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★short 35




#ジャンルキ
ただのエロです。













 曇りのない瞳を真っ直ぐ向けられた時、人はその視線に胸を高鳴らせるだろう。おそらく誰にだって例外なんてものはないし、長い事その状態が続けば無意識にその瞳から目線をそらせてしまうと思う。ついでに居た堪れない気持ちにもさせられる。だれだってそうだろう。だからきっと、俺だけではない。

 身動きできないようにそいつは俺の手首を戒めて、決して女のようには軽くは無いその体重でもって圧し掛かってくる。じっと俺をその琥珀の眼で見つめてくる。押し付けられている床の温度のせいか、背中がとても冷たい。もしかしたらあまりにもな状況に汗をかいたから冷えたのかもしれない。
 男が男に性的な意味をもって押し倒される。そんなことそうそうあるものではない。だが実際今の状況はそのまさかなのだ。現実として、俺のようなデカイ男を組み敷くキチガイなんていないと思うし、俺は今までの人生でそんな事をする奴がいるなんて思いもしなかった。
 だからこそ落ち着かない。ギシリとベットの軋む音。その手がさらにきつく自身の手首を縫いとめる。間近に感じるジャンの体温が余計に自分を困惑させる。
 もし、だ。自分を押し倒してくる相手が女であれば、と現実逃避じみた想像もするが、俺を押し倒すような度胸ある女がこのデイバンという街にいるかと言われれば、いるはずもない。第一目の前の男は、顔のつくりは美人顔かもしれないが、それでもどう見たって女になんて見えやしない。
 CR:5のボスであり、俺の相棒でもあるジャンカルロ。そいつに乗っかっられているこの状況は、俺にとっては、考えたってあり得ないことで、そしてあまりにも現実味が無さ過ぎた。たとえ過去、既に何回かはこいつに押し倒されていても、やはり自分は認めたくはなくて、毎度似合わず、どうしたらいいのかわけがわからなくなる。あまりにそんな自分がふがいなくて、それは仕方のないことだと、せめて自分に言い訳くらいはしたかった。
 身長も体格も標準程で、自分のそれほどでは無い、少し抵抗さえすれば簡単に押しかえせる相手だということが余計にこの現実があり得ないと思わせる。嫌なら抵抗すればいい。逆にこっちから押し倒してやればいい。なのに。

(・・なんで俺はそれをしないんだ。)

 そんな自分が一番あり得ない。

「ルキーノ。」
「つっ・・」

 ギュッと拳を握ると、掌が熱く感じた。ジャンの奴に顔を近づけられ、色っぽい声で耳元で名前を呼ばれて、心臓はいかれちまったみたいに早鐘を打っている。それでも自分は納得がいかないのだ。そもそも何時の間にこんなことになって、どうして自分は大人しく組み敷かれちまっているのかと。ついさっきまでは普通の会話をこの男としていた筈なのにと。
 けれど、ふとその瞳に見つめられているのに気づいて、自分も何となく無言で見つめ返して、数秒後。一瞬で視界はグルリと回転し、ベットへと引きずり込まれて、後は御存じの通りという訳である。
 ルキーノが自分に訪れた不幸に、大げさにため息をついた。この先の展開がたやすく予想できてしまうからこその反応だ。ルキーノは、ジトリと責めるような視線を目の前の人物に送ると、睨まれた当人は罰の悪そうな表情を浮べて、だらしなく口元を緩めてヘラリと笑った。

「やっぱ駄目?」
「・・当たり前だろうが。」

幾分不機嫌な声でそう返してやると、眉毛を下げて物欲しげに見つめてくる。まるで我慢を仕入られてしょげている犬みたいに。耳がたれている幻影が見えるのだ。

「えー・・・どうしても駄目?」
「駄目だ。」
「嫌だ。」
「子どもか、お前は。」
「いっそ、餓鬼でいい。」

あまりの言い草に呆れを通り越して、感嘆してしまう。それこそ子どものようで、怒る気力すら湧いてこない。

「だって、もう待てねーんだよ!今すぐルキーノに突っ込みたい。これ以上我慢したら、死んじまう!」
「勝手に死んどけ。」

何なんだ、その馬鹿みたいな台詞、少しばかり我慢したって死にゃしねーだろうが。俺がハァと大仰にため息をついてやると、拗ねて唇を尖らせていたジャンは、今度はムッとした表情でこちらを見た。

