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short39







#ジャンルキ







 泣きそうだった。何故こんなに自分の瞳から溢れてくるものが止められないのだろうか。おおよそ大の男には似つかわしくない。レディーが流していたら、なぐさめてやりたくなるもので、そのままベットに直行お持ち帰りパターンになるくらい、男心にグラッとくるもの。その涙がなぜか止められない。今日は何があっただろうか。自分でも原因はわからない。別に花粉症な訳ではない。仕事が山積みで終わらないからというわけでもない。誰かにいじめられてというわけでもない。(そんなことをしたら俺の忠実なマッドドッグがその誰かを殺しているからそんなことにはならない。)筆頭幹部殿の愚痴を聞いていてうんざりしたわけでもない。(いや、少しうんざりだったが俺がどちらかというと慰めて方だ。)最年少幹部殿の女に対する七変化に辟易したわけでもない。(というかあいつ毎日毎日よく疲れないなこっちが感心する。)ではなんなんだろう。どうしてこんな気持ちになるんだろう。


すると、ふわっと嗅ぎ慣れたムスクの香りがジャンの鼻孔をくすぐった。ポンっと優しくたたかれた頭と、少し低いテノールの声。

「・・・ジャン?」


その感覚は久し振りだった。


「どうした?しけた面して・・ようやく出張から帰ってきたってのに。」
「ルキーノ・・・」

しけた面ってひでーなって、ジャンは笑おうとして・・・だけどそれは今のジャンには難しくて・・・、ルキーノの顔を真っ正面から見た瞬間、それは崩壊した。


「っつ・・・る、ルキーノ!!」
「うわ、お、おい?なんだ!?何泣いてんだ、ジャン!?」

俺だって知るか馬鹿野郎。そう言って笑い飛ばしたくても無き笑いになってしまう。どうにもこの涙は俺の言うことを聞いてくれないらしい。暫くして声が出ないジャンの耳にため息一つ。呆れられたかなと思い、顔をあげようとして、先程まで少しだけ離れていたルキーノとの距離がゼロになった。優しく抱き締められて背中をポンポンとされる。まるで幼子をあやすように。ポンポンと。そしてそんな風にされてようやくジャンは肩の力を抜くことができた。

(そういえば・・・。)

一月くらいまともにルキーノの顔を見て無かった。何気なく最近全然会えないよなとか、あいつどうしてるんだろうとか、そんなことを考えていて・・・

(そうか、わかった。)

俺はルキーノに全然会えなくて寂しかったのだと。抱き締めてくれる優しい腕にジャンもまた腕を彼の背に回し、ぎゅっと抱きしめた。










「なぁ、ルキーノ。」
「ん、どうした?」
「寂しくて死にそうだったから抱かせて。」
「ストロンツォ!調子に乗るな!」




涙腺はぶっこわれた
(アンタの顔を見た瞬間、安心して涙が止まらなかった。)





END











あきゅろす。
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