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★short38






#イヴァルキ
裏描写あり。




 暖かな光に包まれたテーブルで誰かが話している気配がする。おだやかな女の声と可愛らしい女の子の声。ふと気が付くと、男は見覚えのある木のフローリングの廊下で佇んでいた。そうだ俺はこの場所を知っている。そこがどこなのか、男が見間違えるはずがない。自分は今まで何をしていたのだろうか。何かとてつもない長い夢を見ていたような気がする。男は安堵の息を口元から漏らし、気配がするその方向へとその足を向けた。その気配の主が誰なのかを男は知っている。誰よりも大切な、愛しいあの子たち。きっと、笑顔で俺を出迎えて、小さなあの子は俺の足もとに飛びついてくるだろう。俺はそれを受け止めてやるんだ。いつものように。あぁ、そうだとも。あんなこと現実であるはずかないんだ。俺は夢を見ていたんだ。この小さくも幸せの詰まったこの場所こそ、俺の場所だ。何のしがらみも、醜いことも無いこの場所こそ、俺の。あぁそうだとも。


〈今も、お前たちはそこにいるんだろう?〉










 銃声とともに男二人が血まみれで倒れるのをルキーノ・グレゴレッティーは冷めた眼で見下ろした。カナダの会社が開発したその銃を下ろし、脇のホルスターへと仕舞う。息もしていない既に肉の塊と化したそれらに、もう一度ルキーノは目線をやった。拷問する価値もねぇランダージョ、男の風上にもおけねぇその男たちに同情する気持ちすら起き無かった。

「んだよ、ファック!もう片しちまったのかよ。」

銃声を聞きつけてきたのか、青髪の男がこちらへと嫌そうな顔つきで罵倒を零した。その言い方は勝手なことしやがってと、この俺の行動を咎めているようにも聞こえた。

「あぁ、豚公のマナーがなってなかったもんでな。」

ハッと憎々しげにルキーノは笑い、肩を竦めると、その男ーイヴァン・フィオーレにそう返し、その場から立ち去るために足を動かした。
 自分の部下たちを待たせてある。一旦本部に戻ってこうなっちまった経緯をボスに伝えなきゃならんしな、そう呟いたルキーノに足取りを合わせ、イヴァンはますますその眉間を深くさせた。

「おい、ルキーノ。」
「・・・なんだ?」
「てめーよぉー、今日変じゃねーか?」
「どこがだ?」
「普段のてめーなら、さっきみたいな軽々しいマネしねーだろうが。なんだって・・・」

直ぐに殺っちまいやがった。くそ面倒くせー事になったらまずいだろうが。そんな事を言ったイヴァンに、ルキーノは思わず笑ってしまった。

「お前に、そんな事言われるとはな。」
「うっせーなぁ、なんだっててめぇーはそう一言多い。たく、流石に俺だってな、昔のままじゃねーっつの。」
「そうか、そうだな。」

マジション刑務所から共に脱獄したあの日からすでに五年もたてば変るかと、ルキーノは懐かしむように眼を細めた。そしてあの日からは既にもう七年になる。

「・・・悪かった。」
「あ?」
「さっきの事だが、気がたっちまってたみたいだ。」
「・・・気持ちわりぃーな。そう簡単にてめーに謝られると。」
「うるせぇーな。」

そう言って、ルキーノはイヴァンから視線を外す。周りに変に思われないように自然と振る舞っていたつもりだったが、まさかこいつに気がつかれるとは思わなかった。
 確かに今日はあまり機嫌が良いとは言えない。あの夢のせいだと、心の中で舌うちを零した。久し振りに見たあの光景。あれを見る度に、そこにずっと留まっていたいと思う自分自身。今俺が生きているのは、あの頃では無い。すでにあの子達とは違う道を否応なく進んでいる。それでも振り返ってしまう。今の自分を言葉にするなら、身体だけが前に進んで、心だけが置き去りにされているそんな状態。許されるとは思っていない。だから俺は自分の犯した誤ちも、罪もずっと背負ったまま、生きると決めた。
 ルキーノは真横のイヴァンを見た。眉間の皺は無くなってはいない、仕方無いとでもいうかのように後ろの首に手をあてて、息を零す。俺の言葉にあまり納得がいってないないのだろう。けれど、深くは聞いてこない。それがこいつの気遣いなのだと解るようになったのは、果たしていつからだっただろうか。

