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シチュ 2




#ルキジャン
















 冷たい風が自身の横を通り過ぎていき、ブルリと思わずジャンは身体を震わせた。デイバンの冬は海が近いのも理由にあるだろうが、近隣の街より平均気温が僅かに低い。日中、太陽の高い内はまだ我慢出来る寒さでも朝早くの波止場でのシノギであったり、夜遅くに町を歩く時にはまさに凍えるような寒さという表現がぴったりの気温になってたりする。辛くないなんて言えば嘘だが、そんな状況であってもマフィアの仕事に手抜きも休みも許される筈が無く、ジャンとルキーノはいつものようにデイバンの街を回っている。商工会の連中に愛想振りまき、ボスである自分の存在をアピール。教会への礼拝も欠かさず、時にはCR:5の役員の連中の食事に付き合ったりする。そんなボスとしての自分の役割は解っている。だがそういう場所で常はにこやかに猫かぶってるもんだから、段だんとウンザリくるのもご愛敬だ。しかも今日は一段と寒い中でのハードなスケジュールをこなしてたりしたもんだから、ジャンの機嫌はあまり良いとは言えなかった。顔には絶対に出さないが、それでも良くここまで持ったもんだと自分で褒めてやりたいくらいだ。

「ルキーノ、あと今日何だっけか?」
「あぁ、後は役員達との合同会議だな。確か、今日はアレッサンドロ顧問も同席されるみたいだぞ。」
「うげ、まじかよ。たく、寒いわ、眠いは、もう最悪なんですけどー。あぁー超帰りてー。」
「何言ってる。あともう少しの辛抱だ。これが終われば、帰って直ぐに暖かいベッドにダイビングでもしろ。」
「つったって、明日も朝早いだろ。」

それが何日続くことやらとジャンがぼやくと、ルキーノは、まぁそう言うなと苦い笑いをその口元に浮かべた。勿論ルキーノに言われなくても、この日々の積み重ねが大事なんだって事くらい十分にジャンにも解っている。中途半端な覚悟でボスという地位に付いた訳じゃない。だからこそ、こうやって今んとこはその自覚を持って、振舞っているつもりだった。ジャンは、ハァーと溜息に似たものをその口元から零す。それにしても寒いよなーと手を擦り合わせていると、フワリとルキーノの手が上からそれに重ねられる。

「ん、本当だ。お前手結構冷たいな。」
「・・・そりゃ、アンタと違って体が繊細なもんですから。」

やべっ、一瞬ドキッとしちまった。けれどそんな自分には気づいていないようで、ルキーノはジャンの手をじっと、観察してんのかと思うくらいにその目線を外さずに見つめている。おいおい、そんな見つめられても俺が困るっつの。

「そうだな今度、手袋も作らせるか。あるのと、無いのとじゃ結構違うぜ?」
「あ・・・あぁーなら、お願いしちゃおっかなー。頼める?」
「あぁ。」

実際、調度手袋が欲しかったからその申し出はありがたかった。ルキーノの事だから手袋でもしっかりオーダーメイドで作らせるに違い無いから、今度仕立て屋に連れてかれる事だろう。本当、こういう事に無駄に手をかけたがるよなルキーノって。そんな事を考えていて、ふとルキーノの手が未だに自分の手から離れていない事にジャンは気づき、訝しげに隣のルキーノを見る。いつまでこいつ、野郎の手なんか握ってやがんだよ。

「おい、ルキーノ?」
「ん、何だよ?」

いや、こっちが何だよなんだけど。ジャンが未だに繋がれているお互いの手に視線を向けると、ルキーノもそちらの方に目線をやり、あぁ、と納得気な声を口元から零した。

「嫌か?」
「いや、なんていうか野郎同士でお手て繋いでも楽しくも何ともねぇーだろ。」
「まぁそりゃそうだが、それでもさっきよりマシだろ?」

そりゃあ確かにルキーノの手は自分より体温が高いからさっきよりは寒くない。だが今は移動中の車の中で誰もみちゃいないが、見られたら絶対変な眼で見られるのは必至だし、ボスと序列二位の幹部が仲良くお手て繋いでーという光景はあまりに滑稽過ぎる。

「何、気にするな。次の目的地までに温めてやるよ。」
「ハハッ、何だそりゃ。」
「別に悪くは無い、だろ?」」
「まぁね。じゃあお言葉に甘えてルキーノの手、少しだけ借りるぜ?」
「私のなんかで宜しければお好きなだけお使い下さいーマイボス。」

けれど、そんな事をウインクつけてルキーノが言うもんだから、思わずジャンは吹き出していた。こいつとこんな馬鹿な話してると、何か細かいことがどうにも気にならなくなるから、不思議だ。

「あぁーやっぱりアンタ最高。愛してるぜー相棒。」
「そりゃ、光栄だ。」

そう言って二人して笑いながら、ジャンとルキーノはどちらともなくその手をしっかりとお互いに握りこんだのだった。まぁこういうのもたまには良いかもな。











肌を温める













END

お題配布元
疾風迅雷





あきゅろす。
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