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short37





#ジャンルキ







ある日の夕方になりそうな時間帯にジャンカルロはデイバンホテルの廊下を歩いていた。その階の廊下を真っ直ぐ進むと半ばまで進んだ辺りに彼の相棒兼、恋人でもあるルキーノグレゴレッティーとジャンが共に寝食を共にしている部屋がある。仮の本部となっているデイバンホテルの一室を借りているその部屋は、新本部が出来上がり、そこに移るまでの間、CR5の幹部それぞれが仮住まいとしている部屋である。仮とはいえ、高級ホテルとして名の通っているデイバンホテルはそれ相応に設備も、調度品も一流だ。長期間過ごすのになにひとつ不自由は感じない。そんな一流ホテルの廊下をその場に似つかないガムを噛む音を響かせてジャンは今、歩いている。そんなジャンの表情は彼の眩しい金色の髪に似合わず、険しくかたかった。

「あぁーあ、今日は散々だったぜ。」

ラッキードッグと呼ばれる俺にしては、本気でついていない一日だったとジャンは肩をおとす。朝コーヒーを飲もうとしたら、手を滑らせて服にこぼすわ。昼はイヴァンと一緒に見回りをしている最中に後ろから猛スピードで走ってきた車にひかれそうになるわ。その後行ったCR5のじじい共の会食では、この頃の仕切りの店の経営悪化についてネチネチと嫌味言われるわ。

「本当に散々すぎるだろ。あぁ、なんか楽しいことないかね。」

そんなことを思いつつ、まぁ、いい。それもこれもぜーんぶルキーノに慰めてもらおうと気を持ち直して、ジャンはその部屋のドアノブをひねった。

「ただいまぁー、ルキーノ帰ってるーって・・・」

ドアを開いた瞬間、目に入ってきた光景にジャンは瞳を瞬かせた。

「何してんの、あんた?」

思わずそう声をかけると、声をかけられたその男、ルキーノはこんなに早くジャンが帰ってくるとは思わなかったのか、ビクリと一瞬身体を震わせた。しかしすぐにジャンが少なからず驚いたその体制から身を起こして立ち上がり、ジャンの方に向き直る。まだ息が整っていないのか、肩をゆっくりと上下させていた。

「あ、あぁ・・・ジャン帰ったのか、早かったな。」

少しその体制を見られたのが恥ずかしかったのか、ルキーノはわざとらしく咳払いをひとつし、ジャンの方へと近づいてきた。ドアのそばから動けなかったジャンは、あぁ、うんと気の抜けた声をつい出してしまう。

「なんだ?何か言いたいことでもあるのか?」

そんなジャンの様子に機嫌を悪くしたのだろうか、少し低めの声がジャンの耳をくすぐった。

「いや、あんたさ。もしかして腹筋してんの?」
「・・・あまり聞いて欲しくないことを聞くな。デリカシーのないやつだな。」
「ってことは、ダイエット中け?」

あ、なんだそんなこととかと納得がいってジャンは肩の力を抜いた。それにしても珍しいと、しげしげとジャンは改めてルキーノを、特にルキーノの腹をじっと見てしまう。外見からはそれほどルキーノが太ったということは判断できない。もともとがもともとだ。背が高く筋肉質なルキーノは、男として羨ましがられる体型である。それとも、そこまで本人が気にするほどになってしまったのだろうか。でも最近、夜にお互いに裸になってした時は気にならなかった程度だということはそれほどではないとは思う。気になったジャンはつい出来心で・・・

「うわっ!なっ!」

ルキーノの腹に手を伸ばし、ルキーノの腹をつかんでみる。うん、別に太ってるって身体じゃないよなと一人ジャンは納得する。逆にルキーノは唐突なジャンの行動に吃驚し、声をあげた。

「な、おいっ!何してんだお前は。」
「んー?いや、そんなにお肉がついたのかな、と。気になって」
「アホか!ちょ、おい。くすぐったいだろう。離せって。」
「え、何?くすぐったいの?」

へぇと、端から見たら嫌な笑みを浮かべてジャンはルキーノを見つめた。なんか楽しい。その時思ったことをルキーノに知られたら、勢いで殴られそうとは思うが、ジャンはそこで引き下がるような男ではなかった。楽しいものは楽しい。だってこの何をしても動じなさそうな男が、くすぐったいと反応して、離せと言ってくること自体貴重で、楽しい。