「何だよ。そのため息は。」
「いや、あまりにアホらしいこと言うもんだなと。」
「俺は真剣なんです!まじ、ルキーノ欠乏症っての?もう駄目なんだって。」
「俺が知るか。」
「ひでぇ!そんな事言うなよ!なぁ、そろそろ解禁でもいいんじゃね?俺、ルキーノの言いつけ守ったぜ?2週間たったよな!?」
「あーそれは偉いな。そのまま俺の言いつけ守って、大人しくしていてくれ。」
「それは無理!もう俺の息子破裂しそうなんです!あんたとやりたくてやりたくて限界超えてんですけど!もし使い物にならなくなったらどうしてくれる訳、ルキーノさん!?」
「マスでもかけよ。」
「くっそ、ルキーノの鬼!鬼畜!サディスト!」
「あぁ?誰がサディストだ!?誰が!」

 失礼な言葉につい反応してしまったが、売り言葉に買い言葉というやつだ。
 そもそも、何を俺もこいつもこんなに必死になっているのかというと。まぁ、その原因といえなくもない、今から二週間前の事。簡単に言うと、長期間出張でデイバンにいなかったジャンが暫くぶりに本部に帰ってきて、その日はところかまわず、キスしたりだとか、抱きついてきたりとか、軽く押し倒されたりだとか、あげくの果てに我慢の限界とかなんとか言って、何時見られてもおかしくないような場所で、シャツに手つっこんで胸元まさぐりだすはで、ついに切れた俺が、しばらく触れるの禁止って言ってやっただけの話だ。
 なので期間中お預けをくらった犬が、欲求不満を全面に出してじゃれついてきている訳である。

「やっぱ無理。」
「おいジャ・・っん」

 唇を塞がれ、早急に舌を滑り込まされる。舌を絡め取って深く口づけられる。息の仕方も忘れちまうくらい、その行為には余裕が無かった。そうなるともう無理だ。
 久し振りのキス。酸欠になるんじゃないかってくらい、何度も何度も繰り返す。自然と俺の腕はジャンの肩に回っていた。

「ん・・はぁ、ふ、ルキー・・ノ、舌出して。」

 ジャンの要望に頭の中でため息をつき、一瞬躊躇ってから、スルリとジャンへの口内に舌を突き出して応えてやる。彼はそれが嬉しかったのか、髪を指先を絡めてきて、そして俺のものに自らのそれを絡めてくる。優しく歯列をなぞり、舐めて甘噛み。ピチャリと互いの唾液が混ざって、淫猥な音は自分の耳まで届く。まるで味わうようなキス。 こんなキスされたらこちらだってたまったもんじゃない。勿論、ジャンに呆れた訳ではなく、この状況がまんざらでもない自分がどうしようもないという意味でだ。
 あぁ、もう・・俺もジャンの事は言えた口じゃないじゃないか。何時からこんなに我慢弱くなっちまったのか。

「ふ・・は、そんな舐めたって、ん。・・うまくねぇ・・だろうが。」
「んな事ねぇ。もっと食べてェ。・・ん。」

 そして再び塞がれる。口端から全てを飲み込めず、溢れた唾液が口元を濡らす。既に肩で息をし始めている。ジャンも肩が上下していて、余裕なく俺の身体に触れてくる。まずいな、なんて事を思うが、下半身がズクンと脈打ったのが解り、俺はつい笑いたくなってしまった。所詮自分自身がどう感じていても、身体は素直だという事だろう。
 ジャンが触れなかった期間は、当然自分も身体の熱を吐き出すことはしなかった。だからこの反応は当然のことだった。実際我慢の限界だったのだと、身体は正直に教えてくれる。そしてそれが、残念ながら、先程からジャンに抵抗しきれない原因のひとつなのだ。

「やっべ、ハハ・・久し振りのルキーノだ。すっげークラクラする。」

あんたの匂いって興奮する。恥ずかしい言葉を口にして、ネクタイを乱暴に引き抜かれる。シャツのボタンを外しながら、足を抱えられ、首筋に顔を埋めてくる。

「ちょ、ジャン待て。こら、落ち着け。」
「ごめん、待てないって。」
「にしたって、だな。そんなにガッツくな。」
「だから、ごめんって。」

ごめんで許されるなら、刑務所も、ポリスも、税務局も何もいらねーよ。けれどジャンは、まるで俺の言葉なんか耳に入らないみたいに、性急に俺の柔らかくもない胸を舌でもって、愛撫する。

「っく・・・・こ、ら。」
「は・・気持ちいい、ルキーノ?これいいのけ?」
「・・それ以上しゃべ、るな。」
「へへ、ルキーノの乳首、赤くなって、たってきてるぜ?気持ちいいんだろ?」
「つ・・・言わんでも・・わかるだろうが。」
「ちぇ、もう少しかわゆいこと言ってくれてもいいのに。」
「ぬ・・かせ。」

