山茶花の小説

ビッチなカノンとメルヘンなラダ

  1    18禁ラダ×カノン

「貴様を愛してる」

 は…正気か!?後ろから喚いてきた男のあんまりな言葉に、俺は思わずまじまじと相手の顔を見返してしまった。

 そこには怖いくらい真面目な顔をして、冥闘士ワイバーンのラダマンティスが立っていて。
「貴様を愛していると言っているんだ。」
 …おまへはこの俺に、どういうリアクションをもとめているのかな。

 ここは、グラード財団とソロ家主催の合同事業の落成記念パーティ会場だぞ。俺とシュラはアテナのボディガードとして参加しているが、お前はなぜここに居る。
 …その前に俺の前にはアテナがいらして、シュラが居て、ジュリアン・ソロが居て、ソレントが居て、アテナの付き添いとして辰巳がいて、他にも民間人が山のようにいるのだが…。
 流石に冥衣は着てないとはいえ、ガタイのいい男がガタイのいい男の背中にへばりついた挙句に手を握り締めていう言葉か、それは。
 とんでもない顔をしてるだろう俺に気が付いたのか、こちらを見たシュラが珍しい事にキツイ目を見開いている。
「ラ…ラダマンティス!なぜ、お前がここに居る?」
 やっぱり、そう思うよな…なぜ冥界3巨頭の一人が、人界のこんなパーティ会場にいるんだ?
 俺の疑問は、思いがけない人物によって解き明かされた。

「冥界は、今現在業務停止中なんだよ。生きている者・命を失った者・生き返った者のチェックに忙殺されていてね。それが再開されるまでの間、彼をソロ家の客人として預かっている。今までいろいろと遺恨もあるだろうが、良かったらここにいる間だけでも仲良くしてやってくれないか。」
 にっこりと微笑むソロ家当主、海皇ジュリアン・ソロに文句の一つも云えるわけが無く、俺は力なく瞳をそらした。

「まぁ、聖闘士と冥闘士の隔たりを超えて友情を育むとはすばらしい事です。」
 あの…アテナ…失礼ですが麗しいおめめがキラッキラされてますけど…
 
 いくら、『太陽神アポロンの必殺!総ては無かった事攻撃』で、地上も海界もそして冥界も恒久的な講和条約を結ばされてお暇とは言え、おかしな本に耽溺されるのはいかがな物かと思われますが…
 
 アテナも海皇も辰巳もあてにはならんし、最後の望みを賭けて常に冷静な山羊座の聖闘士に目を向けたが…思いっきり目を逸らされてしまった。

「シ…シュラ…」
「すまない、オレも我が身がかわいい。…闘えと言うならやぶさかではないが、そっち方面は御免こうむる。」
 万策尽き果てて、思わず天井を見上げていると止めを刺すようなアテナの声がした。
「私が許します。カノン、ここはもう良いですから、彼をギリシャ観光に連れて行っておやりなさい。せいぜい楽しませてあげるのですよ。」
「おぉ、さすがはアテナ!なんとお心の広い。…では、早速カノンをお借りして参ります。」
 にこやかに微笑むアテナとジュリアンに一礼すると、ラダマンティスは俺の手を曳いたまま歩き始める。
 …ち、ちょっと待て俺の意志はどうなる!俺の心の声は誰に省みられることなく風に散っていった…


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あきゅろす。
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