拍手ログ(ザンツナ) 幸せの赤い糸 「ねえ、ザンザスって幸せの赤い糸って信じる?」 何言ってんだコイツ。とうとう狂ったか。そんな意味を込めて視線をツナに向けたザンザスは無言のまま眉を寄せた。むろんそんな事はとうに予測済みのツナはにこにこと笑って黙殺した。早く答えろの催促でもある。そんなツナの横暴さには慣れっこであった(しかし意外でならない)ザンザスは、は・と嘲笑った後にふん・と再び眉を寄せた。更にしかめっつらになる。一方ツナは(ああまたシワが増える)等と心の中だけで嘆息してやはりにこにこと笑ったままだった。一言でいうと埒があかない、である。とうとう飽きたザンザスはガサガサと髪を掻いて「知るか」の一言。 「それって否定だよね?」 早く済ませてしまいたかったザンザスはそれでいいとばかりに手をひらひらと振った。適当。そんな形容詞がお似合いだ。 「ふぅん、オレと・一緒」 ツナのその一言でザンザスはおや・と逸らした視線を再びツナに向けた。 「くだらない」 その一言はやけに大きすぎる程室内に響いた。 「本当にくだらない、」 「君がね」 何しにきたの南国果実。雲雀は胡乱気な(実際は不快の方が圧倒的に多い)瞳を骸に向ける。骸はというと雲雀の部屋の雲雀のベッドの雲雀の枕をぼこぼこと殴りつけて振り返った。 「何って」 わかりませんか?骸は再び腕を動かした。 「僕がフルーツの思考までわかると思ったら大間違いだよ」 「クハッ!そうですねそれはいい。僕も鳥ごときに僕の行動を理解しろという事が無茶だった」 「そう。で、何してるの」 「憂さ晴らしですよ」 「僕の枕に?」 「君の枕に、」 しばらくの沈黙。そして骸が口を開いた。僕、つなよし君に聞いたんです。と。 「幸せの赤い糸は信じますか?と…僕には僕と君の赤い糸がはっきりと見える!だから僕らは繋がる運命なんだ!だからっ」 急にせきを切ったようにまくし立てた骸はまた急に萎む風船のように小さくなった。枕をぎゅうと握った。 「聞いたのに…つなよし君はザンザスに聞いてみようと、行って、しまった」 「ああ、つなよしはあのボス猿に大層ご執心・だから」 くだらない! 「つなよし君は…赤い糸なんて信じていないそうです」 まるで夢心地のように骸はぽつりと漏らした。 「へえ、」 興味をひかれた雲雀は呟く。 「ワォ・あの子がそんな事を言ったの!」 「ええ。確かに」 「それは興味深いね」 「僕は酷くショッキングですよ」 ツナがまるで夢見る少女のように思えてならない二人はその発言にそれぞれの反応を返した。まさにザンザスも同じ反応をしてるとは露ほども思っていない。骸は再び思いきり枕を殴る。ビリ・ズボ、という不快な音をたてて枕に貫通した。骸の腕が。 「…」 「…」 「くだらない。本当にくだらない」 「君がね、」 「赤い糸って何?運命なら誰とでも繋がるの?女でも?男でも?変だよ、そんなの。どうして自分では選んではいけないの?自分の愛すべき人くらい自分で決めてはいけないの?」 一息に言い放ったツナの顔は興奮か酸欠かやや赤みを帯びている。それを静かに赤い瞳で見つめるザンザスはツナに尋ねた。 てめぇの赤い糸とやらは誰に繋がってんだ、そう尋ねるとツナは小さな声で骸が、と零す。 「骸。骸が、僕と君は赤い糸で繋がってるって・」 ザンザスは、はっと笑った。お馴染みの嘲笑いだ。 ザンザスがツナを手招きする。 大人しく近寄ったツナの手首をガシッと掴んだかと思うといきなり銃を取り出して小指から5センチメートルほど離れた場所を撃った。恐怖よりも驚きが勝ったツナは発砲音にビクリと身を竦める。 「な、に…」 「これでてめぇの赤い糸はブチ切れたなあ!」 ざまあみろとばかりに笑うザンザスをぽかんと見上げ、そして抱き着いた。反動でザンザスは後ろに倒れたのだった。 END |