#ジャンルキベル
(三人で・・・。)
昔、男は友人に恋をしていた。彼は飄々とした性格から一見頼りなさそうな見える男だったが、どんな脱獄が難しい牢獄であろうと、脱走を成功させる男だった。その度に、同世代の連中から尊敬の念を集め、彼は組の構成員から慕われるようになっていった。その並はずれた幸運から「ラッキードッグ」と周囲から呼ばれていた。彼が自身の幸運だけを頼りにしているだけの男であれば、それほど一目置かれる事はなかっただろう。
(そこまでの男だったら、そこまで傾倒することもなかった。)
彼には幸運の女神様がついていると周囲は囁き合った。そればかりではない。頭の回転がはやく、度胸もある。欲もない。彼は誰に対しても寛容であり、情が深かった。そんな友人を男は信頼していた。男は月日がたつにつれて、彼を傍においておきたいと思うようになった。
(・・・・だが、昔のことだ。)
男の友人はCR:5の組織のボスとなった。そこには昔の恋など持ち出してはならない。男にとって彼は生涯の忠誠を誓う者、それだけだ。昔のようにそこには恋情はない。あるのは友愛と忠誠心だと。
(俺も、若かったな。)
男、ベルナルドは昔を思い出していた自分に苦い笑いを浮べた。机の中に、今でも大切にとってあるジャンの写真をベルナルドはそっとしまう。この写真を見てしまうと、ついつい思い出にひたってしまう。
(やれやれこれでは今でも恋煩いしているみたいじゃないか。)
そんなベルナルドの元へ、友人のジャンカルロが最近事あるごとに、自身の執務室へと訪ねてくるようになった。嬉しいような、訪ねてくる理由を考えると切ないような、腹立たしいような、微妙な心情ではあるけれども、実際訪ねてきてくれることを限定して言えばやはり嬉しいのだろう。その日も彼はベルナルドの部屋のドアを乱暴に明け放ち、なんの返事も待たずにドカドカとこちらに向かってきて、ソファーの上にドッカリと座った。彼は目の前のソファーで胡坐になって座り、いかにも不機嫌そうな表情を浮べていた。ベルナルドは手もとの何も入れていないコーヒーを一口飲み、一つ息をつく。またか、と。
「突然入ってきて、何事かと思えば、何をそんなに不機嫌な顔をしているんだい?」
とりあえず理由を聞くのはお約束。予想はついているが、尋ねずには話は始まらない。
「別に・・・何でもねぇよ。」
「なんでもないって顔かね?俺にやさしく慰めてほしいなら、すぐにでも寝室にエスコートするが?」
「いやよ、私には既に心に決めた人がいてよ。いい加減その冗談飽きたワン。」
「はは、これでも本気なんだが。」
「はいはい。グラッツェダーリン。俺も愛してるぜー。」
「こちらこそ、棒読みどうもありがとう。」
ベルナルドは降参というように、両手をあげた。そんな彼に、ジャンカルロは、「なぁ、聞いてくれよ!」とその身を勢いよく前にのりだす。
「ジャン。どうしたんだい?まぁ、なんとなく想像はつきはするけど・・・」
いや、その予想は確信に近い。きっと今日も彼のことがらみだろう。それほど最近のジャンの言動はそればかりだ。仮にもCR:5のボスであるのにそんなことで良いのかと、この頃そのことでベルナルドの頭を悩ませる事が多かった。それでも、ジャンの相談にのるあたり、ベルナルドは、やはりジャンに甘いのだなと自分でも呆れた。
「あのさ、自分の意見を通すにはどうしたらいいと思う?」
これはどういう意図なのだろうか。最近聞いてきたジャンの話の中では、新しい話題だと、その質問に対してついつい真面目に考えてしまう。
「うーん、シノギの事なら君にアドバイスをあげるのも、やぶさかではないのだけれどね。ジャンは恋人との仲直りするにはってことを聞きたいのではないかね?」
そう。ジャンの悩みとはずばり恋愛に関することなのだ。
