山茶花の小説
無題 その3
「おかしいわね?」
急に反応しなくなった受信機を、あちこちさわりながら沙織が訝った。大画面のテレビに接続されたマイクロサイズの盗撮カメラの映像が、急に転送されなくなったのだ。
「いきなり映像が途絶えて、うんともすんとも言わなくなってしまったわ。折角これからっていう処だったのに。ツンデレなあの子が実の兄に抱かれてどんな風に悶えるのか、すっごく楽しみにしてたのよ。それなのにこんな事ってないわ。…そのうえ、ハードの方もダメみたいなんて…」
悔しそうに受像機やテレビの画面をバンバンたたきながらまだ沙織は諦めきれずに居る。
「気づかれてしまったのかしら。あんなに小さなカメラなのにね。」
ビデオカメラの画面を覗き込んでパンドラが不思議がっている。ほんのピンの頭くらいの大きさながら高性能なカメラは、沙織が会長を務めるグラード財団の極秘機密として作られた特注品だ。
「確かにさっきまでは人影が映っていたし、音声もはいっていたのに?」
それまでどんなターゲットにも悟られたことのないお墨付きの逸品だったのだ。
「ふふふ、流石にシードラゴンのお相手は只者じゃないようだね。」
楽しげにジュリアン・ソロが笑う。
「笑い事じゃなくてよ!もう夏コミまで日が無いと言うのに!」
長い髪を振り乱して沙織が叫ぶ
「だからこうして集まっているんでしょう。もっとしるだくのがっちゅんにページを割いて大ゴマでごまかして、後はイラストとフリートークを多めに取ればまだ何とかなってよ。」
こちらは幾分か冷静なパンドラ。しかし、その黒目がちの大きな黒曜石の眼の下には無残なくまが浮かんでいる。
「では、私はシードラゴンのネタでなにかSSを書くことにする。文章の方が時間がかからないからね。…カットはアテナにお願いするよ?シードラゴン総受けで頼む」
神々は今日もお忙しいようである…
終
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