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部下ルキ







#部下ルキ







 私がノックと隊長の「入れ」という声に、彼の仕事部屋へと入ると、隊長は彼の執務机であるそこで、今日の会談の必要書類であるそれに目を通している最中だった。

「何かあったか?」

彼は普段通り私が隊長の部屋へと訪れた事に対する質問を口にする。その振る舞いは普段と別段変わりないように思う。けれど私が入った時、彼はその赤髪をくしゃりと少しだけかきあげて、短い息を零したのを私は見逃さなかった。長年、彼の下で働いてきた私には、それが自身の疲れを部下である私に悟らせないようにする時の彼の癖である事を知っていた。毅然としておられるものの、ここのところの徹夜続きの日々に流石の隊長もお疲れの様子だった。

「いえ、特には。珈琲お持ちしただけです。」
「そうか、すまんな。調度飲みたかったところだ。」
「折角なので、一息入れられては?お疲れでしょう?」
「・・・いや、もう少しやっておかなきゃならない事があるからな。珈琲はそこに置いておいてくれ。」

一瞬思案し、けれど彼は私の提案に首を横に振り、再び資料へと視線を戻した。私が出来る仕事であれば、すぐにでも私が隊長の代わりに処理をしたかったが、隊長にしか出来ない仕事というものはある。解ってはいたものの、その時の私はどうやら仕事よりも隊長に休んで欲しいという思いの方が強かったらしい。

「隊長・・・・最近、あまり寝てらっしゃらないんじゃないですか?」
「いや、そんな事は無いが。」
「今、シカゴに出張中のオルトラーニ幹部への仕事は、貴方に回ってきてる筈です。自分の隊務もあるでしょうに。少しでも休まれないと、身体を壊されますよ?」
「・・・どうした?随分今日は押しが強いな。」

私が重ねた言葉に、漸く隊長はやれやれと呆れたように、私に視線を向けた。

「当然でしょう?」

私はスッと隊長の目元を撫でた。おい、いきなりどうしたという彼の訝し気な視線を私は真正面から受け止める。

「こんなに目を充血されていたら、今日の会談に支障をきたします。休まれて下さい。」
「・・・そんなに、疲れているように見えるか?」
「私には。」
「そうか。・・・・たく、敵わないなお前には。」

解った、休んでやるよ。隊長は目を通していた資料を引き出しの中へとしまい、立ち上がる。そんな隊長の姿に私は薄く笑みを浮かべた。自惚れかもしれない。けれど隊長は一介の部下にすぎない私の言葉を邪険にするどころか、私の言葉に耳を傾け、口ではどうこう言おうと、聞き入れてくれている。

「隊長。」
「ん、なんだ?」

だからだろうか。こういう無躾な行為は本来許される事では無いというのに、何処かで隊長なら受け入れてくれると、そんな傲慢な事を思ってしまうのは。私は、近づいてきた隊長の腕を引き、彼を近くにある簡易ベッドに軽く押し倒す。そんな私の行動に隊長は瞠目した。

「このまま、貴方を起きれないくらいまで犯して、一日でも二日でもベッドに縛りつけたいところですが。」
「・・・・・やるなよ?」
「解ってます。」

そこまで貴方を拘束出来る権利は私には無い。けれど、いっそそうしてやりたいと思う感情は否定は出来なかった。

「・・・気を付けて下さい隊長。」
「何を、だ?」
「隊長を無理矢理犯すような事を、私にさせないで下さいって事です。」

実はそんなに気が長い方ではないので、貴方がやせ我慢されるようなら、そうしないとも限りませんから。そう言った私に、隊長は苦笑し、馬鹿野郎と悪態をつく。そして、上に重なる私の頬に触れると、

「俺はこっちは、甘めが好みなんだよ。」

と挑発的な視線を私にやると、そのまま私の唇を塞いだのだった。







返事はいらない






END








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