[携帯モード] [URL送信]

/etc
ジュリジャン前提ジュリルキ風味










#ジュリジャン前提ジュリルキ風味















 紫の髪を後ろへと流して、ジュリオは窓ごしにシンシンと降り積もる雪を眺めた。本格的に冬へと突入したデイバンの街は、白一色へと染まっていた。何故俺はこんなところへきてしまったのだろうか。そして何故俺はこの男に自分の近況を聞き出されているのだろうか。

「まだお前ジャンの奴とヤってないのか?」

ソファーで煙草をくわえ、さして隠そうともせず、直接的な物言いをしてきた男に、ジュリオは雪化粧した街から目を離し、男に視線を向ける。アメジストの瞳に剣呑とした色が混ざったのに、その男、ルキーノグレゴレッティーは気づいたのか、意味ありげに薄く笑みを浮かべた。

「おいおい、そんな怖い顔で睨むなよ。ただの確認だろう?」
「・・・あんたに言う必要があるのか?」
「まあ、それは確かに無いな。だが、ならお前なんだって此処に来た?ジャンとの事を相談しに来たんだろう?」

ルキーノの言葉にジュリオは、罰の悪そうな表情を浮かべた。男の言い分はもっともだ。ルキーノを、幹部会議後に呼び止めたのは自分だ。ジャンさんとの事でこの男に相談しに来たのだったと、自分がここにいる理由をジュリオは思い出す。彼を呼び止めたはいいものの、どう切り出すべきかが解らず、それ以降黙ってしまった自分に、ルキーノは何かを悟ったのか、ポンッとジュリオの肩を叩いた。相談なら後で俺の部屋に来るんだなと柔らかい笑みを浮かべると、その場を去っていった。そして現在にいたる。ジュリオは言われた通りルキーノの部屋へと訪問し、ルキーノもさして嫌な顔もせず、ジュリオを出迎えたのだが、ジュリオはやはりどう男に告げれば良いのかが解らず、先程から口を閉ざしたままだった。そんなジュリオの様子を暫く見つめていたルキーノは、やがて短く息をつき、口に加えていた煙草を灰皿に押し付けて消し、ソファーに座らせていた身体を起こすと、ジュリオの近くまで寄ってくる。

「別に難しいこと言わせてる訳じゃない。言いたい事そのまま言えば良い。」
「・・そのまま、か。」
「あぁ。シノギに関しては流暢に喋れるんだ。出来ない事は無いだろう?このままだと、話が進まんぞ?」
「・・・だが。」

口に出すのが躊躇われる内容だから、こうして迷っているのだというのに。丁寧な物言いや振る舞いに似合わず、案外下品な言葉も口にするこの男に、そう言ったところで仕方のない事ではあるが、かといってこの男が言うように話が進められないのでは、此処にきた意味が無いのも理解していた。

「ジャン・・さんと・・」
「あぁ。」
「・・ジャンさんが喜んで、くれるように上手くしたいんだが、あまり上手くいかない。」
「つまり、セックスのやり方か。」

あまり下品な言い方をするなとジュリオはジトリとした視線を向ける。だがルキーノに事実だろうと、あっけらかんと言われ、諦めを混ぜたため息をジュリオは吐き出した。

「・・・・・俺は、ジャンさんにして貰ってばかり、だ。」

だからジャンさんに気持ちよくなってもらいたいと思いつつ、それを上手く出来ない自分の不器用さを情けなく思う。お前はそのままで良いのだと、俺の好きな笑顔でジャンさんは言ってはくれるが、それでもジャンさんから貰ってばかりの自分が、大切な人に何かを与えたいと思うのは、いけない事ではないはずだ。

「まぁ、そうだな。相手に言われるがまま、ベットの上で鮪っていうのは男としては格好が悪くはある。」

そう言われて、端目から落ち込んだのが解るジュリオに、やれやれとルキーノは苦笑を浮かべた。

「けど、そういう気持ちがあるなら、ジャンには伝わるはずだから、別に無理に上手くなる必要は無いんじゃないか?」
「・・・。」
「まぁ、どうしてもっていうなら。手伝ってやらん事もないが。」
「・・何をだ?」
「決まってんだろ。」

