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short 22




#イヴァルキ+α
(イヴァンを昔裏切った旧友捏造あり。)

















 銃撃が鳴りやまぬ、相手との銃撃戦による弾が交差する中イヴァンは目の前の車を盾にし身体を飛びこませた。額に汗をかきながらフゥーと息をつめ、相手かたの出方を遠目で伺う。後ろにイヴァンの部下が緊張を含んだ低い声で後ろからヒソリと声を弾ませた。

「兄ぃ、敵さん何処の勢力なんすかね。こうも突然の襲撃じゃやりずらいですよ!」
「うっせー俺だって訳わけんねーんだ!黙って、銃構えてろ。身体中蜂の巣になりてぇーのか!。」
「は、はいっ!」

イヴァンの部下の中では若い、といってもイヴァンよりは数歳年上であるその部下が青い顔をして、銃を固く握り直すのを横目に、イヴァンは自身の汗ばんだ右手に光るコルトの45口径を見つめ、頭を働かせる。この銃に残っている弾は残り少ない筈だ。あと四発、カンバンになっちまえばこちらからの応戦は出来なくなる。かといってこの少ない弾数で、相手側の奴らを撃退出来るかと言えばそれも難しい。あーくそっ!俺はこうあーだーこーだ頭で考えるのは苦手なんだよ。「ファック!」とイヴァンは口元から罵倒を零し、苦々しげに部下へとその口を開く。

「ルキーノのとこってーのが癪だけどよ、応援がこっちに向かってる筈だ。もう少し耐えろ!先急いで間違っても死ぬんじゃねーぞテメェーら!」
『おぉー!』

イヴァンの言葉に突然の襲撃に先程まで動揺して焦った声を上げていた数人の部下たちの目が力を取り戻し、雄たけびをあげると、相手がいる方向を一斉に睨んだ。ハッっ世話かけやがるとイヴァンはその部下たちの様子に満足気に笑って彼自身も、銃を握り直した。暫くして、いままで飛びかっていた銃声が一瞬止んだのを見計らい、イヴァンは単身で路地裏の方へと移動し壁にその背中を張り付くと、注意深く敵の場所を確認した。

(左に一人、向かい側に・・・二人、あとは・・ファック!見えねぇー!確認出来んのはそれだけかよ!くそったれ!)

しかし、イヴァンの位置からでは三人程しか確認は出来ない。ルキーノのとこのやつがくるまで減らしとくべきかどうか迷いはしたが、守りはどうも自分の性分に合わない、逃げるなんてのも論外だ。なら選択は初めから決まってるだろうが。イヴァンはニヤリと笑うと、銃口を敵の一人に向ける。パンッとそれが唸りを上げると、そいつが頭から血しぶきをあげて倒れ込んだのを目で確認し、直ぐに仲間がやられたのに気を取られていた一人に照準を合わせ引金を引いた。残りは二発。これ以上は無理はしない方が良いだろうなと、銃を下ろそうとした瞬間後ろに感じた微かな気配に反応し、イヴァンは右へと飛ぶ。すると頬から数センチかの距離を何処からか飛んできた銃弾が掠った。

「っくそ!あっぶね!」

イヴァンはすぐさま体勢を立て直して、銃弾が飛んできた方向に視線を投げ注意をそちらへと移した。

(いつの間にか周り込まれていたのに気付かねーとはよ、情けねーな、おい!)

だがどうやら、あちら側も一人らしくこちらの様子を慎重に窺っているのが気配で伝わってきた。ごくりと緊張からか口内に溜まったつばを喉をゴクリと上下させ、飲み込む。

(こっちの出方を待っているってことかよ?)

それならと、イヴァンは気配を感じる方向に銃を迷わず撃った。その銃声に相手は焦ったのか何発もこちら側に向け弾を走らせるが、イヴァンにそれは当たらない。ふとそいつの銃声が止んだのと同時にイヴァンは隠れていた木箱の中から偶然見えたそれを手にして、勢いよく走り、手にしたそれをぶん投げた。ガシャンとそれは壁に叩きつけられ、その安物のワインボトルは激しい音をたてて砕け散る。それと同時に微かに相手が驚きの声をあげるのを聞きとり、イヴァンは確信を持って、姿勢を低くすると、そこへと飛び込んだ。

「がはっ!・・・つ!」

懐に一発。相手がその衝撃に呻き声を上げ、背を丸めたところにさらに上から蹴りをくらわすと、そいつは道路に這いつくばって倒れこんだ。相手の銃を持った手をイヴァンは勢いよく踏みつけ、彼から離れた銃を蹴り飛ばすと、そいつの頭に銃口を向ける。

「くそ、手こずらせやがって!てめぇー大人しく・・」
「・・・・は、ははは!」

だがイヴァンが銃口を向けたその男は何が可笑しいのか、突然笑いだした。イヴァンはアァ?と不機嫌な声を口元から零す。

「ファック!てめ、何笑ってやがる。」
「ははは、笑いたくもなるぜ、・・そうだろ、なぁイヴァン・フィオーレ?」

そいつは自分の名を唐突に口に出した。イヴァンが驚きに目を丸くすると漸くそいつは道路に突っ伏していたその顔を上げた。そいつの顔を見た瞬間、イヴァンは思わず息を飲んだ。

「てめっ・・・」
「よう、久し振りだな。あれ以来か。まさかてめぇーがあのCR:5の幹部様になってるとはな!知った時は驚いたぜ?俺と組んでた頃とは雲泥の差じゃねーか!」

そいつがゲラゲラと笑う様子にイヴァンは唇を噛みしめた。忘れもしない。イヴァンの中で憎々しいあの過去のことが頭の中で蘇った。

「お前も良く生き延びたもんだな。まさかあの状況で逃げ出せるとは俺も思わなかったぜ?まぁ、その悪運の強さが今の地位にてめぇーを導いたんだろうけどな。」
「ハっ、そんなこたぁどうでも良い。それよりてめぇーは自分の心配したらどうなんだ、アァ?」
「は、んなもんはな・・俺だって覚悟できてんだよ!」

そいつはニタリと笑うと、すっと懐に手を伸ばした。

(な、まさかこいつまだチャカを隠し持ってやがるのか!?)

