山茶花の小説

閑話休題

無題その後の話シュラ目線

 最近アテナはお忙しいようだ。
アテナ神殿にお篭りかと思えば、東京の城戸邸にいらしてみたり、冥界や海界と長電話されていたりする。

 夏コミとやらに出される同人誌とやらの追い込みだそうで、今もソロ家の系列のホテルに長期滞在中だ。
冥界のパンドラ様と海界のジュリアン・ソロ殿とご一緒に閉じこもっておられる。
 とは言え、年頃の男女の事でもあるし間違いが起こっても困るということで、護衛+お目付け役としてオレ、山羊座のシュラと、海界の海魔女のソレント、冥界からは天猛星のラダマンティスが派遣されてきている。

 そこそこ大きめの控え室とは言え、大の男が3人も長時間こもりっきりで居ればいい加減気詰まりになろうというものだ。
 それで一人ずつ休憩をとること事にしたが、今度は一人がきぅう系に入ってしまうと残されたものたちは2人っきりになってしまってかえって気詰まりになったワケだ。
 聖闘士のオレと海闘士のソレントには何の接点もなかったので、勢いカノンの話ばかりになってしまった。おかげでオレはこの何日かで、シードラゴン時代のカノンについてかなり詳しくなったぜ。

 いや、本当に共通の話題が他に無かったからなんだが。

 問題はラダマンティスの方で、最初にカノンは来ないのか聞かれたきりで終始無言。そのくせ、なんか云いたそうな顔でチラ見してくるからウザイ。男の察してチャンは気持ち悪いだけだぜ。

「おい…何か云いたい事があるんじゃ無いのか?」

 びくっとするな!びくっと!まったく、これがアノ偉そうに踏ん反り返ってた奴かと思うと頭が痛くなるな。

「あんなパーティのど真ん中で野郎に告白した奴とは思えんな」
「あ…あれは、パンドラ様が大勢の前の方が断られにくいと教えてくださって…」

 やっぱり、仕込みかよ…。
 
 オレの脳裏に浮かんだ麗しのアテナには悪魔のしっぽが生えていた…いかん!アテナの聖闘士として流石にそれは…代わりにパンドラ嬢とジュリアン殿に登場していただく。
 悪魔の角としっぽつきで…


「あいつが、俺のことを愛しているわけじゃない事は知ってる。あいつが本当に愛しているのは、もう一人のあいつ自身だって事も。俺は、単なる身代わりに過ぎないんだ。ただ、見かけが似ているだけの肉便器だ。」

 カノンは両手で顔を覆って嘆息する。

「だけど、俺ももう一人のあいつが好きなんだよ!決して報われるわけ無いとわかっちゃいるのに、あいつに抱かれる度にこれはもう一人のあいつの体だと思ってしまう。」
 
オレは何も言えずに車を走らせていた。顔を覆った指の隙間からかすかに嗚咽を漏らすような音が聞こえていたけれど。

 黄金聖闘士と言えど心までは鍛えられんからなぁ。

「ラダマンティスは、こんな俺だとは知らずに好きだと言ってくれた。正直悩んでいるのだ、不毛な関係から足を洗うべきか、それともいっそ共に地獄まで落ちようかと…。」

 カノンは壮絶な笑みを浮かべている。お前のキャラじゃないだろう…。

「とりあえず、今優しくされたら誰にでも抱かれてしまいそうだから、当分ラダマンティスとは会えない。もし、アテナからのご依頼があったときには何とかごまかして欲しい。」

 難儀な兄弟だなぁお前達は。

 さて、囚われのお姫様を助け出す王子様になるか、ただの道化で終わるか知らないが、お話を聞かせていただきましょうか。

 オレはラダマンティスに向き直った。
              
                      終

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