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short 20




#一応ルキジャン
(*大部分が童話口調なので注意)


















 ある朝、ライオンは泣いていました。
自分にとってとても大切だったことりが二匹しんでしまったのです。
ライオンはキレイな箱の中に花弁をしきつめて、それからその二匹のことりをそっと箱の中にいれました。
二匹のことりはお昼ねをしているみたいに静かに目を閉じています。
ライオンは目を閉じてことりと話した今までのことや、すごした日々をたくさん思い出そうとしました。
二匹のコトリのまぶしいしい笑顔がライオンの頭の中でかがやいています。
だけどそっと目を開けると、目の前のコトリは自分に笑ってはくれませんでした。
もうコトリはいないのです。

「ああ、あのこたちがしんでしまうなんて思いもしなかった。昨日のぼくはそのことを知りもしなかった。もしも昨日という日に戻れるのなら、ぼくは何もいらないよ。」

ライオンは、大粒の涙をこぼしました。
そんなライオンの様子にあるウサギは言いました。

「ライオンさん、ことりさんたちはもう返ってこないんだ。つらいだろうけど、わすれなくちゃ。」

ライオンはじぶんの家のとびらに中から、かぎをかけました。
暗くしめきった部屋で、昼も夜もじっとすわっていると、ときどきあさくて、みじかいねむりがやってきます。
けれどライオンには、やるべきことがありました。
ずっとこのまま閉じこもっているわけにもいかなかったのです。
ライオンは二匹のことりが入った箱を持って、外へと出ました。
動物たちは心配そうな顔をしましたが、ライオンは大丈夫だよと笑いました。
そんなライオンに動物たちはよかったライオンさんが元気になったよと笑いました。
けれど動物たちはライオンが無理して笑っていることに気づいていました。
それでも動物たちは誰もそのことについて触れることはありませんでした。
だってライオンはこの森の守り人。
ライオンがいなければ動物たちは生きてはいけなかったのです。

 そんなある日の事でした。
ライオンが山の中を歩いていると、みなれない子犬が一匹ねころんでひるねをしているのをみつけました。
その子犬は土でよごれていて、みなりがきれいとはいえなかったのですが、ふとライオンはその子犬の毛なみが金色であることに気付きました。
何を思ったのかライオンはその子犬に対して言いました。

「子犬さん、子犬さん。きみのそのきれいな毛なみぼくがととのえてもかまわないかい?」

すると子犬はうっすら目をあけて、こう言いました。

「べつにいいよ、ライオンさん。」

ライオンはその子犬を川の水であらい流して、きれいにその毛なみをととのえます。
思ったとおり、その子犬の毛なみはキラキラと輝く金色でした。
まぶしい、まぶしい金色でした。

「子犬さん、君の毛色はとても綺麗だね。」

すると子犬は言いました。

「ありがとう、ライオンさん。君のおかげで僕はピカピカだ。だけどねライオンさん聞いてもいいかい?」
「なんだい子犬さん?」

子犬は少しこまった顔をしました。ライオンはどうして子犬がそんな顔をするのかわかりません。

「どうしたの子犬さん?もしかして迷惑だったかい?」
「いいえ、いいえ。そうじゃありません。」

子犬は首を横にふりました。そしてこう言いました。

「ライオンさん、どうして君は泣いているんだい?」

ライオンは子犬の言葉にびっくりしました。
思わず自分の目にふれます。
けれど、なみだなんて出ていません。
ライオンは首をかしげました。

「何を言ってるの子犬さん?ぼくは泣いてなんていないじゃないか。変なことを言わないでおくれよ。」
「いいえ、いいえ。ライオンさん。あなたは泣いていますよ。あなたが気づいていないだけなんです。何かかなしいしいことでもあったのですか?」

そう言って、子犬はその腕をライオンの頭にのせて優しくなでました。
ライオンはポツリとこう言いました。

「つらいことならありました。大切な大切なコトリが二匹しんでしまったのです。」

ライオンは腕の中の箱をじっとみつめました。それを開けると、ことりはいいにおいのする花びらにつつまれて、とても気持ちよさそうです。しばらくの間、子犬はライオンをじっとみつめていました。それからゆっくり顔を上げると、言いました。