そうやって、鼻で笑ってやると、「あ、今むかついた」と、ジャンはキュッと強く胸の突起をつまみ上げる。その痛みに思わず出てしまった、鼻にかかった俺の声に、満足そうに笑いやがるから、「この野郎」と頭の中で悪態をついた。
 組織の仕事を覚えるために、俺の後ろを付いて回ったあの頃のジャンと違って、組のボスとして経験値をあげたこの男は、今ではすっかり貫禄を身につけ、いや、昔より我儘が増えただけかもしれんが。どっちにしろ俺を、少なくとも翻弄するまでになっている。

「たく、素直になりゃいいのに、ま、そういうところがかわゆいんだけど。」
「こんのっ・・気色悪いこと言うな・・よ。」
「何いってるのけ?超かわいいじゃん。たく、そう言うこと言うと、余計に、さ。」
「・・なっ!」

グンっと足を持ち上げられ、いつの間にか脱がされていたスラックスがベットの脇に放り投げられる。高く尻を突き出させられると、躊躇う事なくジャンは、彼の唾液で濡らした指を挿入してくる。

「あ・・く」
「虐めたくなるっての、わからないかね?大丈夫。痛くねーようにドロドロにしてやるから。」
「あのな・・つ。」
「なぁ、知ってるか?あんたの先走り、伝ってすっげーエロいことになってんの。もの欲しそうにヒクついてる。」
「解説・・するな、馬鹿。」
「馬鹿っていう方が馬鹿なんですーなんて冗談。そんなに拗ねるなよルキーノ。事実だろ?俺に感じてる・・証拠。あんたのここも、さ。」

本当にエロい。ジャンは腰にくるような声で、低く呟くと、グチュリと指先を動かして内部をかき回す。

「・・、やばい、・・早く入れてぇ。」

ジャンの喉が動く気配を感じる。ベルドを外す音が聞こえて、そちらに目線をやればジャンが、俺の後ろをいじりながら、勃ち上がったものを俺に擦りつけるように、腰を揺らしているのが見える。

「はっ、・・我慢・・きかねーわんこだな。」
「うるせー、そんだけあんたがえろいんだっての。」

ジャンは小さく罵倒を零すと、俺の中から指を引き抜き、その指は同じように勃ちあがっている俺自身へと伸びる。彼のものと重ね合わせるように握りこまれれば、突然の刺激に口から自分でも信じられないような甘い声を出してしまった。
 同時に異物感から解放されものの、それでも途中で止められると逆に拍子ぬけだ。訝しげにルキーノはジャンを見ると、ジャンはにっと男前な表情で笑った。

「久し振りだし。あんたが一回イッてから、な。」
「つ、ジャ・・・ンお前。」
「何?それとも直ぐに突っ込まれたかったのけ?」
「・・たく、こんな可愛くも無いデカイやろーにそんなこと言うのは、お前だけだろうな。」
「・・当たり前だろ。つか、そんなん俺が許さねーよ?他の野郎になんて、そんな事になったら俺、絶対そいつ許さねーし、絶対殺す。」
「・・物騒だな。」
「当然だろ。」

ルキーノを可愛いって言って良いの俺だけなんだから、ジャンはCR5のボスという立場に就任してから、時折見せるようになった残酷な笑みを浮べる。ジャンは掌を上下させ、熱を高めはじめる。触れ合う熱が擦れあってすぐにでもイキそうだった。

「もう・・いい。それ以上は・・」
「何だ、よ?」
「・・必要ない。」
「だって、まだあんたイッてないじゃん。」
「別に、いい。」
「あんたがよくても、俺がよくねぇの。」

あぁ、この大馬鹿野郎め。少しは察っしろ!ルキーノはぐいっとジャンを自身の方に引き寄せた。驚いたように見開かれたジャンの瞳に気分をよくし、「俺が、嫌なんだよ」と囁くようにルキーノは言った。

「え?」
「だから、嫌だと・・言ってるだろうが。」
「何が?」
「・・ここまで言わせてわからんか?」
「いや、うん・・わかんねぇ。」

わざと解らないふりしてんじゃないだろうなコイツと思うが、本当にジャンは俺の言いたいことが解らないようで、首を傾けて、俺を真っ直ぐ見つめる。そんなジャンを見て、色々言いたい事はあったが、それよりも己の欲望の方が勝った。あぁ、ファンクーロ!もうどうにでもなれ!