「おい、イヴァン。」
「あぁ?なんだって・・」
「こっち、こい。」
「はぁ?」

 何故かそういう気分になりルキーノは、イヴァンの腕を掴むと周りのルキーノの部下に、後は頼むとそう言い残し、暫くして路地裏の方へとイヴァンを連れ込んだ。

「おい、ルキーノ・・つ!」

文句を言われる前に、強引に奴の唇を塞いだ。イヴァンの口内を自身の舌で犯す。一度息継ぎをするために離し、また塞ぐ。自分自身をこの場に繋ぎとめていたかったからではない。その思いは心の底に少しだけありはしたが、その時はただ純粋に、こいつの熱が欲しいとそう思った。

「おい、こんなところで、まずいだろうが。」
「うるさいぞ。我慢出来ないんだよ、俺が。」
「何も用意してねーんだぞ?困るのはてめーだろうが!」
「生娘じゃあるまいし、いいんだよ。痛いくらいで調度いい。男ならごちゃごちゃ言うんじゃねーよ。」

くそ、どうなってもしらねーからなと、イヴァンはルキーノを壁に押し付けると反転させ、今度は自ら彼の舌をルキーノに侵入させ、からめとる。奴も興奮していたのは解っていた。先程から自身の足に当たっているそれがいい証拠だ。こっち方面に関しては、我慢しろって言ったって、我慢できるような奴じゃない。余裕なく、がっつくようなイヴァンのセックスは昔から変らないが、そんなところにどこか安心している自分がいて、ルキーノは苦笑いを浮かべた。優しくされるのは性に合わない。かと言って、こいつに優しくしようなんて気も起きない。気を使う必要もない。そういう意味でこいつとのそれは、気が楽だった。

「・・く・・おい、肩に捕まっとけよ。」
「ハ・・つ、この・・俺が、お前にか?馬鹿言うな。」
「くそ、このアホ。意地っぱりだな、てめー。ちっとは可愛い真似できねーのかよ。」
「その言葉っ、お前に、だけは・・言われたくないな・・つ!」

顔をゆがめ、せり上がってきた感覚に唇を噛んで声を出さずに堪える。イヴァンが俺の前を寛げていたのは気が付いていたから、その感覚は予想されたものだった。ルキーノの中心を片手で擦りながら、イヴァンはニヤリと得意げに笑った。

「てめーの無駄にデカイ竿の方がよっぽど素直みたいだぜ?デロデロに我慢汁たらしやがって。」
「つ、そりゃお前と比べると、な。」
「ちっ、気にしてる事言うんじゃねーよ。」
「別に、悪いとは言ってないだ・・。」
「くそ、もう黙れよ。」

緩んでいたスラックスを地面へと落とし、ルキーノの足をイヴァンは抱えると、再び口づける。ルキーノの口端から互いの唾液が混ざったものが溢れ、それをイヴァンは舐めとった。

「つ・・ん、てか、さっきから・・色気ねぇー会話だな。」
「つ、ファック!てめーがそうさせてんだろうが。」

しまにゃ、馴らさずこのまま犯すぞてめーと、口元をひきつかせながらジトリとした視線を向けてくるイヴァンに、流石に勘弁しろとルキーノは苦笑を零し、仕方無いやつだと肩を竦めると、イヴァンの肩に自身の腕を絡ませた。驚き瞠目したイヴァンに、挑発的に口元を上げる。

「ほら、続き。やらないのか?」
「・・っとに、タチわりぃー。」

そうイヴァンは呻くと、溢れた白濁を指先に絡ませ、それを性急にルキーノに窪に差し入れた。グチュリとルキーノの中心から伝った白い液と混ざり、泡立つように指先を動かす。

