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反転、世界は美しく変わる
「遅かったな、ハチ」

遅刻ギリギリじゃねーかよ。
と笑う彼は、朝の事を忘れさせるようだった。
いつもと同じすぎて、あれはまるで夢だったのではないかと錯覚すらする。

「……あとで、話があります」

出た声は自然と重く、冷たくなっていて。彼は表情を強張らせた。
そのまま自分の席につく。生憎僕と彼の席は離れているので気持ち的には落ち着いた。いつもなら嫌で仕方が無かったこの席が救いに思えた。
そのまま上の空のままホームルームが過ぎて休み時間。
教師が教室を出ていくなり彼の席へ近付き彼の手を取った。
彼が何か言う前に強引に手を引き教室を出て足早に廊下を歩く。

「ッ、ハチ!」
「その名前で呼ばないで下さい!僕は、僕は六道骸だっ、」

昨日までなら何とも思わなかったそのあだ名も、今では苛つきの元でしかない。
適当な空き教室に入り、彼を問いただす。

「…どういう意味ですか朝の事は。」
「そのまんまの意味だよ。」

彼は僕と視線を合わせようとせず、俯いたまま答えた。彼の素っ気ない態度にも、先程から感じる右目の痛みも、全てが気に入らなかった。頭に、血が上る

「っ、君が好きなのは僕なのでしょう!?」

僕の言葉に弾かれたかのように顔を上げ、キッと睨みつけられる。

「…違う。俺が、俺が好きなのは…っ」

じわり、彼の瞳に涙が滲む。
何かに耐えるような、堪えるような、葛藤の入り交じる表情で。
今にも泣きそうな顔で僕を見つめる。

「こんなの…、卑怯だ。」

ぽつりとそう呟いたと思うと彼は教室から出ていってしまった。
急いで彼を追いかけようと続いて僕も廊下に出るが、彼の姿はもう無かった。
、何処に行った?
教室…、は無いだろう。彼がそんな単純な場所に戻るわけがない。
いつも昼休みを過ごす中庭?それも、ないか。簡単な予想のつく場所に行かないだろう。
何処に、何処にっ、

「―ッ、ァ…」

突然右目を襲った激痛にふらりと壁にもたれた。
今まで以上に、熱を持って脳にじくじくと痛みを訴える。
でも、なんとか彼の元に行かなければ…。
壁に手をつけながら、ふらふらと歩みを進める。
壁に付けられた鏡を何となしに見て、唖然とした
鏡には右目の赤い自分が写っていたのだ。

何だこれは…、

六と刻まれた血のように赤い目。
こんなの、こんなのは知らない。確かに僕の目は普通とは言えない色をしている。けれどそれは僕にイタリア人の血が混じっているからであって。
色も赤くなんてない。両目とも、蒼の………

ずきん、赤い瞳が痛む、疼く。そして…頭に映像が流れていく。
これは、僕と彼……?
笑顔で話すふたり。幸せそうに、恋人のように。
こんな風に笑う彼を僕は知らない。けれど映像の中の僕は知っている、なんて…矛盾。

"骸"

彼が、僕の名前を呼ぶ。嗚呼、そう言えば彼に名前を呼ばれるのは初めてだ。なのに、この懐かしい響きは何だ?
頬を伝うものは、何だ?

「…これは、涙?」

留めなく溢れ、頬を伝うものは確かに涙だった。
映像が段々と終盤に差し掛かっていく。見覚えのないそれはいつの間にか懐かしいものになっていて、感慨に涙が溢れる

ああそうだ。僕は――

「六道、骸だ。」

思い出した。全てを、呪われた右目を持ちマフィアに憎み世界を恨んだ前世。それを救ってくれたのは彼だった。
何故忘れていたのだろう。何よりも大切な記憶だったのに

そして彼が今朝言っていた言葉。明日は、僕と彼が初めて想いを告げ通じあった日だ。

記憶が残った今、彼の行き先はもう分かっていた。学生時代によくサボって行った、そこしかない。
気付けば僕の足はそこに向かって走り出していた。





 転、

  

   
 








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ということで補足編でしたっ!
補足編にもかかわらず、内容があまり解き明かされていない気もしますが…。
というか詰め込みすぎて不完全燃焼な感じがしますね。

主が行った場所は屋上とかそこら辺だと思います。
あと、卑怯だと言ったのは6番目の骸と同じ顔、声、態度で聞かれたら逃げられないじゃないかと言う意味です。惚れた弱味というやつです←

補足編なのに更に補足しないと分からないという何とも残念クオリティで申し訳ありませんっ!
こんなものでよろしければ飛呂さんに捧げます。



※此方の小説は飛呂さんのみ転載、その他諸々許可しております。


09.7.29露雪 彩香


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