「流石に恋人との口喧嘩で仲直りする為のアドバイスとなると、俺もどうとも言えないよ。」
ベルナルドの言葉にジャンは落胆した様子で大きく肩を落として、ベルナルドの執務机に突っ伏した格好となった。
「あぁ、またやっちまったぁ。なぁ、ベルナルドどうすりゃいいかな?」
「何度も言うけれど、君が折れてあげるのは駄目なのかい?」
「ぜってー嫌だ。これは譲れない。」
「そうは言ってもね。」
「だってさ!聞けよベルナルド!」
「またかい?この話を何回聞いたか。」
「笑いごとじゃないぜ?このままだと、俺はいつまでたってもルキーノとセックスできないわけよ。俺としてはめちゃくちゃ深刻なの!!」
「・・まぁ、確かに難しいだろうね。」
先程から話題にあがってきているルキーノというのは、ジャンの恋人だ。また、ジャンの仕事のパートナー兼教育係であり、幹部の一人である。勿論今の流れでわかったかもしれないが、男である。最初、ベルナルドはルキーノとジャンが付き合っていることが信じられなかった。ルキーノは生粋のノンケで、男と付き合うなど彼の境遇と性格上あり得ない話だった。しかし、どうやら本当のことらしい。最近ベルナルドも、漸くその事を認められるようになった。ジャンはベルナルドの昔の想いを知らないので、この気持ちは結局気づいてもらえないまま今にいたってしまっている。今、その話をジャンにしたところで無粋というものだし、それにベルナルド自身は、割り切っており、意外とルキーノとジャンが付き合っている事に対しては、ショックを受けはしなかった。
だが、ジャンから相談を受けている事は、当人同士の問題だと思う。どうやらセックスでどちらがどちらをやるかで、二人は喧嘩をしているようだ。喧嘩後、ジャンはこうしてベルナルドのところに愚痴をこぼしに来ている。けれど、他人に相談してどうこうという簡単な話ではないだろう。
「お前が好きな奴を抱きたいと思うのは、解る。男なら当然だ。しかしだな・・」
「なんだよベルナルド!お前も体格的に俺が下だって言いたいのかよ?」
「まぁ、すまないが、そうだね。そんなにルキーノを抱きたいのかい?」
「勿論。これは絶対譲れないぜ?俺。」
常識的な判断をすれば、ジャンの言っている事は無理がある。ルキーノはジャンと比べても、とても身体が大きいのだ。そんな男をジャンは抱きたいと言う。相手のルキーノの事を思うと、同情するしかない。いくらジャンといえど、抱かれるのは勘弁だろう。ベルナルドは額に両手を押し付けてため息をひとつ、つく。この話題で何度、ジャンの愚痴を聞かされたことか。ジャンの言い分だと、ルキーノは可愛いのだそうだ。ベルナルドには全く理解できない話である。あの男に可愛いなど言えるのはジャンくらいなものだ。
そこへ、自身の執務室のドアを叩く音が響いて、ジャンとベルナルドはそちらへと視線をやった。どうやら、渦中の彼がお出ましのようだ。
「俺だ。ジャンはそこにいるか?」
「あぁ、いるよ。入っていいぞ。」
ルキーノは、その長身に似合ったスーツを着こなして、室内へと入ってくる。そして俺たち二人の姿を認めると、不機嫌そうな表情を隠さず、こちらへと近寄ってきた。これほどわかりやすい反応をされると、かえって微笑ましい気持ちになるのは、すでに俺がそれなりの歳をくってしまったという証明なのだろうか。
「なんだ、お前は俺と一緒にいるのは嫌がったくせにベルナルドとは仲良く話をするんだな?」
「あんたが俺の言い分聞いてくれないから、愚痴りにきてんだっての。」
「・・お前な。」
不機嫌な表情から、困った表情へと変る。どうしたらいいのか解らなくなっている表情だ。こういうルキーノはあまり見られるものではないだろう。
「ジャン、考え直さないか。その、俺がだ。抱かれる側・・・というのは、少々無理がある気がするんだが。」
「なんでだよ?」
「なんで、って。体格差を考えてみろ。」
