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泣き縋る綱吉を見て骸は綱吉を不憫に思った。(嗚呼可哀相な綱吉)子供をあやす様に背中を撫でて骸は微笑んだ。不謹慎だ。そう自分に言い聞かせたけれど自分に縋る綱吉が愛おしくて溢れでる笑みを抑え切れない。(嗚呼愛してるよ綱吉)


明晩、
骸は夢を見た。ぐるぐると上下左右前後もわからぬ空間に立っている。不安なのに懐かしい。そして視界は開けた。


**********


真っ白な空間に僕は居た。僕は僕といた。
「僕の綱吉に手を出さないでいただきたい」
あれはきっと僕。記憶を無くす前の僕。なんとなく、いらついた。いまさら出てきて所有権を振りかざすのですか。
「自分自身に嫉妬ですか。愚かな」
意趣返しとばかりに皮肉ると向かいの僕は(この場合、話し手である僕を「僕」。夢の僕を僕とする)クフフと笑った。いざ自分にやられると何気なく苛々するものだ。


「僕は僕。君も僕。もとより、僕を助けるなど無意味なのですよ。何故なら僕はもうここに居る。記憶になど埋もれていない。ここに存在しているから」
「僕」はその異色の瞳を僕に向けた。
「哀れな幻影よ。綱吉の前より消え失せなさい」
そしてフラッシュバック。



(嗚呼、ああ…僕は、「僕」は怖かった。怖かったのだ)
確実に消えてゆく自分の躯。「僕」の瞳の光に焼かれながら消えゆく意識と躯をたいして意味もなく守りながら僕は「僕」の記憶を見た。想いを知った。
(綱吉をおいて生きのびる事が怖かった…だから、だから…僕を作った。記憶の底に逃げる事で目を逸らしたのか。何も知らない僕を綱吉の側におく事で、恐怖から逃げたのだ)
それっきりだった。僕は真っ白になった。


**********


「骸っ?」
「ん…綱吉、…」
「…骸?」
「少々、深く眠り過ぎたようですね…起こしに来てくれたんですか?」
「う、うん…中々起きなかったから…心配になって」
そして目を伏せた。相変わらずかわいらしいと骸は胸中で呟く。


(僕は消えた。「僕」が消した。「僕」の事を知ってしまった幻影は、もう要らない。これからは、「僕」が綱吉の側にいる。綱吉を置いていくのは嫌だけど…他の誰かたとえ自分でも…綱吉の最期を見せるのはもっと・嫌ですから)骸はにこりと微笑む。綱吉の頭をそっと撫でてそして手を握った。
「心配かけてすみません…もう大丈夫です」
「うん…あ・の、…骸は?骸はどうだった?」




あきゅろす。
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