さな手。その他諸々のツナが苦手であった。
持田は昔犬を飼っていた。茶色いチワワ。(持田は決してコマーシャルの影響ではないと言い放つ)。チワワは小さくて震えていた。その小さな体を持ち上げて持田は笑った。おまえ可愛いな。持田は呟いた。チワワは持田に懐いた。持田もチワワを大事にした。
チワワは持田が中学2年生になった時に死んだ。悲しくて泣いた。悲しくて登校拒否になった。そんな日がしばらく続いてとうとう担任が家へ来たので渋々と持田は学校へ向かう。遅刻だと風紀委員に殴られた。
とぼとぼと正面玄関を歩いているといきなり何かがタックルしてきた(尻餅はつかない)チワワだ。いや、違った。人間だ。
次の日、一年の沢田綱吉だと知った。
一瞬飼っていたチワワに見えた男子生徒はダメな事で有名だった。チワワみたいに小さくて絡まれる度に震えて。かわいそうなくらい庇護欲を誘う生き物。
沢田綱吉と戦って坊主になった髪がようやく元通りになった時に持田は再び沢田と出会う。誰も居ない屋上で、チワワと。
お久しぶりです。髪の毛生えたんですね。(煩い。騙れ。)持田先輩、総体頑張って下さい。(煩い。)こんな所で何してたんですか。(う)
ツナが笑顔で話すから持田はなんだか泣きたくなってきた。泣いた。持田はツナが苦手であった。
持田は毎日屋上にいた。ツナも屋上に来た。ツナが泣いている日は持田が逆に笑った。ツナが笑うと持田は泣いた。
「持田先輩、地球がなんで丸いか知ってますか」
「…なん、で?」
「誰も端っこで泣かないよーに!」
持田にはツナが段々とチワワに見えなくなってきた。(こいつは洗浄機。洗って洗って洗い流す)苦手でもなくなっていた。(こいつは神様。肉眼で見える愛)
(持田は存外強い心を持っていた)
それから何年かが過ぎて持田もツナも中学校も高校も大学も卒業して(ツナについていったらマフィアなんて)たどり着いた。マフィア。マフィア。マフィア。イタリア。マフィア。疎外感の塊の国で持田は銃を握る。ちょっとばかり火薬と鉄臭い空気の中で隣のツナを引っ張った。土っぽい壁がスーツを削る。ツナに連れて来られたイタリアは持田には危なっかしい場所でいっこうに慣れなければ楽しくもなかった。しかしツナがいた。だから我慢した。火薬臭い銃も握った。
ツナがぐらりと傾いて倒れる。足元に広がる血。意識はなかった。息もなかった。
ツナの居ないボンゴレは空気を失った地球みたいだ。守護者の誰かが言った言葉が耳鳴りのようにキンキンと姦しい。広いベッドにスーツのまま横たわって持田は息を止めた。苦しくなるとツナがいた。チワワもいた。ツナは泣きながら持田の中に入った(詳しくいうと左心房)持田は笑った。なんだそこにいたのかよ。持田は笑った。疎外感情緒溢れるイタリアで過ごせそうだと笑う。ツナがいるなら。(持田は存外強い心を持っていた)


















End
















今日も生きて生きてそのままでいて


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