「関係ないだろ?俺が抱きたいんだよ、あんたを。それとも、俺とセックスするのルキーノは嫌なのけ?」
「いや、そういう訳じゃなくてだな。だから・・あぁ、もう。ストロンツォ。」
」
どう言っていいのか解らないのか、言葉を濁すルキーノを見て、ベルナルドは感心していた。そして思ったほど、ルキーノはそこまでジャンを拒否している訳ではないという様子に驚く。上手いなジャン。そう言えば、ルキーノは反論できない訳だ。ルキーノもジャンの気持ちをできるなら優先させてやりたいが、プライドが邪魔をするといった感じだろう。ベルナルドは二人のやり取りを見ていて、そう分析する。あとは、決定打があれば丸く収まりそうだ。
「ルキーノ。」
「・・・なんだベルナルド?」
なら、こちらから仕向けてやろうかな。ルキーノには悪いけれど、俺はジャンの気持ちを大切にしてやりたいしな。それに女役のルキーノというのが、今のところ想像出来ないのもあって、興味もある。ベルナルドはルキーノの名を呼んでチョイチョイと指でこっちにと、呼び寄せる。ルキーノは訝しげに眉を寄せたが、ベルナルドの呼び寄せにしたがって素直にこちらへと歩を進めた。今、ベルナルドがしようとしている事に気づきもしないで彼が近くまでくると、ベルナルドは彼の腕を掴んでこちらへと引き寄せた。
「・・ベルナルド?」
「ちょ、ベルナルド!?ルキーノに何す・・・」
「君たち二人を見てると、こっちがじれったくなってくるよ。いいかい、ジャン。こういうのは仕掛けた者勝ちなんだよ。」
そしてベルナルドはルキーノの唇に自身のものを重ねる。口内に舌を滑り込ませて、まず呼吸を奪った。
「ん!・・く。・・・お、い・・ベルナルド!」
んー、執務机の上だとやりにくいな。ベルナルドは些か強引にルキーノを引っ張り、ソファーへと座らせる。そして自分も隣に腰を下ろすと、ルキーノの背後にピタリと身体をくっつけ、彼ののネクタイを緩め、ルキーノが着ているベストを脱がせる。いきなりの事にルキーノは何が何だか分からず、ベルナルドにされるがままになっている。
「ほら、ジャン。さっさと手を出さないと。俺がこのままやってしまうよ?」
「な!そ、そんなの駄目に決まってんだろ!ルキーノの初めては俺なんだから!」
「カッツォ、お前ら・・・何考えて!・・く」
ベルナルドの言葉にジャンは焦り気味にルキーノの開いている足の間に入って膝まづくと、ルキーノのシャツのボタンをはずし、そこから性急に手を入れる。ベルナルドはルキーノが逃げられないようにルキーノの腰を掴んで、首筋に顔をうめた。抵抗しようとするルキーノだったが、成人男性二人に抑えこまれてしまっているので、流石に身動きがとれないのだろう。
「ごめんなルキーノ。でも、あんたが大人しく抱かれてくれないのが悪いぜ?気持ちよくしてやるからさ。」
「だそうだ。ルキーノ諦めたらどうだい?俺たちのカポからのご命令だ。」
「ちょっと、待て・・俺の意思は無視か!?」
抵抗の言葉を紡ごうとするルキーノの口を、ジャンは口づけで奪う。逃げるルキーノの舌を口腔内で追いかけて、唾液を吸った。
「ん・・くそ、ジャン。」
「は・・ん・・ルキーノ。好きだぜ?」
「馬鹿、言うな・・よ。」
ジャンの告白にルキーノは肩を震わせる。ルキーノの反応を楽しみながら、ジャンは恍惚とした笑みを浮かべた。
「・・・はは、ジャンがルキーノを可愛いと言った言葉。今なら解るな。確かにそそられる。」
「おい、ベルナルド。言っとくけどな。本当はあんたにルキーノの可愛いところなんてみせたくねぇーんだけど。つか、空気読んで出てってくれると助かるんだけど?」
「それはひどいな。この状況でお預けかい?」
クスリと笑いベルナルドは、かといって出ていく様子も見せはせず、ルキーノの頬に口づけ、尚更ジャンの眉間の皺を深くさせた。
