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「その暗闇の中で」のAfterな話し。
ジャン+イヴァン
やけに辺りが静かだった。何故かその時の俺はとても冷静で、ただそこには冷えた感情しかないように思えた。コツコツとジャンはそれを目指して足を進める。
コツンコツン
辺りの喧騒すら今のジャンには聞こえず、自身の足音だけが頭の中で響いている。そしてジャンは暫くして立ち止まり、視線の先のそれを見下ろして、ぼそりと呟いた。
「・・ルキーノ。」
その時の自分の声は震えていたのだろうか。それは解らない。ただそれは現実でしかないのだという事は理解していた。横たわったそれは、生きてるのかすら見ただけでは、判断がつかない。ただルキーノの身体に残された青痣や赤い痕、飛び散った白濁はまざまざと奴らがこの男に対して行った暴力をジャンに思い起こさせた。ギリッと唇を噛み締めてバサリと自らのコートをルキーノの身体にかける。それでも自分のそれではルキーノの身体全てが隠れるはずもなく、その事が異様にジャンには悔しかった。ジャンと背後から呼ばれる声にゆっくりと振り返る。青い短髪の青年はこちらへと近づき、「なっ」と、その目に飛び込んだ信じられない光景に驚きの声をあげる。だがやがてジャンすらも今まで見たことなどないような憎しみの篭った表情をイヴァンは浮かべた。
「イヴァン、連れてきた部下こっち来させんな。俺達以外には見せる訳にはいかねぇーからな。」
「あぁ。」
その言葉に何時になく静かにイヴァンは頷いた。早速踵を返した彼にジャンはもう一度呼び止める。
「イヴァン。」
「なんだ?」
視線があう。どちらもその時は身じろぐ事もなく互いに見つめ合った。ジャンはスッと目を細めると、自分でも信じられないような低い声でそれを吐き出した。
「あいつら一人も・・楽に殺すな。」
そんなもんじゃ足りねー。一瞬で殺すだけじゃすまさない。たとえ死んでもまた引きずり出して殺してやる。それだけの事をあいつらはしたのだから。ジャンはスッとルキーノの顔に手を伸ばす。触れて指先で辿った体温はいつも自分を抱きしめてくれるそれよりも、とても冷たかった。
「解らせてやれ。」
俺達CR:5に、その仲間に、手を出すという事がどういう事なのかを。鋭くその場に響いたジャンの言葉にイヴァンもその瞳を細くし、「YES,Boss.」と低く呟いた。
その闇は暗く深い
END
(部下が守れないで何がボスだと顔を歪める俺を見たら、アンタはどう思うのかなんて、今の俺には知る手段すら無いのだ。)
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