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獄寺隼人の意見





あいつはペテンだ。詐欺師だ。いつもへらへら笑いやがって腹の中じゃあ俺達を馬鹿にしてるに違いねえ。馬鹿そうにして一番賢いあいつはそういう風にへらへらしてはクラスの男女に人気者で揚げ句・10代目にまで信頼されている(クラスの男女なんか獄寺にはどうでもよかったが沢田の事になると途端に不快な気持ちにさせられた。しかしそれは真実なのでいかに獄寺が負けず嫌いだと言っても認めざるを得なかった)そうだ負けず嫌い。あいつは俺以上の負けず嫌いだ。だってほら、そういう目をしてる。燃え盛る焔を閉じ込めて笑顔でひた隠しする獣の目だ。躊躇うと食いちぎられる。





「山本、ホームラン打つかな」
嗚呼10代目。なんて顔しているんですか。あいつにそんな期待をかけて、どうにかなっちまいそうです、俺は。ただでさえ10代目が行かないかと俺を誘わなかったら絶対に行かなかったのに。なんでかどうしてか。
この蒸し暑い中・ちょっとでも密着出来ないか。俺の頭はそれだけを考えて、いつもは賢いと褒められる頭脳の神経の全てをその思考だけに絞って、そして残念な事に他の事はてんでお粗末になってしまう。だから今まさに10代目が山本のピッチングについて語っていたとしても耳には決して入ってはこない仕組みだ。(ただ、人間の心理というものは不思議で、聞きたくないという個人的な理由が身体になんらかの影響を及ぼした時(例えばストレスやトラウマ、脱毛、便秘、胃潰瘍など)身体は勝手に聞き流してくれるのだ。身体はいつも正直だ)隣で10代目が笑うのを見るのは非常に辛い事だとそれは誰にもわからない。当たり前だ。だってそれは俺じゃないから。でも、ほんとに誰にもわからないくらいに辛い。山本の事で笑って楽しそうに俺に話かけられても、すみません、あいつとは無理ですからそんなにというか全く喜べないです。すみません、許して下さい。だってほら見て下さいよあいつのあの顔。三振とったからっていい気になりやがって。ああいや10代目。そういう意味ではありません、ただ、あれなんです…そう、俺は右腕だから!あなたの右腕だ。だからあいつには負けないように。








嗚呼暑い。こんな日は野球なんか見てないで冷えた部屋でゆっくりしたい。それは決してわがままではないだろう。それにこのスタジアムはおかしい。気が狂ってるのか山本ばかり応援してる。隣の10代目はというといつも通りの穏やかで優しげな眼差しでダイヤモンドを見つめている。なんだろうか。視線の先を見るとあいつがこちらを見つめていた。それになんだか馬鹿みたいに頭にきた俺は限りなく自然な体制で暑さにやられたフリをして10代目に倒れ込む真似をした。我ながら上手い演技に拍手を送ろう。当然、10代目の意識はこちらにきて泣きたくなる程嬉しくなって本当に涙ぐむとお優しい10代目が声をかけて下さった。
「山本、ホームラン打つかな?」
このスタジアムは異様な熱気に包まれている。




























20080214



あきゅろす。
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