「まぁ、そうしたいのは山々なんだが。俺も収まりがきかなくなっていてね。ジャンが責任とってくれるかい?手でいいから。」
「はぁー?あんたもう勃起しちゃったのけ?俺のルキーノに反応したって事だろ?ムカつくんけど!」
「生理現象だよ。それで、やってくれるかい?」
「自分で処理できねーのかよ?」
「一人寂しくマスをかけって?俺がかい?冗談だろう。」
ベルナルドの言葉にうーんとジャンは考えるように唸ると、暫くして仕方無いなと諦めたように、肩を落とした。
「まぁ、別にそれくらいなら・・」
「つ・・待てよ、ジャンにそんなことさせられるか。俺がやる。」
すると、今度はジャンの言葉に反応したルキーノがそう言いだして、ジャンは慌てて口を開く。
「なっ!ばっか!俺がそんなの許すわけねぇーだろ!ルキーノが汚されちまう!」
「汚されるって、今まさに君が汚してる最中だろうに。まぁ、俺はどちらでも構わないんだけどね。」
このまま三人でというのも悪くはないんじゃないか?そう飄々と言ってのけるベルナルドにルキーノは「うそだろ」と顔を青くさせた。彼にとっては最悪のパターンだろう。ジャンに抱かれるのは、まぁ、ここまで来てしまえば仕方ないにしても、(認め無くないが)ベルナルドを加えてなんて、それこそ冗談にしてはたちが悪過ぎる。そうなるくらいなら、さっさとベルナルドをイカして出て行ってもらった方がいいとルキーノは思った。
「・・・俺がする。」
「ルキーノ!何いって・・」
「ジャンは黙ってろ。」
「つ・・」
ルキーノが叱咤すると、悔しそうにしつつ、ジャンはそれ以上は何も言わなかった。そんな様子のジャンに少しだけ罪悪感を抱きつつ、ルキーノは背後のベルナルドに後ろ手で手を伸ばし、布越しに盛り上がっている場所へと触れた。
「ベルナルド、さっさと出せ。」
「ははっ・・仰せのままに。」
カチャリと、ベルトが外される音が届き、ベルナルドのものが外気にさらされる。それを横目でルキーノは見ると、ベルナルドの屹立をそっと撫で、上下にしごき始めた。
「ん、案外・・つ!上手いじゃないかルキーノ。」
「うるせーぞ。さっさといけ。」
男同士だから、なんとなくどこを触れば気持がいいのかわかるだけだ。
「ルキーノ、ベルナルドばっかり構ってんなよ。」
「ジャ・・んん・・ふ。」
ジャンが再びルキーノに口づけてくる。同時に、ルキーノのズボン越し勃ちあがっているそれに触れた。
「・・は・・あんたの、も・・・こんなにかたくなってる。ベルナルドの触って興奮しちゃったのけ?面白くねェの。」
ジャンの瞳がゆらぎ、スッとルキーノの下肢へと手を伸ばされると、スラックスと下着が強引に引き抜かれる。むき出しになったルキーノの中心はジャンの目の前に晒され、羞恥にルキーノはジャンから目線を逸らせた。
「わからせなくちゃ・・なぁ?あんたに。」
ジャンがそう言って笑うと、彼の肩に足を乗せさせられる。そして、ルキーノのものに顔を近づけると、舌先で先端を舐め、口に含んだ。
「つ・・」
ルキーノの身体がピクリと揺れる。唐突な感覚に抵抗するほどの余裕はルキーノには無かった。
「ルキーノ、手が止まっているよ?俺をイカせるんだろう?」
「・・んく。」
ベルナルドの指先がルキーノの胸の中心をいじくり、はじく。女のように膨らみもない所に、何が面白いのか重ねて指先で撫でられる。けれど信じられないのは、そういう風に触れられて感じてしまっている自分だと、ルキーノは内心で舌うちした。
「つ・・変態か・・よ!何が面白くて・・っつ」
「まぁ、否定はしないな。君の反応は、見ていて悪くないよ。君もそう言って、感じてるんじゃないのかい?ん?」
「この、・・く・・」
ベルナルドに意識を取られていたルキーノは感じた異物感に先程まで自身を咥えていたジャンに視線を移す。いつの間にかジャンはルキーノの後孔に指を入れていた。