「そう、言われると・・・なぁ?」

余計こちらは触りたくなる。やめろと言われたらやりたくなる。これ人間の本能だろう。その気配をさっしたのだろう。ルキーノは先程よりもさらに低い声でジャンに声をかけた。

「…おい。やめろよ。」
「ん?何が?」
「そんな笑顔で、「何が?」じゃない。やめろよ。」
「だから、何が?」

だってもう触りたくてしょうがないだもん。うきうきとした気分が表情に出ていたんだろう。そのジャンの顔を見てルキーノが口もとをひきつかせた。

「ジャン・・つっ!」

すすっと手始めにルキーノの後ろに周り込んで、抱きしめるような体勢にする。前の方に手を伸ばし、ルキーノの白いシャツのボタンを外して手を服の中にもぐりこませる。そしてゆっくりと指先でなぞるようにルキーノの腹を撫でてみた。

「ば、やらしい触りかたをする・・・なっ!」
「何、感じちゃったのルキーノさん?」
「感じるわけないだろう、くすぐったいだけだ。いいから離せ。」

そう言われても、ルキーノの反応が楽しくて止められないんですけど。ジャンは後ろからさらに抱き締める力を強め、ルキーノのわき腹をさすってみる。うん。いつ触っても触り心地のよい肌だ。ベッドでルキーノを抱いている時も、この肌を触ってるだけで気持ちが良くなってくるのだ。妙な気分になってきて、ジャンはスンっと少し汗ばんだルキーノの首筋を嗅いで、舌でその首元を舐めた。

「・・・つ!ジャンおまえ何しっつ!」
「ごめん、ルキーノ。」

なんかスイッチ入っちゃたみたい。そんな欲情めいたジャンの声を聞いた瞬間、ルキーノの視界が暗転した。


「責任とって?」

楽しそうに笑顔でジャンに床に倒された後はなし崩し。まだ夕飯前だとか、ベットじゃないだとかそんな抵抗も何一つ無視だ。

「ま、待てジャン。」
「待てない。」

もう抵抗は許さないとでも言うかのように、ジャンにキス一つでごまかされる。いつもだったら、ルキーノはこういう場面でジャンにおねだりされて、押し通されてしまう。けれど・・・

「いい加減にしろ!」

ごつんと今日は一発ジャンの頭に拳で殴った。

「いっ・・・いってー!!何すんだよ!?ルキーノ!」
「それはこっちの台詞だ。たく、いつでもどこでも盛りやがって・・・」

そんなお前を見てると、こっちが悩んでるのもアホらしくなってくる。ジャンの拘束から逃れて立ち上がり、小さく嘆息をこぼすルキーノの言葉にジャンは頭に疑問符を浮べた。

「なに、なんか悩んでたのけルキーノ?」
「・・・別になんでもねーよ。こっちの話しだ気にするな。」
「そういう言い方されると、尚更気になるんだけど?」

なぁ、言えよと半ば強制的に促す。そんなジャンに眉間に皺をよせてまた先程のような不機嫌な顔になった。暫く無言でその場を過ごしていたが、やがてルキーノが大きく息をついて、その重い口を開いた。

「・・・重いだろ。」
「え、何?」
「だから、重いだろ。俺が。いっつもお前つぶしちまうんじゃないかって気になって・・・・元はと言えば、お前の方が体格からして下なのに、上譲らないのが悪い。お前は俺は何と言ったって、聞かないだろうが。だから・・・・そういうことだ。」

もう聞くなと、不機嫌な表情は変らないが、その耳は真っ赤にそまっている。そんなルキーノにジャンは最初は呆気に取られ、、だけどそんなルキーノが可愛くて・・・・

「ルキーノ!!」

勢いで抱きついて、ぎゅーと後ろから抱き締めた。

「おい、ジャン?」
「もう、あんたって本当。」

そして再びルキーノを押し倒した。そんな理由ならそんなこと気にさせないくらい愛してやらないと。そんなところ含めてぜんぶぜんぶルキーノの全てが好きなんだっていうことにルキーノにわからせてやらねーという気持ちで、ルキーノの唇をジャンは奪った。










すべて愛しい
(そんな俺は端から見たら、恋人に骨抜きの馬鹿な男なんだろう。だけど彼もまた、端から見れば小さなことを気にするくらい俺に骨抜きで馬鹿な男なんだろう。)




END












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