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学パロ3(数学)







*学パロ
この設定のイヴァ→ルキ





「おい、イヴァン。今日あいつ休みなんだって?」

昼休みの事だ。屋上で俺が一人で売店で買ってきたホットドッグをかじっていると、バタンと入口の扉が乱暴に開かれる。そして開口一番の彼のその一言に、俺はその言葉を投げかけてきた、自身のクラスの数学の教師であるルキーノ・グレゴレッティーに視線をやった。今日は数学の授業は午後からだ。つまり、どっからかその情報を聞き付けて、俺に確認しにきたってとこだろ。それにしたって・・・

「おい、イヴァン。聞いているのか?」
「あー聞いてるっつの。てか、先生。一言目にいきなりそれはねぇーんじゃねーのか?」
「ん?・・あぁ、すまん。ついな、あいつがいると学校じゃ、気が抜けねぇーんだよ。」

そう言ってルキーノは笑うと無遠慮にイヴァンの隣に腰かけた。じゃあ、俺といる時は落ち着けるって事なのかよ、と少しだけその言葉に気分が上向いたが、イヴァンはその気持ちを悟られないように「まぁ、いいけどよ。」と、ルキーノから視線を背け、食べかけのホットドッグに再びかじりついた。つか単純すぎだろ、俺。

「んで、ジャンの風邪どうなんだ?何日くらいで、学校に出てくるんだよ?」
「・・・・やっぱ気になんのかよ?」

少しだけ面白くなくて、眉間に皴を寄せるが、気づいていないのか、そんなイヴァンを気にする事無く、ルキーノは話を続けた。

「あぁ。だって、あいつが出てくるまで俺の平和が保たれるんだ。気になるに決まってるだろ?」
「・・・それ、先生としてどうなんだ?」
「あぁ?別にいいんだよ。」

元から先生って柄じゃないしなと、頬杖をつき、だるそうにルキーノは息をつく。

「じゃあ、てめぇなんで先生になったんだよ?」
「てめぇ?」
「ち、ルキーノ先生。」
「よろしい。そうだな・・・・単純に、給料安定してるからか?元々餓鬼は嫌いだしな。」
「・・・マジで、なんで先生になってんだよ。」

訳わかんねーと、イヴァンは最後の一口を口に放り込んだ。

「あ、でもお前は好きだぞ?」

イヴァンは唐突なルキーノの発言にグシャッと、手の中の紙パックを思わず握り潰してしまっていた。中に入っていたオレンジジュースが溢れ、中身をアスファルトにぶちまけてしまう。うわっ、お前何やってんだとルキーノはイヴァンから紙パックを取り上げ、胸ポケットからハンカチを取り出すと濡れた箇所を拭っていく。

「つ、べっ・・・別にいいっての。汚れんだろうが!」
「何言ってる。ハンカチはその為にあるんだ。別に構わん。」

いやそうじゃなくて、アンタが近すぎんだよ。ウっとイヴァンは身体を固まらせた。自分だけが後ろめたい思いをしているからか、イヴァンは上手くルキーノを見返すが出来なかった。

「イヴァン、俺はお前に感謝してるんだぜ?」
「アァ?なんで・・」

そのルキーノの言葉に、イヴァンは怪訝な視線を向ける。自分は先生に感謝される程の事はしてないと思ったからだ。

「ジャンの事についてもな、俺が襲われても毎回助けてくれるし、俺の我が儘にもなんだかんだ言って付き合ってくれるしな。だから、な・・イヴァン。」

ズイッと、ルキーノはイヴァンの顔を下から覗きこんだ。「な、なんだよ。」と思わずイヴァンは狼狽してしまう。

「俺に何か出来る事があれば何でも言え。お前だったら、多少の無理は通してやる。」
「あ・・?」

ルキーノのこの言葉に、ドキリとしてしまったのは、絶対に俺のせいじゃないと思いたい。ファック!こんな事くらいで、ときめいてんじゃねーぞ俺!

「そうだな、例えば・・・だ。」

ルキーノがズイッっ、三本の指をたてイヴァンへと向ける。何なんだだとますます怪訝な顔をしてしまうが、ルキーノはそんなイヴァンの様子にニヤリと得意気に笑った。

「一つ、この一年のテスト問題を事前に教える。二つ、プリント小テストの答えを纏めて渡す。宿題も出さん。三つ、むしろてっとり早くこの一年の成績は5で観点別はオールA評価にする。勿論数学限定でだけどな。お前どれにする?」

ガックシとはまさにこの事だろう。イヴァンは肩を落とすと呆れたような目線をルキーノに向けた。

「・・おい、それ職権乱用だろうが。」
「まぁ、これは冗談として・・」
「冗談かよ。」

イヴァンの返答にルキーノは笑うと、その場を立ち上がった。

「まぁ、今の極端ではあるが、つまりその程度なら考えてやるよって事だ。だから考えとけよイヴァン。」

ルキーノはイヴァンの髪をぐしゃぐしゃと掻き交ぜるようにして撫でてから、じゃあ俺は次の授業の準備があるから先戻るぞと、ルキーノは屋上から中へと入っていった。

「・・・して欲しいつったってよ。」

しばらくたってからイヴァンは口元から大きく息を吐き出した。正直、自分の本音は口が裂けてもあいつに言えない、いや言えそうにない。あいつは俺が本当にして欲しいと思ってる事を知ったら、どんな反応をするのだろうか。イヴァンは一瞬考えてしまった光景を頭をふって掻き消した。

「そんなん、決まってるだろ。」

俺がジャンと同じような事を先生にしたいだなんて、それこそ嫌われるに決まってる。嫌われるどころか軽蔑されるかもしれない。それだけはごめんだった。俺もジャンと似たようなもんだなと、イヴァンは自嘲に似た苦い笑いを浮かべると、その場で寝っころがる。見上げた空は、自分が秘めてる思いとは似つかないほど真っ青だった。

「言える訳・・・ねぇーだろうが。」

だからこのままで良い。あいつの助けになれるだけで充分だ俺は。言い訳じみた言葉を自身に言い聞かせ、イヴァンは身体を起き上がらせると、五限目にあるあいつの数学の授業に行くために、その場を後にしたのだった。













END







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