「んー先走りで結構、濡れたか?でもまだ足んねーか。」
「おま・・ジャン・・」
「ん、あんたのそんな顔はじめて見た。へへ・・その顔まじ、やばい・・って。」
ジャンの指が中を擦ると、ルキーノの身体が意思に反してビクビクと小刻みに震える。その反応に気を良くしたのか、ジャンは何ともエロくさい表情を浮かべて、笑い、ルキーノの良いところを探り出そうと、中をかき回した。
「ちょっと、待ってろよ?もう少し濡らしてやっから、さ。」
「・・つ!く・・」
濡れた感触に、驚いて目を閉じる。先程の指よりも柔らかく、生ぬるい感触はくすぐったさと、何とも言えない快楽をルキーノから引き出す。それは今まで感じたこともないものだ。誰が想像しただろう、ルキーノ自身だって想像しえなかった。女のように後ろを弄られて、気持ちいいと感じ始めているのだなどど。
「きもちい?ルキーノ?なぁ?」
「ジャン、そんなに虐めてやるな。ルキーノが可哀相だろう?」
「そんな顔してるアンタに言われたくねーよ。いやらしい顔だぜ、まったく。」
ジャンは先程から増やしていた指をルキーノの中から引き抜いた。抑えられない欲が内側からこみ上げるのを、ジャンは感じていた。この愛しい男を俺のすべてで犯したい。縋らせたい。泣かせてみたい。そんな黒い感情を自分自身で怖いと思う。けれどそれは、抑えきれない願望だった。
「本当、アンタが好きすぎて俺、おかしいのかも。」
「ジャ・・ン?」
「ごめんな、無理言ってるの、わかってるんだけどさ。だけど、やっぱり、俺、あんたのことが好きすぎて、全部全部俺のものにしたい。他の野郎に奪われる可能性が、一つでもあるのが、耐えられない。」
そのジャンの台詞に、ルキーノもベルナルドも息をのんだ。なんて、強欲。そしてルキーノに向ける独占的な感情が、狂気を孕んだものに近いとさえ思う。
「だからさルキーノ、俺を安心させろよ。」
宛がわれるジャンの先端に、ルキーノは反射的に腰をひくが、ルキーノの想像に反してジャンの腰を抑える力は強かった。
「ま、まて・・ジャン・・」
「待てるわけないだろ。」
ルキーノの窪みにジャンは一気に自身を押しいれた。丹念にほぐしたそこは、すべりが良く、一気に奥までジャンの侵入を許す。
「うわ・・す・・げ・・」
「いっつ・・く・・ジャ・・ン・・」
「まじで・・や・・ば・・・・いれただけでいきそう。」
頬に朱を走らせ、恍惚とした表情を浮かべながら、ルキーノの頬にジャンは手を伸ばした。
「痛い?ルキーノ。」
不安げな声だった。欲望を抑えきれなかったジャンは幸せを感じつつも、ルキーノのことが気がかりなのだ。半ば無理やりという形で彼を犯してしまったことに罪悪感を感じているのだろう。それを愚かというべきなのだろうか。ベルナルドはジャンのことを否定することは出来なかった。もしかしたらジャンと同じことをしてしまっていたかもしれない昔の自分が重なるようだった。ベルナルドはルキーノを見た。異物を体内に入れられた男の顔は息を荒くし、少し苦しげだったが、諦めたように仕方無いなと、今にも言いそうな表情を浮かべていた。
「・・やっちまったもんは仕方ねぇ・・か。」
「つ、ルキーノ?」
「俺にも男のプライドってもんがある。」
「うん。ごめん。」
「うるせー謝るな。俺が今必死にそれを押し殺してるっつーのに。」
そう憎まれ口を言い、ルキーノは長いため息をつくと、ジャンの肩に腕を回した。その一連の動作にジャンは信じられないかのように、目を開き呆然とルキーノを見つめた。
「ほら、動けよ。そのままだと、つらいだろ?」
「っつ・・本当、あんたって・・・男前。」
ジャンの声が今にも泣きそうに震える。馬鹿泣くなとルキーノはジャンを慰めるようにジャンに頭を撫でた。
(こうなってくると、俺は邪魔ものかな?)
