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ジャンルキ#











#やくざジャン×警察官ルキーノ(元拍手)




 それはしっとりとした風が吹く涼しい夜の事だった。勤め先のロッカーの前で今日一日を共にした制服を脱ぎ、私服へと着替えた男はシャツだけを鞄の中にしまうと、同僚達と冗談まじりの会話をした後彼らに別れを告げ、今日一日の業務を終えてようやく帰路へとつく。自宅へと戻り、一服してから男は夜遅くの街へとその身を投げ出した。男は自宅がある街からは少し離れたその場所にわざわざ足を運び、今日の夜を共に過ごしてくれる相手を探した。離れた街でそういう一夜限りの探しているのは、職場にはばれたくないのが理由だ。男の仕事は警察官であり、夜にこのように街に繰り出して一日限りの相手を求めているなどと知れたらと思うと、そうせざるを得なかった。警察の連中は頭の固いやつらばかりで困る。なら何故警察という仕事を選んだのかと聞かれれば、それは笑うしかなかった。特定のパートナーを作るより、一夜限りの相手を見つけてセックスする方が面倒臭くなくて良い。甘い言葉で機嫌を取る必要も無いし、相手に縛られることも無い。その付き合い方に慣れていたといのもある。最近まではセックスフレンドが何人もいて、街で相手を探すという事は無かったが、その関係もこの頃煩わしくなり、携帯電話の番号を変えて、一切の連絡をたった。だから今日は久しぶりに街に出て、相手を探していたりするのだが。




(好みがいないな。)

 街のあるバーのカウンターで、ウイスキーが入ったグラスを干したあと、ルキーノは自身のお気に入りの銘柄の煙草をくわえ、肺に煙を循環させそれを吐き出した。先程から数人の女に声をかけられはしたが、その女たちには乗り気にはならず、適当にあしらっている。何故かいい年した40代くらいの中年にも声をかえらたが、勿論男など範疇外だ。いや別に駄目な訳では無い。ただ俺は根っからのタチであって抱かれる方はまったくの専門外だ。さっきの男は明らかに俺を抱く方で見ていた。だから断った。あの親父もこんなデカイ野郎を抱こうって気になるなんてどっか神経いかれてんじゃないのか。男でももう少し綺麗どころや、可愛い系がいるだろうに。そんな事を考えていた時だ。店に誰か入ってくるカランとした音が店内に響き、自然とルキーノの視線は入口へと向いた。その入ってきた奴を見た瞬間、ルキーノはくわえていた煙草を落としそうになった。

(これは、なかなか。)

そいつは眩しい程の金髪をしていた。ルキーノの理想とする色合いの金髪。そいつは女ではなく、男だったが、非常に整った外見をしていて、身長は平均的だが低くくは無い。何より彼の着ている服は上品な上、センスが良い。ルキーノは口元をあげた。どうやら俺は金髪に弱いらしい。そういや初体験の女も金髪だった。その金髪の色男は俺のすぐ近くに都合良く腰をかけると、いつもの頼むとカウンターにいるバーテンへと注文を頼んでいた。つまりこの男はこの店によく来る常連らしいという事だ。男と視線が合う。こちらが微笑むと、彼は一瞬その瞳に驚きの感情をのせたが、すぐにその男は意味ありげ目を細めて笑った。

「兄さん一人?」

ルキーノが声をかける前にその金髪の男がそう自分へと声をかけてくる。

「あぁ。一人酒は寂しくてな。調度話し相手が欲しかった所だ。アンタも一人か?注文を聞く限りここの常連みたいだが?」
「当たり。良く仕事帰りにな。一人っきりになりたくて此処にくるんだ。」
「なら、俺の存在はそんなあんたにとっては迷惑になるのか?」
「いや、兄さんみたいな良い男だったら俺も歓迎。」

そういって、ニッと男が笑った顔はけっこうな男前だ。遠目から見た印象と近くで見る印象はやはり違うものだと思いながら、けれどルキーノはそれで男の評価を落とすような事は無かった。むしろ上がった気さえする。元から気の良い野郎は嫌いでは無かった。

「なら、俺はあんたの御眼鏡にかなったってとこか?」
「あぁ、少なくとも外見は満点。」
「そりゃどうも。」

男が笑うと、ルキーノも釣られるようにして笑う。あぁ、こりゃ上玉かもしれんと久し振りに感じた高揚感にルキーノは機嫌よくし、男にお隣にお邪魔しても良いかと尋ねると、どうぞと気前よく隣を譲ってくれる。暫くして、男の元に注文したお酒が届けられる。グラスは二つ。その一つがルキーノの前に置かれた事に、ルキーノは男を意外そうな目で見つめた。