それからのイヴァンの行動は早かった。指先に力を込め、引金を引くとスローモーションのごとく男は背後にのけぞれ倒れる。頭から血が流れでて、もう男はピクリとも動かなかった。イヴァンは深い息をつくと、襲撃した奴らの手掛かりになりそうなものを探すために跪く。その男の胸に銃はなかった。

(フェイクかよ、あいつ俺に撃たせやがったな。)

舌打ちを零して、胸元を探っていた指先に何かが当たる。イヴァンはそれを引き抜いてみた瞬間その瞳を丸くさせた。男から出てきたのは、銃でも、まして敵の手掛かりになるものでもない、それは平凡な男と共に幸せそうに笑う女の写真だった。

















「・・・以上だ。俺の解る限りじゃこれくらいだぜ?そのあとはルキーノの野郎と似たようなもんだ。」

襲撃されたものの、後からかけつけたルキーノの部隊の加勢によってその場の収拾はついた。ルキーノと共に本部に戻ってきたイヴァンは幹部全員が揃う前で先程の事について報告し終えると、ジャンはハァーと息をつき、煙草の火を灰皿へと押し付けると、座っていた椅子を回してその場から立ち上がる。

「つまり、だ。まだイヴァンの部隊を襲った理由も、そこがどんな勢力かも解ってない。けどそのお仲間にお前の昔なじみがいたってことだよな?」
「あぁ。情けねー話だが、捕まえて吐かせる前に自分らでおっちんじまいやがってよ。まぁ、GDの差し金って訳じゃなさそうだったがな、ありゃ。」
「それは間違いないと思うぜ?ジャン。合流して直ぐに死んだやつらの死体を俺も調べたんだが、刺青なんてもんは無かったし、な。だが、自分から命たつなんて余程教育されてなきゃ出来ねー芸当だぜ?どっかの組のもんじゃねーのか?」

ルキーノがイヴァンに続いてそう言葉を紡ぐ。ジャンの隣に立っていたベルナルドが顎に手をそえてうむっと考えるようにして俯いた。

「その線はありだな。しかしこのデイバンが俺たちのホームグランドだってのは、周知の筈だ。抗争状態でも無い、相手さんがマフィアなら、こんな突然の襲撃なんてもんは考えられない。GDじゃない別のギャングの組織っていうのが可能性としては高い。」
「なら、決まりだな。」
「どういう事だ、イヴァン?」

ベルナルドの言葉に決まりだと答えたイヴァンにジュリオは疑問の言葉を投げかけた。ふぅーと息をついて、イヴァンはポツリとそれを口にした。

「どうもこうもねーよ。あいつらの狙いが俺だったってこったろ。」
「そう思う根拠はなんだよ?」

ジャンが問いかけると、あぁーとガシガシとイヴァンは頭をかく。

「知りあいがいたっつっただろうが、さっきよ。そいつさ、俺が馬鹿やってた時にいたグループの幹部の一人だったんだよ。勿論、ゴロツキの寄せ集めみたいなもんだったから、しっかりした組ってわけじゃねー。ちいせーギャングみてぇーなもんだな。」
「なんでそいつらが、お前を今頃襲うんだよ?」
「最近まで知らなかったんじゃねーのか?俺がこっちの幹部に就任したのだって、三年たって無いしよ。奴ら俺が死んだって思ってたんだろうよ。どうせ理由なんてくっだらねーことだろうしな。おい、この辺で良いだろ?もう終わった事だしな。」

イヴァンがさっさと切り上げたいとでも言うかのように、ジャンたちにクルリと背を向ける。ベルナルドが慌てたようにイヴァンに声をかけた。

「おい、イヴァンまだ話は・・」
「うるせーな、話たきゃ後はてめーらで勝手にやってろよ。」

バタンと扉が閉まる音が響き、イヴァンがそこから出ていく。残された面々はその顔に複雑そうな、呆れたような面を各々浮かべた。ルキーノは一人その中で壁に背をあずけながら、イヴァンの出て行った扉を不機嫌そうに見、暫くしてハァーと大きなため息をつくとスッと姿勢を正した。

「なら、俺も戻らせてもらうぞ?まだ、やっておきたい事もあるしな。」
「あぁ、どうせこの問題はここでお開きだ。後はご自由に。」
「了解だ。また何かあったら連絡する。」
「ああそうだ、ルキーノ。お前この頃、領収書多いんだよ。今度、馬鹿高いもん持ってきやがったらサインしてやんねーぞ。」

ジャンがそう言ってニヤリと微笑むと、ルキーノは「おいおい本気かよ、おっかねーな」と苦笑を零して、ルキーノはその場から出て行った。












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