山茶花の小説
シードラゴンとワイバーン   その6

 二人分の吐精にまみれてぐったりしたカノンの体を抱いて、バスタブに満たした温かいお湯に浸けてやる。大柄な男が2人で入るには少し窮屈ではあったが、抱いていてやらないと独りでは溺れてしまいそうだったから仕方がない。

「たまには俺の方がイニシアチブを取ってやろうと思ったんだが…」
 ラダマンティスの腕の中でカノンが憮然とした顔で呟いた。
「今度の楽しみに取っておけばいい。」
 後ろから腕を回して仰向かせたカノンに口づけする。
「次があればいいがな…」

 憎まれ口を唇で塞いで、胸から腹部にかけて散っている薄赤い傷跡を指でなぞってみる。それは海皇の三叉の矛で刺された痕だった。海皇を裏切りアテナをかばって、その怒りの矛の前にわが身を差し出した忠誠の証。
 聖闘士としての名誉の傷跡のはずなのに、ただ他の男がカノンの体につけた跡というだけのことに嫉妬している自分に気づく。神の怒りの雷で灼かれたあとは一生消えないという。ならば神の怒りを受け止めたこのキズもカノンが生きている限りついて回るという事か。確かに身体に受けたどんな重傷も、ほとんどカノンの身体に傷跡を残してはいない。

 だがこの傷跡は同時にポセイドンとの決別の証でもあるのだ。

 カノンはあくまでもアテナの聖闘士であり、海界の海将軍を兼任しているといっても以前のようにポセイドンに隷属しているわけではない。

 くびきを解かれた碧い龍は自由に泳ぎまわる。アテナの大いなる愛の中をポセイドンの庭に、聖域の兄のかいなの中に、そして冥界のラダマンティスのもとにも。

 移り気な碧い龍を手元にとどめる事が出来ないなら、腕の中に居るこのひと時を大事にしょう。 
 
 そしてカノンは、後ろから自分を抱きしめている男の昂まりに気が付いた。

「おい!…なんだコレは///。」
「すまん、その気になってしまった。…もう止まらん!」
「…止まらんって…ん…むっ…」

 さっきまでラダマンティスの太い幹を飲み込んでいた蕾は、カノンの抵抗もむなしくたやすく翼竜の侵入を許してしまう。
「ばかや…ろ…」
 涙目で抗っても後の祭り…。

 自身の体重でより深く相手の侵入を許してしまうこの体位で攻め立てられて、カノンの身体が反り返り激しい律動に絶え入るような悲鳴がもれる。ばしゃばしゃとバスタブのお湯が飛び散り、大きく開かれた足に長い髪に纏わり付く。

「あぁ…やめろ…そんな奥ま…で…」
「この奥がいいんだろ」

 ラダマンティスは強烈な快感に身もだえしながら逃れようとする身体を抱きしめて、より強く逞しい腰を叩きつける。

「ひぁ…ラダ、ラダぁ…」
「カノン…俺のカノン…」

 引き裂かれるような激しい抽送に、カノンの意識は次第に白熱し炸裂した。

「らだぁ…」

 ラダマンティスはぐったりしたカノンの体を抱いたまま、ベッドに潜り込む。濡れた身体をバスローブに包み込み、長い髪はナイトキャップのようにバスタオルでぐるぐる巻きにして。

 もはや完全に意識をなくしたカノンは、ラダマンティスの腕の中でまるで幼子のような邪気の無い顔をして眠っている。特徴的な生き生きとしたあおい瞳が閉じられていると、まるで繊細な造作の人形のようにも見える。

 かつての宿敵と拳を交わした相手をこんなにも愛したのは運命の悪戯なのか。だが、ラダマンティスは満足げに笑った。喩えこの感情が運命の神の悪戯だとしても、決して不服は唱えまいと。むしろ自分の運命の糸をカノンのものと絡め合わせてくれた存在に感謝さえしていた。
 
 カノンの白い額に祝福を授けるようなキスをして、自らの肩にもたせ掛けるとラダマンティスも満足げにその目を閉じた。


 …翌朝になって、怒り心頭なカノンに叩き起されるのはまた別のお話…


                       終


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あきゅろす。
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