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★short 15




#ルキジャン






















 自分が幸せだと思った事は何度もある。シャーリーンと結婚した時だって、自分のようなマフィアという立場で、普通の家庭を持てるなんて思いもしなかった。彼女たちに支えられて今の自分がいるのだという事にとてつもない幸福を感じた。けれど一度その幸福を失って、自分にはもう二度とそれを感じることは無いんだと思っていた。あの頃のような陽だまりのような幸せはもう二度と無いのだと、その分仕事に明け暮れた毎日を送った。俺にはもう幸せなんてものは必要無い、その資格すら自分には無い。自分の中に失った事への寂しさや親父に対する矛盾した思いを抱えながらも、それを振り払うように幹部としての役割に勤しんできた。けれど今の自分の隣には金色の髪のそいつが、ラッキードッグが穏やかな顔で眠っている。自分が目を覚ましてもピクリとしない。ちょっとがっつきすぎたかとルキーノは思いながら、ジャンの寝顔をルキーノは暫く見つめていた。その無垢とさえ言える表情を見て思わずルキーノは苦笑を零した。














 仕事がなかなか忙しく一週間ほどジャンとルキーノはお互いに会えない日が続いていた。そのせいか漸く仕事がジャンと重なった日の夜、ルキーノは我慢出来ずにジャンを引っ張って自身の本部の部屋へと連行した。会えなかった事にも苛立っていたのかもしれない。困惑気味に自分を呼ぶジャンを無視して、その部屋へ入った途端にルキーノはジャンの頭へその腕を回して口づけていた。普段は乱雑に扱う事はけしてしないスーツすらこの時は煩わしかった。ネクタイを解きながらその身体をベットへと転がして、ジャンの上にルキーノは素早く圧し掛かっていた。ジャンはそんなルキーノに最初は驚きの目を向けていたが、余裕なくジャンの名前をルキーノが口にすると、その途端クスリと口元を上げて、仕方ねぇーライオンちゃんとジャンは小さく呟くと、自分の襟を引っ張ってあいつから口づけてきた。余裕なんてものはお互いに無いに等しかったと思う。互いの服を脱がしあって、所々に自分たちの所有の証を残していく。ベロリとルキーノがジャンの肩へとその舌を這わすと、くすぐったそうにジャンは身を捩り、あまりにしつこかったら、ルキーノの顔を掴んでジャンの方を無理やり向かされた。愛撫を邪魔されて不機嫌なルキーノにジャンは不敵に口元を上げると、そこばっかやってんなよと自分の愛撫して欲しいところを口にする。そんなジャンの態度にルキーノも苦笑を零し、ボスの仰せのままにと少しだけ馬鹿な口調と共にジャンの言われた所へとルキーノはその唇を動かした。自身の愛撫にピクリとその身体が跳ねる度にジャンへの愛おしさが増していく自分をルキーノは止める事が出来なかった。

(んあ・・・犬みたいに俺の身体ベロベロ舐めちゃって・・っつ・・そんなに好きか?)
(あぁ、好きだぜ?俺の愛撫にいちいち反応するとこなんて、愛しくて堪らないな。)
(アッラ、っく・・そりゃあ嬉しいね。アンタみたいな奴が・・・こんな貧相な身体に欲情してくれるなんて・・さっ)
(何言ってる。お前だから、こそ・・だ。解ってるだろ、ジャン?)

これ以上馬鹿な事ぬかすとその口無理やり塞ぐぜ?とルキーンが笑うと、ジャンは、そりゃ勘弁。と苦笑いを浮かべてルキーノの赤髪を優しくすく。
そのジャンの仕草にどうしようも無い気持ちがルキーノの胸に湧きがった。

(本当、アンタ俺にベタ惚れ?)
(悪いかよ?)
(いんや。)

超嬉しいと、少しだけ無防備なジャンの笑みにルキーノは堪らない気持ちになった。何故俺はこんなにこいつに惹かれたんだろうか、男で、犬みたいな奴で、餓鬼っぽくて、けれどそんなの今更だった。現に俺はこいつを前にして愛しいという感情に振り回されてる、そしてあの頃シャーリーン達とでしか味わえないと思っていたその感情がそこにあった。キスをするだけで、身体を重ねるだけで、そしてこいつが俺の隣にいるだけで、その気持ちは確かにそこにある。勿論あの子達とはまた違った思いなのかもしれない、俺はただあの頃はあの子たちを守りたかった。あの小さくも穏やかなそれを、自分にあの子たちが与えてくれたそれを、ただただ守りたかった。だから二年前のそれを失った時に、それはもう俺の中で生まれる事も無いだろうと、あの子たちを失った事で自分の中のそれも死んだんだとそう思っていた。けど、ジャンと出会って、俺は再び同じような感情をその内に秘めている。けれどあの頃の守っていきたいと願ったそれとは少し違う、それはジャンと共に困難も苦難も全てジャンと一緒にこの先も乗り越えて行けたらというそんな思いだった。

(なーに変な顔して考えちゃってんの?)
(ん、いや・・・ただ・・)
(何だよ?)

ジャンが訝しげに自分へそう尋ねると、ルキーノはそんなジャンを見て微笑み、ジャンの背中に自身の腕を回してギュッと抱き締めた。

(幸せだな・・と、思っただけだ。)











 ルキーノは眠っているジャンの髪をそっと撫でる。初めて見た時俺はそれを綺麗だと思った。刑務所の中で一際目立つその金色は無意識に自身の目を引き付けていた。仮にも男であるジャンに綺麗だという表現は適切では無いかもしれないが、それ以外の表現を自分は持ち合わせていなかった。そしてこいつと過ごす内に、徐々に自分の中でジャンは眩しいほどに輝きを放っていた。クルクル変わるその表情と、勝負を仕掛ける時に不敵に笑う表情、俺に真っ直ぐに向かってくる感情、そして何よりも俺はジャンの自分に向けられる笑顔に時々どうしようもなく泣きたい気持ちにさせられた。ジャンに惹かれたのはその金色と同じくらい綺麗な、俺の暗闇を太陽みたいなお前の笑顔が照らしてくれたからなのかもしれない。だから俺はこの男に惚れたんだ。一人の男としても、自分の弱さを知られたく無くて強がってしまう俺なんかよりもずっとカッコイイ、そして時々どうしようもなく可愛いこの男に。ひた向きに俺のような男を信じて、好きだと言うこいつに、馬鹿だなと思いながらそれでも自分はこの男を離せないんだろうなと、ルキーノはそんな自分に苦笑を零しながら、眠ってるジャンの額に愛しさを込めて口づけを落とした。











ありがとう
(こんな俺の傍にいてくれて)













END
(ルキーノさんベタ惚れなんです)






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