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残り香と呼ぶにはあどけない(キリリク/ヤマツナ/πナッポーへ/完)


夕方、には少し遅く、夜と呼ぶには少し早いそんな時間に二人はのんびり自転車をこいでいた。山本は自転車をガシャンガシャンとこいで、ツナは山本の腰にしがみつきながらその自転車の荷台に座る。所謂「ニケツ」と呼ばれるそれだ。まだ雲がはっきりと見える。しかし空は薄暗い。
ふわりと汗に混じって石鹸の香りがした。あ・ツナの匂いだと山本は思う。
夏になって日が長くなったとはいえ、山本の練習が終わるのを待っていたツナはどんな気持ちだったのだろう。寂しかった?待ち遠しかった?飽き飽きしてた?帰りたくなった?山本はそれを尋ねる事が出来なかった。
だいたい何故夏は日が長いのか。そんな違うところに八つ当たりする。大会も近付く夏は日も長い事もあって練習時間も長い。だからツナをこんなに待たせてしまった。
どこかで囃子の音が聞こえた。



「ツナー」
「うん?」
「あのさ夏休みなったらさ」
「うん」
「祭行こーな」
「うん」
「…二人で、」
「う・ん、」



獄寺にはわりぃけどな、と山本は呟いた。
ツナの家は学校から比較的近くにある。こんなにのろのろと自転車をこいでいるのにすぐに着いてしまう。(山本の「すぐ」は他の人の「すぐ」と同じではないかもしれないねとツナは笑った)ツナはあんなに待ってくれたのに二人の一緒に居られる時間は余りにも短い。でも行きはとんでもなく長く感じるのに帰りはあっという間だねとツナは呟いた。(やっぱ「すぐ」なのな)うん。とツナは笑った。
ツナを家の前まで送って、じゃ・また明日と手をふった。ツナは山本が見えなくなるまで見送ってくれるのを知っている。だから山本はペダルを踏み込んだ。ゆっくりゆっくり。ツナから離れたくない。だからゆっくり。
(もう見えねーのな)
背中の冷たさだけが鮮明で山本はスピードをあげる。赤信号で止まった時、ふわりと石鹸の香りがした。
ツナの匂いだと山本は思った。






















それを残り香と呼ぶには俺達はまだ幼かった












END








あとがき

πナッポーのキリリクで青春ヤマツナ!!お粗末さまでした。πナッポーだけ苦情&持ち帰りドゾ!!!


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