「ん、く・・おい。イヴァン。あまり、強くやんじゃ・・」
「・・痛いくらいで調度いいんだろ?こんくらい我慢しろよ。」
「ハッ!つ、歳くって、上げ足とるのだけは・・上手く、なりやが・・って!」
「歳くったのは、てめーも同じだろうが。」

もう片方の手でルキーノのスーツ落とし、シャツをくつろげる。ルキーノの胸の中心にイヴァンは舌を這わせた。その刺激にビクリと自然と身体は反応してしまう。自身の中心にさらに熱が集まるようなそんな感覚が、身を震わせた。

「つ、まて・・イヴァ・・く!」

自分でも弱々しい抵抗だとは思ったが、同時にやられるとこっちがどうにかなっちまいそうな気がして、熱い息を吐き出しながら、イヴァンの固い髪に自身の指先を絡ませた。

「もう、いいっ、いれろ。」
「あぁ?何言って、まだ・・」
「うるさい早く、しろ。言っただろうが、我慢出来ないんだよ。」
「つ、知らねーぞ!てめーが煽ったんだからな。」

三本の指を引き抜いて、代わりにイヴァンのたちあがったものを、そこそこ濡れていたそこへと押し当てた。ドクリとイヴァンの男根は脈動を刻んで、先端が押し入るようにルキーノの中へと侵入する。自分の中に異物が入ってくる感覚は何度もこいつとセックスして知っていたが、未だに慣れはしない。この先もおそらく慣れることは無いだろう。それでもこの後に引き出される快感も刺激もルキーノは知っていたから、この感覚はさほど嫌なものではなかった。白濁に紅い液体が混じる。一応、イヴァンのものはすべておさまりはしたが、やはり早すぎたらしい。

「ハァ・・あ、やっぱ、切れちまった、か。いてーな。」
「だから・・言ったろうが。」
「お前の、そんなにデカク・・ねーから、いけると思ったんだがな。」
「・・・テメェー・・馬鹿にしてんのか?してんだろ?」
「ん・・カヴォロ、拗ねるなよ。」

慰めるように、軽いキスをイヴァンの唇に。それで機嫌を直すんだから単純なもんだ。

「あー・・・、ルキーノ。」

中でドクリとイヴァンのものが大きくなるのが解った。罰の悪そうなイヴァンの様子にまだまだ若いもんだとルキーノは口角を上げた。

「遠慮すんな、お前の好きなように動けよ。」
























 バタンと扉を乱暴に閉め、自身の部屋に戻ったルキーノはそのままバスルームへとその足を向けた。あの後、周りに怪しまれない程度に軽く身なりを整え、そのままこちらへと戻った。報告事項はあったもののそれは明日ベルナルドに連絡することにした。別に一日くらい遅れたところでさほど問題では無い。バスルームで身にまとっているものを、総て脱ぐ。何時ものように、脱いだものを気にかける事が億劫で、脱いだままバスケットの中で放りこんだ。そのまま浴室へと入り、熱いシャワーを浴びた。
 あの夢を見た日は泣きたくなる。あの時からもう七年。もう七年もたつ。なのに、未だに俺は過去に縛られ、身動きが出来ないでいる。もしあの時、あぁしていればと、後悔ばかりが浮かんでくる。そんな自分が情けなかった。
 俺はあいつを利用しているのかもしれない。真っ直ぐと前だけを向いてコーサノストラの男として振る舞っても、所詮過去に引き摺られないように必死に足掻いてるだけだ。今にしがみついて、必死に落ちないようにしているだけ。俺はあいつの、あいつらのように強くないのは解っているからだ。

(パパ、おかえりなさい。今日は早かったのね!)
(あなた。お疲れ様です。夕餉の支度できてますよ?)
(今度、パパいつ休みとれる?アリーチェね。パパに連れてってもらいたいところがあるの!)
(まぁ、それは素敵ね。ねぇ、あなた。アリスの為に休み、取ってあげて下さいね。)
(パパ、大好きよ。)
(愛してるわ、ルキーノ。)

頭の中で木霊するあの子たちの声。ザァーザァーとシャワーの音が遠くに聞こえた。


〈俺はまだ、あの頃の夢の中にいる。〉














連鎖





END







あきゅろす。
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