「きみはこのこたちと、ほんとうに仲がよかったんだね。ことりたちがしんで、ずいぶんさびしい思いをしているんだろうね。」

ライオンはおどろきました。
こんなことを言われたのは、はじめてです。
子犬はバイオリンをとりだしてこう言いました。

「きみとそのこたちのために、一曲えんそうさせてくれよ。」

子犬がバイオリンをひいています。
おんがくをききながら、ライオンはいつのまにか目をとじていました。
するといろんなことが思い出されるのでした。
バイオリンのおんがくは、ゆっくりとなめらかにつづいています。
ライオンはことりたちといっしょにした、たのしかったことを、ひとつひとつ思いだしました。
まい朝、ライオンをおこすときに小さなコトリが黒いくちばしで、ライオンのおでこをつついてくれた、くすぐったいかんじを思いだしました。
大きなコトリがいつもそんな二人にそっと笑顔を向けてくれたことを思いだしました。
よく三人いっしょに遊んだことを思いだしました。
ときには大きなコトリとケンカしたことも思いだしました。
そのあとのなかなおりも思いだしました。
ライオンはなにもかも全部思いだしました。
森の中にぽっかりと、そこだけいつも日の当たるばしょがあります。
よくことりたちとひなたぼっこをした場所です。
ライオンはそこにことりたちを、うめました。

「ぼく、もうめそめそしないよ。だって、ぼくにとってあのことちはずっとずっと大切なひとで、仲良しなんだから。」

子犬が、ことりと同じくらいの大きさのきれいな石をみつけてきて、うめたところに置きました。それから二人は花で石の周りをかざりました。

「さて、ぼくはそろそろ行かなきゃ。」

子犬は空を見上げました。

「子犬さん、どこに行くの?」

ライオンが聞くと、子犬は言いました。

「自分が信じた方向へさ。」

子犬は笑顔でそう言うと、ライオンに向かってそっと手をのばしました。

「いっしょにいくかい?ライオンさん。」






























「それでその後、ライオンさんと子犬さんはどうなったの?」
「そうだな、どうなったんだろうな。」
「えーじゃあ、その後は解らないの?グレゴレッティーのおじちゃん?」
「お、おじちゃん!?あーいや、そこは・・・お兄さんって言ってくれると助かるな。」

教会の子供たちの前でルキーノはそっと微笑みを浮かべ、ポンっと子供の頭を軽く叩いて立ち上がった。

「さて、ごめんな。もうそろそろ行かなきゃならないんだ。また今度な。」

子供たちは名残惜しそうに声を上げたが、シスターに正され渋々ルキーノを見送る。すると、一人の女の子がクイっとルキーノのコートの端を掴んだ。

「ん、どうした?」
「グレゴレッティーさん、あのね。あの後子犬さんとライオンさん幸せになってる?」

そんな少女の質問にルキーノは一瞬だけ驚くと、直ぐにその顔に微笑みを浮かべ、少女の背丈に合わせるようにして屈むと、その頭を優しく撫でた。

「あぁ、誰よりも幸せになってるさ。」

少女は良かったと嬉しそうに笑い、ルキーノもその口元を和らげた。
















「相変わらず、オモテになるわね、ドン・グレゴレッティー?どんなお話をしてあんな可愛いお嬢さんをたぶらかしたのかしら?」

ルキーノが車に戻ると、ジャンカルロがニヤニヤとからかいの笑みを浮かべて、そう問いかけてくる。ルキーノは呆れ気味に馬鹿かと言うと、車の扉をしめ部下に次に行く場所の指示を出して、ジャンの横にその腰を沈めた。

「まぁ、ライオンと子犬の話をな。」
「はぁー?なんだそれ。」

訝しげにこちらを見るジャンにルキーノはクッと笑い、ジャンを自分の方へと引っ張りその腕に囲い、チュッと額に唇を落とした。ジャンはいきなりのルキーノの行動に、「おい」と声を上げ、呆れ気味にルキーノを見た。

「ライオンは子犬がいてくれたおかげで、今とてつもなく幸せだって事だよ。」
「ハハッ・・ばーか。」

ルキーノの言葉にジャンは笑うと、ライオンだけが幸せと思うなよ、子犬もとっても幸せなんだぜ?と言って、お返しとばかりにルキーノの額に自身の唇を押しつけた。












ライオンと子犬













END
(結構作り変えてはいますが、元ネタ『くまとやまねこ』。ごめんなさいとしか言いようが無い。)







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