#ルキジャンもしくはジャンルキ前提
ベルナルド+ルキーノ
(シリアスと見せかけて・・・)
この俺があいつを幸せに出来るはずもない。あぁ、俺なんかよりお前の方があいつも良かったかもしれないなと、自嘲気味に己を嘲笑った言い方をした友人に、ベルナルドはその瞬間視界が真っ赤に染まった気がした。ガンッと机を力の限り叩きつける。俺の行動に俯いていた顔を上げ、彼は息を飲み、こちらに驚きの視線を向けた。ベルナルドは立ち上がり、声すら発する事なく、コツコツとルキーノがいる場所に一歩一歩近づいた。ルキーノの襟首を引っ張り、その反動を利用して壁にガンッと乱暴にその身体を押し付けた。ツッと痛みに声を漏らしたルキーノをそのままの態勢で押さえ付ける
「く、ベルナルド。」
「気にくわないな。」
低く囁かれたそれは、ベルナルドもこんな声出せたんだなと自分自身で驚いた。
「俺がお前の為に身を引いたとでもまさか本当に思っているのかい?それが俺の優しさだと?」
何故俺はこいつにこんな事を言ってやらねばならないのか、まるで敵に塩を送るみたいに。ぶちまけてやりたいのはこちらの方だ。
「あんな表情、ジャンは俺には見せない。ルキーノ、まさか俺がお前と同じような事が出来るとでも本当に思ってるのかい?」
そうだ、俺じゃ駄目なんだ。声が震える。小さい頃からジャンの傍にいたから、ジャンの喜ぶことも怒ることも何だって知ってるし、何でもしてやれる。だけど。
「俺ならお前からあいつを奪える。どんな汚い手段であっても手にいれる、それくらい俺には訳ないさ。だがなルキーノ。俺はそれをしなかった何故だかわかるかい?」
あぁ、俺って馬鹿だなとベルナルドはを何とも言えない複雑な視線をよこすと、ルキーノはベルナルドの言葉に瞳を見開いて、こちらを凝視する。固まってしまったルキーノの姿がどうにも可笑しくて、ベルナルドは薄く笑みを浮かべると、握っていたルキーノのシャツからその手を離した。
「お前だからだろう。あいつは幸せにして貰いたいなんて考えちゃいないさ。お前が過去の事で自分を卑下するのは構わないが、そうやってジャンの気持ちまで無視しないで貰いたいね。」
あいつはそこまで弱い男じゃないだろう?お前がそうなら、むしろ俺がジャンに幸せにして貰いたいくらいだと、ベルナルドはからかい気味にそう言ってやると、ルキーノはやらねーよと、まるで子供のように拗ねた表情で小さく呟いた。
「とりあえず、ジャンと喧嘩したなら、先に折れてやるべきなんじゃないか?」
「・・・・だが、今回ばかりはあいつが悪い。」
「いったい何をしたんだジャンは?」
ベルナルドがそう尋ねると、ルキーノは不愉快な事を思い出したのか、その眉間に深く皺を寄せて、憮然とした表情を浮かべると、重いその口を開いた。
「・・・・・あいつ、この頃、俺が忙しくて二人っきりになれなかったからって、当てつけに、目の前でイヴァンの野郎とキスしやがった。」
ハニー、本気じゃないとはいえ、いくらなんでもそれはルキーノが可愛そうだと、ベルナルドは渇いた笑みを浮かべてルキーノの肩に手を置き、解ったジャンと話してみるよと、ルキーノに同情の眼差しを向ける。まったくさっきまで真剣に話してた時間は何だったんだろうね、本当。言い争いになりそうになった先程のやり取りが、馬鹿らしいじゃないか。巻き込まれるこちらの身にもなって欲しい。イヴァンのやつもとんだ災難だなと、ベルナルドは苦笑を浮かべたのであった。
「なんならルキーノ。今度は、ジャンへの当てつけに、俺とキスしてみるかい?」
「冗談でも、勘弁してくれ。」
年上の憂鬱
END
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