「一人身同士、一杯どうだ兄さん?まぁ、聞く前に頼んじまった訳だけどな。」
「ははっ・・・せっかくのアンタの御好意だ。なら、お言葉に甘えようか。」

ルキーノは男の言葉に笑うと、そのグラスを手に持つ。彼もそんな自分に薄く笑みを浮かべて、グラスを持ち上げた。

「俺たちの出会いと。」
「兄さんとの素敵な夜を願って。」

乾杯と、男二人はカランとグラスを軽くぶつけてそれを喉元へと下した。




 互いの自己紹介と当たり障りのない話しを暫くして店の外へと出て、ジャンと名乗ったその男に近くのホテルに連れてこられた。そこもどうやら男にとって馴染みの場所だったらしく、彼に対するそのホテルの従業員の一貫した態度にルキーノは少しだけ驚いた。もしかしたら俺はとんでもない奴を相手に選んじまったかもしれない。そんなことを思ったのは、連れ込まれた部屋がホテルの最上階のスイートルームだったって事だ。幾分優男の見た目に反してこれは意外としか言いようが無い。俺の低賃金の警察官の給料じゃ、無理だなこれは。いったいどんな悪だくみしたらこんな部屋借りられるんだと呆れたような眼差しを男に向けた。

「まさか、俺もこんな部屋に連れ込まれるとは思わなかった。」
「なんだよ、怖気づいた?」

お互いにシャワーを浴び、バスローブを身に付けた身体でベッドへと転がる。ルキーノの発言に少しだけその表情を不満気に変えたジャンが俺の上に圧し掛かってきた。その表情は幾分幼さを男に浮かびあがらせる。先程の自己紹介でどうやら俺よりも二歳年下だという事が解ったからか、そんな彼の表情にルキーノは絆されてしまう。

「今更怖気ついたって事は無いが・・」
「なら良いだろ?」

スッとジャンの目が細められ、彼の口角があがったかと思うと、ゆったりとした動作で口づけられた。上から重ねられたキスはこちらが少し部が悪い。先に舌を差し込まれて歯列をなぞられ口内を舐められる。まさか自分が主導権を握られるとは思わなかったが、まぁたまにはこういうのも良いだろうと、ルキーノはジャンの口づけに自らも舌を絡め合わせて彼に応える。すると口づけの合間にスルリとジャンの手がルキーノの合わせから侵入してきて、胸を撫で上げたのに。あ?とルキーノは頭の中で疑問府を浮かばせた。何かが可笑しい気がする。しかしルキーノが確信が持てないまま、バスローブを落とされ、肩に男の唇が這い、男の行為は進んでいった。そしてついには、素早くルキーノの両手首がタオルで男によって戒められてしまった所で、漸くルキーノはまさかという思いで、ジャンを見つめた。

「まさか・・・とは、思うがあんた。俺を抱く気か!?」
「あれ、兄さんもそういうつもりでついてきたんじゃねーの?」

俺は最初からそのつもりだったんだけど?と、綺麗な顔で悪魔みたいな事を言われて流石のルキーノも焦る。

「いや、俺は抱くつもりでだなっ・・むしろこの体格差で俺が抱かれる側なんて思わんだろうが!」
「へぇ、そうなんだ。ま、でもこの際良いじゃん。大人しく抱かれとけよ。」
「俺は男ならタチしかやった事はない!」
「なら、俺が初めての男になってやるって。往生際が悪いぜ兄さん。諦めな。」

諦められるかと思ったが、手が戒められて、男に乗っかられた状態では逃げるどころか、身動きすら思うようにいかない。仕方無い、これは使いたくなかったがとその口を開いた。

「止めろ!これ以上やりやがったら、強制わいせつ容疑の現行犯で逮捕してやるぞ。一応これでも警察やってるんでな。」
「あ?兄さん警察なん?そりゃまた、皮肉なもんだな。」
「あ?」

どういう意味だ?とルキーノがジャンに尋ねるとジャンはまたあの意味深な笑みをルキーノに向けた。

「サルト組って知ってる?」
「サルト?そりゃ、あれだ。この国じゃ知らないもんなんていないだろ。なんせこの国の四代やくざのそれまた上に君臨する元締めヤク・・・ザ。」

にっこりとルキーノの言葉に満足気にジャンは笑う。そしてそれこそ俺にとっては最悪としかならない現実をつきつけてきた。

「そのやくざの組長な、俺の親父なんだわ。」

つまりおれは若頭な訳。おわかり兄さん?と、もう既に受け入れがたい事実にフッと意識が遠のきそうになった。

「そんな俺を逮捕出来る?出来ないよな。それにあんたも職場でやくざと関係を持ったなんて知られたらまずいんじゃねーの?」

ニヤニヤと笑う目の前の男に既に抵抗の意思は持てそうにない。サルト組の若頭ってそんなんありか?ヴァッファンクーロ。そんなルキーノの姿にふわりと微笑んだジャンは、ルキーノの額に優しく口づけを落とした。

「覚えておいた方が良いぜ兄さん。」

あ?と力無い声で返事を返すと、ジャンの顔が更に迫ってくる。

「あんたみたいな奴でも抱きたい奴はいるって事、俺みたいにな。」

つかあんた、自分が抱かれるなんて微塵にも思わないタイプだろ?そういう思いこみって一番危ないんだぜ?そんな説教まがいのことまで言わてしまう。そんな事、この俺を今抱こうとしてる奴なんかに言われたくないとルキーノは心の中で思いながら、あとはもうなし崩しにその男に好き勝手されてしまったのだった。






美しい外見に御用心




END







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