海原
一人の女として。



…今の状況は一体なんだろう。

オレ(とペンギン)の部屋に飛び込んできたのはナツミ。ちょうどペンギンが気象観測に出たばかりの時。
扉を破るんじゃないのかというぐらい強く開いたナツミは泣いていた。



「ナツミ?!オイ、どうしたん…うわぁ!」

『………』



ベッドで寝転んでたオレの上に乗り、胸に顔を埋めてから約5分。
何もしないし答えないナツミにため息をつく。



「ナツミー?おーい、いい加減答えろってー」

『…キャス、』

「お、答えた」

『キャプテン殴ってきてよ』

「オレに死ねと、」



顔を埋めたままで毒舌を吐くのは紛れもなくナツミだ。
…まあ、今ので原因は特定できた。というかあの人ぐらいか、コイツの表情をこんなに引き出すのは。



「…おりゃ!」

『わっ?!』



いい加減乗られてるのも精神的にも体力的にも辛いので横に落とす。
顔を挟んで目を合わせるとまだポロポロと涙を落としている。おかげでツナギがびしょ濡れだ。



「あーあー…ぶさいくだぞー」

『うっぜ、』

「で、どうした」



じっと目を合わせれば、ぽつりぽつりと話し出す。
自分が居ない間あの四皇赤髪の世話になっていたこと、もらったイヤリングのこと、キャプテンに何をされたかということ。



「んー…どっちも悪い」

『…なんで』



不服そうなナツミに思わず苦笑。
けど、わかった。コイツは平和な場所で愛されて育ったのだと。



「ナツミの愛はさ、オレたちの愛と赤髪への愛が平等過ぎんだよ」

『何、それ』

「オレたちは仲間で家族なのに、友達?まあ、友達でいいか。友達に注ぐ愛が平等なんだよ」



それの何が悪いのかとナツミは首を傾げる。



「例えば、オレたちと赤髪のピンチ。どっちを助ける?」

『…どっちも』

「オレたちは家族で赤髪は友人なのに?」

『……』

「オレだったらすぐに家族を助けるね、恋人を秤にかけても絶対」



家族…とぽつりと呟くナツミからはもう涙は流れてない。



「キャプテンはさ、家族を大切にして欲しいんだよ。まあ、だからってやり過ぎだけどな」

『…うん。ゴメン』

「それはオレにじゃないだろ」

『…ありがと、キャス』



そう言ったナツミは疲れてたのか、そのまま横で寝てしまった。

あーあ、無防備に寝ちゃって。オレじゃなかったらどうすんだよ。
なあ、家族って言ったけどさ、きっとキャプテンはお前を。





一人の女として。



愛してるんだよ。

でも泣かせた罰としてペンギンにチクってやろ。






 

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