「くそ・・お前ので、いきてぇんだよ。」

これは本当に何の罰ゲームだろうか。俺はジャンに今の顔を見られたくないと思い、咄嗟に腕を顔の前で交差させた。プライドとか羞恥とか色んなものがごちゃまぜだ。本当何なんだ俺。馬鹿じゃないのか。何もかも、俺の積み上げてきたものが全てめちゃくちゃだ。全部こいつのせいだと、まるで10代のガキみたいにやつあたりしたくなる。けれど最後の一線が、見栄が、自分を留まらせる。自分以外の誰かに翻弄されるなんてまっぴらだ。そうじゃないと、俺が、俺じゃなくなるみたいだ。あぁ、くそ自分でも何言ってるかわかんらんぞ、ストロンツォ!
 あれこれ考えて、暫く。相手の反応が無いことに、流石にルキーノも首をかたむける。まさか呆れたか。はたまた空気読めなかったのかもしれない。それで萎えたとかか。そりゃ、俺みたいな体格の野郎抱いてれば、ふいに我にかえったりもするだろうが。

再びルキーノがあれこれ考え始めた時。それは唐突だった。

「・・ジャ・・・つあっ!・いっ・・・あ。」

ズンっと、デロデロに十分に溶かされたそこにいきなり挿入され、奥深くまで突かれる。間髪いれず、激しく揺さぶられて、その刺激に声が抑えられなかった。

「ジャ・・や、めろ・・!?あ・・いきな・・りっ・・かよ!」

制止の声も、聞こえて無いのかジャンは無言で、腰を上下
させる。ポタリとジャンの汗が俺の頬に滴る。金髪の隙間から見えるジャンの目は、余裕の無さを物語っていた。

「もっ・・と、ゆっくり、・・頼・・うあっ!・・直ぐ、いっちま・・う・・・!あ・・」

激しい動きは、ルキーノを追い詰めるには十分すぎた。直ぐに、ルキーノのものは屹立し、先走りを溢れださせる。声を出きるだけ抑えようとしたが、それは、無駄な抵抗のようだった。ルキーノ声に反応するように、中に入っているジャンも、ズクリと大きくなるのがルキーノには解った。

「・・・つあ・・。あ、ジャン・・ジャン!」

限界が近い。動きがさらに早くなる。ルキーノも自ら腰を動かす。もう俺もジャンも、余裕の欠片もない。声を抑えようという気持ちすら無かった。

「・・・つ・・・・ルッキー・・ノ!」

そんな風に呼ばれてしまったら、どうでもよくなる。自分が下だということも、羞恥もプライドも見栄も。全部。ジャンの余裕の無さが、たまらないという気持ちが、好きだという気持ちが、その声すべてに含まれているような気がしたのだ。こいつに好かれてる、それだけで、もうなんでもいいと、意識が白くなっていく中でそう思った。








「ごめん。」
「・・・・。」
「ごめん。悪かったってルキーノ。」
「・・・・・。」
「つ、なぁルキーノ。機嫌直してくれって。この通り!」

三時間後。ベットの上で裸のまま。座って必死に頭を下げてるジャンに背を向けて、俺は、ふてくされていた。

「そ、そんなに、怒った?なぁ?ルキーノ、本気で怒っちまったのけ?なぁ、ルキーノ!ルキーノ!」

半ば泣きそうな声で、俺の名前を呼ぶそいつに、大きなため息一つ。

「別に、怒ってる訳じゃない。」
「本当?」
「煩い。しつこい。黙ってろ。」
「ルキーノ。」

あぁ、なんて情けない顔だ。これがさっきまで、俺が嫌だ、やめろと言っても、聞かずに、何発もやって無理しやがった野郎の表情かと思うと、頭が痛くなる。

「・・・・たんに、恥ずかしいだけだ。解れよ。」
「つ、ルキーノ!」
「おい、・・ジャン。」

ガバリと、俺よりも細い身体で、無邪気に抱きついてくるジャンに、こんなんだからほだされちまうのかと、ルキーノは脱力した。

「好き。ルキーノ。大好きだ。愛してる。」
「解った、解った。明日は早いんだ、早く寝ろよ。」
「む、ルキーノ。あんた信じて無いな?」
「いや・・」

ジャンの言葉を否定して、含んだ笑みを浮べてやった。

「解ってるさ。十分な。」

その笑みが、ジャン曰くとてつもなくエロかったらしく、さっきの反省や言葉はどこへやら、「ルキーノ・・・ごめんやっぱりもう一回。」とかふざけたこと抜かすその口を、頬をつねることで閉ざさせ。ルキーノは布団にその身を預け、明日の予定に思いをはせながら、その瞳を閉じた。









我慢限界!
(いや、俺も我慢限界。)




END





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