ルキーノはニッと悪戯気に口端を上げると、ジュリオの両肩に手を置き、促すようにスッと顔を近づける。

「ほらっ、ジャンの奴といつもどうやってる?勿論、これくらいの事はしてんだろ?」
「・・・あ。」

近づく距離にうろたえる。いきなりの事態だというのもあるが、ジャンさん以外にこんな距離まで詰められた事が無かったため、ジュリオは動揺した。心なしか頬が熱いような気がする。当然、固まってしまったジュリオに、ルキーノは苛立たし気に眉間に皺を寄せた。

「おい、早くしろって。キスでもハグでも脱がせるでも。じれったいなお前は。」
「・・・・いきなりしろと言われても。」

こいつに、どうやれと言うのだろう。むしろ、同性にそういう行為をされても平気なのかこの男は。確かこいつには、男の趣味は無かったはずだが。そういう気持ちが表情に出ていたのかもしれない。ルキーノはピクリと眉をひそめると、呆れたように長い息をつく。ジュリオから離れ、ルキーノは煩わしそうに左手を首へと回した。

「・・冗談が過ぎたな。まったく、そんな事じゃジャンの奴を何時までたっても満足させれそうにないな。いったい、どんだけかかるんたか。」

まぁ、お前はこれからゆっくりでも。そんなルキーノの言葉の途中。自分でも何故いきなりそうしようとしたのかは解らない。ジュリオは、目の前の自分より僅かに身長が高いその身体を掴み、勢いのまま床へと押し倒していた。その際、ルキーノが呻き声をあげ、焦ったようにジュリオの名を呼んでいたが、ジュリオは何かに突き動かされたように、不乱に自分が組み敷いているそれに、触れる。ジュリオ、・・おいっ!待て、と、ルキーノの制止も既にジュリオの耳には入っていない。彼の足の間に割り入り、抵抗する彼のスーツを不器用ながらも脱がせ、Yシャツを開いた。曝された肩に、吸い寄せられたかのように顔を埋める。ジュリオの瞼の裏には、金色の髪が映っていた。柔らかい声、自分を一番安心させる甘い声。頭に響くそれに酔ったように、ジャンとのそれを思い起こしながら、ジュリオは自身の熱を触れていりそれへと与えた。自分も男だ。自分はジャンさんを満足させられるようにならなくては駄目なのだ。

「お、い・・ジャリオ!」

無言のまま行為を続けようとするジュリオに流石にルキーノも焦ったのか、上擦った声をあげた。

「や、やめろ馬鹿。だ、誰か助けろ!この馬鹿犬止めてくれ!」

ジュリオに犯されるー!俺の身体はシャーリーンのだ!シャーリーンしか嫌ぁー!そんなやり取りをしていた所へ、都合良く、いや悪いというべきか、ノックと共に部屋の扉が開け放たれた。

「いるか?ルキーノ。例のY社とF社とD社の見積もりの件なんだが。」

ルキーノの部屋へとエメラルドグリーンの髪を揺らし、入ってきたベルナルド・オルトラーニは、ピタリとその先の動きを止めた。表情は恐ろしいくらいに変わらないのは、いつ何時でもポーカーフェイスは崩さないベルナルドらしい。けれど流石に驚いていたのか、ジッとこちらを凝視してきた。当然だろう。なんせ視線の先には、組織の次席幹部があられもない衣服を乱れさせた姿で、三席幹部がその次席幹部に乗っかっている状況なのだ。


「べ・・ベルナルド。」
「・・・ジュリオはジャンと恋仲のような気がしていたんだが。」
「そ、そうなんだ。聞いてくれ、ベルナルド。ジュリオの奴が。」
「どうやら、お邪魔してしまったようだね。すまないな、ルキーノ、ジュリオ。ゆっくりやってくれてかまわないよ。」

イイ笑顔を浮かべながら、ベルナルドはそう言って、パタンと扉を閉めた。静まった空間の中で、明らかに誤解して去っていったベルナルドにルキーノは衝撃に身を固くさせた。

「・・何だ?」

そんな中、状況を理解していないのか、はたまた自分たちの今の状況が何に繋がるのか、興味がないのか。発っせられたジュリオの惚けた言葉に、ルキーノは大きくため息をつき、うなだれたように天井を仰いだのだった。










紙一重な純愛






END
(とりあえず、ジャンのとこ行け、ジュリオ。)
(・・何だ、続きはどう・・)
(そういう状況じゃねぇ。誤解を解く方が先だ。)
(誤解?何の、だ?)
(いいから、行ってくれ。俺の名誉の為に、頼むから。本気で。)














あきゅろす。
無料HPエムペ!