ベルナルドはそんな二人を見て苦笑する。そっと抑えつけていたルキーノを離すとそのまま何も言わずに立ち去ろうとした。
「おい・・・何処行くつもり、だ?ベルナルド。」
「何だルキーノ。せっかく気をきかせたつもりだったんだが・・」
そこでルキーノに呼び止められたベルナルドは少しだけ困った。あれだけの光景を見せつけられらのだ。収まりがつかなくなっているのは勿論だった。だから。トイレにでもかけこもうとしていたところだったのに。
「何言ってる。まだいってねーだろ?せっかくだ、いかせてやる。」
「いいのか?・・・もしかして、開き直ったかい?」
「まぁ、ここまでくればな。」
ジャンの視線が少し痛かったが、そんなことを言われてしまったら俺だって我慢する理由がない。再びベルナルドはソファーに腰を下ろすと、自分のはりつめてしまったものを取り出し、ルキーノの眼前にさらした。
「手でいいよ。」
「当たり前だ。手以外何でやる?」
「・・・我儘を言うなら、フェラしてくれたら有りがたいんだがね。」
「冗談だろ?流石にそこまで腹はくくれん。」
ルキーノはジャンの肩から腕を下ろし、ベルナルドのものを右の掌で包んだ。そして再び手を上下に動かす。それに合わせてジャンも腰を揺らした。解放に向かってそれぞれが息を荒くする。
「あ・・・く・・つあ」
「・・つ・・声、抑えんなよルキーノ。気もちいいんだろ?あんたの中、すっげ熱い。」
いつの間にか痛みから快感に変わっていることにルキーノも否定しなかった。感じたこともない感覚が素直に身体を高めていた。ルキーノの中心にジャンは手を伸ばすと、腰を揺らしながらルキーノのものを上下にしごき始める。
「ほら、こんなに・・溢れてるし。」
「うる・・せ、」
ジャンの嬉しそうな表情にルキーノは悔しげに唇を噛んだが、ここで否定の言葉を吐いても尚更ジャンを喜ばせるだけだとそのまま快楽に身をまかせた。
「そろそろ、でそう、だ。ルキーノ。」
ルキーノの手加減がない動きに、ベルナルドは呻いた。そして溢れた白濁でルキーノの手を汚す。ベルナルドにつられて、ルキーノもジャンに奥をつかれてイッた。少しだけぼやけた視界でルキーノはジャンを見つめた。
「俺も・・いく、ルキーノ!!」
そして最後にジャンも。ルキーノの中で自身の欲望を吐き出した。
「3人で・・・というのもなかなか良いかもな。」
フゥと、ベルナルドは自身のお気に入りの煙草をなえながらボツリと言った。その言葉にルキーノもジャンも露骨に不機嫌な表情を隠しもしなかった。
「何言ってんだよベルナルド。ルキーノにこれ以上触らせるのも俺、嫌だんだけど。」
「・・勘弁しろ。2人も相手なんて・・俺の身がもたん。」
「え、そっちなのルキーノさん?俺の恋人だから駄目じゃねーのかよ?」
ルキーノの返事に不満気に口をとがらせるジャン。確かにジャンの言うことはもっともだろう。
「それより、今のルキーノの言葉だと、今後も君は抱かれる側に回るって宣言してるようなものだよね。」
笑顔で言ったベルナルドの言葉に、失言だったことに気付いたのかルキーノは慌てて異を唱えた。
「いや、待て。今のは言葉のアヤで・・・」
「そうだぜ!何いっちゃってんの。」
ジャンの言葉にルキーノは少しだけ安堵の息を漏らした。ジャンもネコ側になってくれるつもりがあるのかと、しかし次のジャンの言葉でルキーノの願いは崩壊した。
「ベルナルドにルキーノを抱かせるなんてありえねーって。今後は一生俺がルキーノを抱くんだからな!絶対これだけは譲れないっての!」
生まれいづる悩み
(そんな君と、彼を二人とも欲しくなるなんて・・これは贅沢な願望かな?)
END
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