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3
いやー冗談抜きにまじで酷い目に遭った。
ケツん中思いっきり指入ってたんだけど。
まだなんか違和感ある。
ああなんかもう泣きたい。
つか既にちょっと泣いてるけど。

なんてあまりのアクシデントに情緒不安定気味になりつつ、無事政岡から逃げ切った俺は人目を避けるようロビーから離れた通路を歩いていた。
学生寮一階。
まだ殆どの生徒がおやすみ中のようで相変わらず人気がないそこはどこも無人で、とにかく服を着たかった俺は前後左右人気がないのを確かめる。
いくら人気がないとはいえ通路のど真ん中で着替えたくない。
政岡が追ってきている可能性を考え、近くに男子トイレを見つけた俺は一先ず休憩をするためにそこへ小走りで入ろうとしたときだ。

丁度男子トイレから人が出てきた。
衝突そうになる直前、慌てて足を止めたが色々遅かった。


「うわっ!」


「…………って、あれ?尾張?」響く聞き覚えのあるどこか間が抜けた声。
お洒落眼鏡に黒髪。
男子トイレから出てきたのは今もっとも会いたくない三大トラウマ眼鏡の一人、五条祭だ。因みに残りの二人は言わずもがな岩片と野辺だ。

まさかこんなところで鉢合わせになるなんて思いもしてなかった俺は反応が遅れ、そのまま硬直する。
同様、いきなり現れた俺に驚く五条は口をあんぐりさせ、そのまま視線を下げた。
そして沈黙。
たまたま両腕に抱えていた制服のお陰でモザイク必須なことにならずに済んだが、どちらにせよ状況の悪さは変わっていない。
どう頑張ってもこれでは俺はただの露出狂だ。


「言いたいことはわかるけどこれは深い事情が」


まるで浮気現場に恋人が現れたような一発触発の空気の中、大体テンションが高い五条の無表情に堪えきれなくなった俺はそう先に釘を刺そうとした。
必死に平常心を装いながらそう俺が口を開いたときだ。
瞬くフラッシュに視界が白ばむ。


「……嘘だろ……俺尾張のこと爽やか腹黒だと信じてたのに……深夜に全裸で公園徘徊する人種だなんて……真っ黒なのは腹の中じゃなくて前科だったんだな……」


いや捕まってもないし常習犯でもないし、そして上手いこと言ったつもりなのだろうが全く上手くないからな。
いや、違う。
突っ込むところはそこではない。


「あんた今なに撮って……」

「は?なに?撮る?なんのこと?」

「おい、しらばっくれんなよ。ちょっと手出せって、なに後ろに隠してんだよ」

「隠してないって!カメラとか知らないし!いくら俺がそういうあれだからっていくらなんでも訳有りそうな友達の裸体撮るわけないだろ!!俺を信じろよ!!」


白々しい態度を取ったと思ったら今度はそう逆ギレをし出す五条。
熱くそう真摯に説得してくるのは大いに結構だが、さべてそのズボンのポケットからちらりとはみ出ているデジカメをどうにかしてから言ってほしい。
というかそういうあれってなんだだとかお前はノリノリで友達の乳首を開発するのかとか色々言いたいことはあったがツッコミが追い付かない。


「いいから隠してんのを出せって言ってんだよ」


流石にこんな場面を撮られてまで取り繕う余裕はなく、笑みを引きつらせた俺はそのまま手を伸ばし五条の腕を掴んだ。


「いやーっ!やめてー!尾張君に犯される!!腐男子受けにジョブチェンジしちゃうよおお!!」


そのままポケットに手を突っ込み、入っていたカメラを取り出した瞬間、五条はそう裏声で喚き出した。
誰が犯すかと張り手食らわせたくなったが、生憎前を隠すのとカメラを持つので両手が塞がっている。


「ばっ……声でかいって!おい!」


大きな声で人聞きの悪いことを言い出す五条に冷や汗を滲ませた俺は内心冷や汗を滲ませた。
なんとか黙らせようか。いや、このまま立ち去った方がいいかも知れない。
そう頭の中で打算したときだ。
伸びてきた五条の手に、下半身を隠すように抱えていた制服を引っ張られる。
片手で抱えていた俺は慌てて両手で抱き締めようとしたが遅かった。
乱暴に取り上げられ、見事隠すものがなくなった俺は背筋が薄ら寒くなるのを感じた。
五条の視線に気付いた俺は慌てて下半身を手で隠す。


「フルチンを恥じらう露出狂だと……。『僕のおちんちん見てほしい……だけど、ああっ!やっぱり僕恥ずかしいよぉ……』ってこと?」

「まず露出狂じゃないしお前の目がねちねちしてなんか気持ち悪いんだよ。早く返せって」

「気持ち悪くないし!そんな見てほしいって言わんばかりの格好してる方が悪い!」

「だから服着るからそれ返せって言ってんだろ」


あまりにも話の通じなさと相手のハイテンションに煽られてか、次第にこちらも力が入ってしまう。
なるべく言葉遣いと表情に気をつけているつもりなのだがやはり顔に出ていたようだ。
「えっ尾張顔ちょー怖い。もっと笑って笑って!」と慌てて宥めてくる五条だったが、すぐに笑みを浮かべる。


「なんでこんなところでこんな時間にそんな格好してるのか教えてくれたらいいぜ。あとカメラ返してくれたらな!」


明らかに新聞のネタにする気満々な変態眼鏡の新聞部部長は満面の笑顔を浮かべた。
カメラを奪ったこちら側も五条を脅迫し返すことができるのにも関わらず強気で出てくる五条の様子からしてこのカメラは然程重要なものではないことがわかる。

なんだか嵌められたような気がしてならないのは恐らく気のせいではないのだろう。
やっぱり眼鏡かけてるやつとは相性が悪いようだ。
人の足元見やがって。

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あきゅろす。
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