#部下ルキ(?)
「失礼します。隊長宜しいですか?」
「あぁ、入れ。」
既に夜の11時を回った時刻に、ノックと共に私が本部に用意された隊長の部屋へと訪れると、彼は眉間にしわを寄せ、ソファーに足を組ながら、手に持った資料を確認していた。おそらくあれは明日の予定に入っている取引の確認書類か何かだろう。
「すみません夜分遅くに。お取り込み中でしたか?」
「いや、そろそろこの紙っきれを眺めるのに飽きてきた所だ。・・・・用件はなんだ?」
「はい。」
外部に音が漏れないように、戸を閉め隊長が腰を降ろしているソファーへと近づいた。隊長も組んでいた足を解き、聞く体制を整える。相変わらずなにもかも様になる方だ。乱れというものを感じさせない。そんな思いを抱きながら、私は今舞い込んできた問題を隊長へと告げる。
「人魚姫で、たちの悪い輩が暴れ回りまして。こちらで無理矢理抑えて、カタはついたのですが。そのショックから従業員の方々が大層怖がっていまして、それで・・・」
「解った。俺が行こう。」
「宜しいのですか?隊長もお疲れでしょうに。」
「なに、怖がってるレディー達を安心させてやるのも管理者としての俺の責任だ。」
隊長は、そう言ってニヒルに笑うと机の端へと資料を置き、立ち上がる。
「隊長。」
「ん・・・あぁ。」
クローゼットにかけられた隊長のコートを手に持つと、彼はそれに違和感を感じさせる事なくスルリと袖を通す。やはりこうしてキチリとしたコートに身を包む隊長の出で立ちや立ち振る舞いは誰よりも美しいなと、私はそっと笑みを浮かべた。
「行くぞ。」
「はい。」
この人の下で働ける事。それはこの世界に身を投じてから、唯一私が感じる事の出来た至福なのかもしれない。
唯一の至福は…
END
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