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普通の男(ヒバツナ/拍手log/完)


「言っておくけど、僕は別にクリスチャンでもなんでもない」
知ってますよと言いつつ僕の腕を引っ張る彼は僕よりかなり小さい。だから一見すると僕達は兄弟に見えるかもしれない。けれどこんなに似ない兄弟はいないだろう。僕の髪色と彼の髪色は違う。淡いベージュブラウンの髪色の彼は瞳の色までそんな風に綺麗な澄んだ色彩で、僕はというと烏のような黒だった。どちらも。というか彼が僕の兄弟だったら困る。こんなにかわいらしい兄弟、放っておけるわけないじゃないか。近づく輩は片っ端から咬み殺してやる。


僕は人に触れられるのが嫌いだ。別に他人が嫌いなわけではない。触れられるのが嫌いなだけだ。少しでも触れるだけで鳥肌がたつんだ。でもね彼だけは別なんだよ。触れられた所から温かくなってほてりはじめる。まるで殴られたみたいだよ。君に。ねえ綱吉。


「寒いね」
「雪降ってますしね」
「…僕、クリスチャンじゃないんだけど」
「オレだって」


それに獄寺君も山本もお兄さんも…と綱吉は繰り返した。

(みんなでクリスマスパーティー)





(別に綱吉に誘われたから行くわけじゃないよ。僕は綱吉の作ったっていうケーキが食べたいんだ。違う。綱吉の作ったケーキじゃない。ケーキが食べたいから行くんだ)
雲雀さん・綱吉が僕を呼んだ。黒いファーがついたコートが似合う綱吉。僕の手を握って微笑む綱吉。僕は握った手に力を込めた。
(なんでこんなに君は愛らしいの、)
「何・」
「今日は来てくれるって聞いて凄く嬉しかったです」
「そう」
「雲雀さん、一人が好きそうだから」
歩く速さは今はゆっくりと。
(そうだよ。僕は一人が好き。群れるのなんか嫌いだ。でもね綱吉、)
歩く速さは今は0。
「君と二人きりならもっと好きだよ」
(君の瞳ってそんなに大きかったかな)
綱吉が、握った手に力を込めた。



それから僕らは無言で。でも僕からしてみれば決して気まずいものではなく(綱吉からしてみればどうだろうか。彼は僕に気をつかう質だから気まずいのかもしれない)握った手を離さないまま綱吉の家の前に立ち尽くした。
「雲雀さん」
綱吉と目が合った。澄んだ瞳が埋まる眦が赤みを帯びている。寒さ故だろう。
「メリークリスマス」
嗚呼。なんて事だろう。僕に祝福をくれるのかい綱吉。



「君ってやっぱりクリスチャンなの」
「違いますよ。二人きりのうちに言いたかったんですよ、」
「ふうん」
本当はわかってる僕は綱吉の頭をやや乱暴に撫でてぐちゃぐちゃにしてそして正面からぎゅっと抱きしめてやった。耳元でイエス・キリストの使徒だか子供だか言うクリスチャンの群れるのに必要な合言葉を唱える。
(君と群れると幸せになれるんだ。僕は)
「ひ、ばり、さ」
「好きだよ」
(君と群れるのは)






MERRY X'mas !!







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